「OPERA ALLURE」によるあらすじ(一部改変)は以下の通り。
◆オペレッタ「こうもり」のあらすじ(「OPERA ALLURE」を参考に一部改変)
ファルケは、3年前の仮装パーティーで泥酔して仮装したこうもり姿のまま連れのアイゼンシュタインによって街中にほっぽりだされて笑い者になった。その以後「こうもり博士」とあだ名をつけられていつもそう呼ばれるようになってしまった。ファルケはアイゼンシュタインにその仕返しをするべく着々と準備を進めていた。
【第1幕】 大晦日。ユダヤ人銀行家アイゼンシュタインは、ささいな問題(警官を侮辱し殴る)を起こして刑務所に入ることになりその準備をしていた。彼はファルケにそそのかされて、刑務所に入る前にロシア貴族オルロフスキー公爵のパーティーに参加することにして家を出る。 その後、アイゼンシュタイン家に、アイゼンシュタインの妻ロザリンデの元恋人の声楽家アルフレードが訪れる。勝手に邸宅に上がり込んだアルフレードはアイゼンシュタインのガウンを着てキャップをかぶり、ロザリンデとくつろいでいると刑務所長らが収監にやって来てアルフレードをアイゼンシュタインと勘違いして連れていく。
【第2幕】 一方、オルロフスキー公爵邸では、アイゼンシュタインはフランス人貴族のふりをしてパーティーを楽しんでいる。パーティーには、女優のふりをしたアイゼンシュタイン家の召使アデーレと、仮面をつけたンガリーの伯爵夫人に扮したアイゼンシュタインの妻ロザリンデが現れる。2人ともファルケが騙してパーティーに呼んだのである。アイゼンシュタインは、彼女が自分の妻だとは知らずに彼女を誘惑する。ロザリンデは浮気の証拠に夫から懐中時計を奪う。
【第3幕】 アイゼンシュタインはパーティーを途中で抜け出し、収監される予定の刑務所に向かう。 元旦の朝、アイゼンシュタインが刑務所に着くと、そこにはすでに別人のアイゼンシュタインがいた。それはアイゼンシュタインが出掛けた後にその邸宅に上がり込んでアイゼンシュタインの妻とくつろいでいるところを誤って刑務所に収監されたアルフレードだった。彼は妻の浮気を疑うが、逆に妻は証拠に奪った時計を見せて昨夜の浮気を非難する。ファルケは、3年前の悪ふざけの仕返しだと明かす。人はこの出来事をシャンパンのせいにして、気にしない(幕)。 |
演出はかつてのウィーン国立歌劇場の「顔」でもあった名歌手ハインツ・ツェドニク。この演出は2006年以来、2009年、2011年、2015年、2018年、2020年、2023年とかなり頻繁に上演されてきた人気プロダクションだ。オーソドックスな演出でスキのない分かり易いプロダクションだが、さすがにそろそろ寿命だと思うが。最近は世界で最も儲かっている歌劇場と思われたニューヨークのメトロポリタン歌劇場の大リストラが発表になって大騒ぎになっている。
ハインツ・ツェドニク
まあ新国立劇場「こうもり」の新制作は気長に待つことにしようか。私は新国立劇場では今回が5回目の鑑賞だがそれでも2、3の発見があるのだからこの作品はなかなか奥が深い。例えばこのオペラの舞台はてっきりウィーンだと思われがちだが、実は大都市近郊の温泉地と台本にはありバーデン・バーデンとかバート・イシュルだろうと言われている。ただ新制作でなくとも、10分ほどの序曲の間とか休憩なく続く第2幕と第3幕の場面転換時にもうちょっと工夫が欲しいかなとは思う。

オーケストラは新国立劇場初登場のイスラエル人新進指揮者ダニエル・コーエン指揮の東京交響楽団。かなり張り切ってオーケストラを煽っていた。もうちょっと柔らかいフォルテが欲しいかなと思うが、歌の伴奏は上手かった。
合唱は新国立劇場合唱団(指揮三澤洋史)。これもいつものように上手いのだがもうちょっと柔らかい表情が欲しかった。バレエは東京・シティ・バレエ団でこれは文句なしに拍手喝采。
主要キャストは以下の通りだ。
◆銀行家ガブリエル・フォン・ アイゼンシュタイン:トーマス・ブロンデル(テノール)
◆アイゼンシュタインの妻ロザリンデ:サビーナ・ツヴィラク(ソプラノ)
◆刑務所所長フランク:レヴェント・バキルジ(バリトン)
◆オルロフスキー公爵:藤木大地(カウンターテノール)
◆ロザリンデの昔の恋人アルフレード:伊藤達人(テノール)
◆アイゼンシュタインの友人ファルケ博士:ラファエル・フィンガーロス(バリトン)
◆アイゼンシュタイン家の召使アデーレ:マリア・シャブーニア(ソプラノ)
◆アイゼンシュタインの弁護士ブリント博士:青地英幸(テノール)
◆刑務所看守フロッシュ:ホルスト・ラムネク(バス・バリトン)
◆アデーレの妹イーダ:今野沙知恵(ソプラノ) |
鑑賞したのは5日間公演の4日目ということもあったし、また芸達者が揃っていて楽しめた。アイゼンシュタイン役はバリトンかテノールで歌われるが、今回はテノール。興奮しやすく好色な役だから、テノールの方が合っているかもしれない。

ロザリンデ役、アデーレ役は演技も歌唱も巧い。歌唱はかなり高音強調でちょっと過剰サービス気味で品がないが悪い気はしない。この外人勢に比べると日本勢は大人しい。もっとも役柄(ブリント役の青地英幸、イーダ役の今野沙知恵)がそういう引き立て役だからそれでいいのかもしれないが。
主役級日本人歌手ではアルフレード役の伊藤達人が絶好調で大活躍だった。今やこの劇場のスターだ。オルロフスキー公爵はカウンターテノールの藤木大地。この役はやはり難しい。若くして人生に飽きて破滅的で享楽的な日々を生きる両性具有のロシア貴族。
通常メゾ・ソプラノが男装して歌い演じる。新国立劇場でも1999年のこの劇場としての初演時(演出は寺崎裕則でオール日本人キャスト。ダンサーであるイーダ役はなんと草刈民代!)にはカウンターテノール太刀川昭が歌った(ダブルキャストでもう一人は柴田智子)が、その後はメゾ・ソプラノがずーっと歌ってきた。
藤木大地
今回ふたたび今をときめくカウンターテノール藤木大地が歌ったが、個人的には今ひとつしっくりこなかった。また手持ち無沙汰で突っ立っているシーンが多くて浮いている印象があったが、これは演出か。
大好きなオペラなので、いろいろ注文があるが、正攻法で高水準の上演であることは間違いない。オペラ入門にも最適な演目だ。
上演時間は30分の休憩を含めて3時間5分だった。