今回のブラームス交響曲サイクルはまさに待っていたコンサートだ。特にサントリーホールでの1番と2番。
アランはニューヨーク・フィルの音楽監督を2009年から2017年まで務め、それ以後ヨーロッパをメインに活動したが、もう58歳だ。まさに円熟が始まった指揮者である。
現在NDRエルプフィルの首席指揮者、スウェーデン王立歌劇場音楽監督、都響の首席客演指揮者(2018年4月~)。とにかくスケールが大きい指揮だ。
フォルティッシモは半端ない。そして真正というのかハッタリがない。それに最近は深さが加わっている。

今回のプログラムは、当然交響曲第2番→交響曲第1番の順だと思っていたが、順番通りだった。どう考えてもクライマックスは1番の方が盛り上がるからだ。
しかし、順番通り。このあたりがアランらしいと言えば言えるのかな。暗譜で指揮棒はなし。
コンサートマスターは、東京交響楽団から昨年4月1日付で都響に移籍した水谷晃。実は私、都響の水谷は初めて聞く。
水谷晃
いやあ、1番の第2楽章のソロが素晴らしかった。実に美しい音でうっとりした。これに都響の核心のひとりである広田智之のオーボエが絡んでまさに夢見心地。
第1楽章や第4楽章の絶望と闘争と勝利の音楽は、これはまさにアランの音楽性にぴったりで、終楽章のコーダの迫真力も胸を打った。適度にテンポは揺れ、突然のディミニエンドにハッとする。
14型で第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオリンの配置で、コントラバスは第1ヴァイオリンの後ろで、なんと6台しかない。これはどうしたことか?
当然8台だろうと思ったが、これが6台でも実にしっかり聞こえてくるのだ。これはどういうことなのだろうか。席(LC4列6番)のせいだろうかな。
弦楽器の頑張りに加えて、木管、金管も高いテクニックと音楽性を発揮したが、特筆したいのがホルンのトップ。なんと東京シティ・フィルの谷あかねがゲストとして招かれている。
谷あかね
いやあ、いつもながらスケールの大きい爽快なソロ!本来ならブラ1とブラ2をセットで演奏するときに、首席の西條貴人が演奏しないでどうするんだと思ったが、調べたら谷あかねは西條に教えを受けていた。
西條にどんな事情があるのかは知らないが、弟子である谷に「大役」を任せたのだろう。この谷あかね、凄いホルン奏者である。
アランがNDRエルプフィルに連れていくようなことがあるんじゃないか?などと考えてしまう。それぐらい素晴らしかった。

コンサート終了後にコンサートマスターの水谷晃を伴って現れたアラン・ギルバート
最近、アマチュア・オーケストラのコンサートに行って、ホルンの不出来がひどくて残念な思いをすることが多くて、楽器製作者にホルンの楽器改良をお願いしたいなどと書いてしまったが、この谷あかねの演奏を聞くとこの感想は撤回。プロとアマチュアの差が最も大きい楽器ということだ。
後半の交響曲第2番もほぼ演奏のレベルは同じだが、冒頭書いたように、やはりブラームスの第1番はベートーヴェンで言えば5番、第2番は第6番なのだ。5番、6番をセットで演奏するときは、ほとんどが6番→5番で演奏すると思うのだが。
今回は私が前半で燃え尽きてしまったのかもしれない。いやあ、ブラームスを満喫した。