前半2曲目はチェロの北村陽(きたむらよう、2004年西宮市生まれ)ソロに迎えハチャトゥリアンのチェロと管弦楽のためのコンチェルト・ラプソディ。
曲は民謡風モチーフをベースにしたチェロに高度なテクニックを必要とする曲でロストロポーヴィチに献呈された。最初は、楽器の耳障りなウナリ音が聞こえて「あれ?」と思ったのだが、中盤からはスケールの大きな歌い回しと音程が正確で高速のパッセージを聞かせて、唖然とさせた。
2022年のハチャトゥリアンコンクールでアルメニア国立管弦楽団とこの曲を弾いたYoutubeで予習してきた。凄い演奏で優勝は確実だと思ったが結果はなぜか2位。その時のほうが速いテンポでテクニックの凄さはダイレクトに伝わったが、今回の方が感銘度は上。

アンコールはバッハの無伴奏チェロ組曲第6番から4曲目のサラバンド。間延びするギリギリまでテンポを落とした演奏だった。
いろいろやってみたいのだろう。21歳、まだまだ成長するチェリストだろう。
15分の休憩の後、後半はショスタコーヴィチ交響曲第15番。前半の珍しい曲はともかく、このショスタコーヴィチ最後の交響曲も珍曲扱いなのか、この日の1日だけの公演なのに、客の入りは8割ほど。
しかし、この曲はシニカルな引用もあるが、明らかに死を意識した彼の交響曲の集大成と呼んでいい曲だと思う。私の従来のヴァイグレのイメージだとこの曲はちょっと違うのじゃないかと思ったのだが、そんなことはなかった。読響の機能性の高さを見せつけたオーソドックスなアプローチの名演になった。
現在64歳のヴァイグレはいよいよキャリアの頂点を迎えつつあるようだ。今年3月にはベルリン・フィルにデビュー(オベロン序曲、日本の天才少女HIMARIの独奏でヴィニャフスキーヴァイオリン協奏曲第1番、シューベルト「ザ・グレート」)を果たしている(病気の88歳メータの代役)。
コンサートマスターは林悠介だったが、見事なソロを披露。チェロのトップは美人チェリスト遠藤真理だったがこれも素晴らしいソロを聞かせた。その他、ソロが多い曲だがいずれも高レベルで聞きごたえがあった。
しかし、写真入り(他の楽団も見習って欲しい)メンバー表を開演前に見ていたが、読響ではエルダー楽員(定年を終えた楽団員)が徐々に多くなっているのに気付いた。例えば、今回のファゴットの2人はエルダー楽員の井上俊二と吉田将だった。これがまた見事だったのだ。ショスタコーヴィチでは、ファゴットとピッコロが上手くないとどうにもならない。
そしてピッコロに先導された弦楽器の弱奏をベースに打楽器群による不思議なコーダ。これは交響曲の歴史における最も独創的な結尾かもしれない。この部分のウッドブロックはいつも木魚に聞こえる。
いやあ、素晴らしかった。今年はショスタコーヴィチ(1906.9.25~1975.8.9 享年68)の没後50年だが、その中でも白眉のひとつかもしれない。

演奏後のヴァイグレと読響。そして一般参賀もあった。ちょっと痩せたかな。