本日(11月2日16時)NHKFMでヘルベルト・ブロムシュテット指揮N響(コンサートマスター:川崎洋介)のコンサート(10月25日金曜日の演奏会の録音。
11月9日まで聴き逃し配信している)をタブレットからヘッドホンで聞いた。曲はシューベルトの交響曲第7番「未完成」と交響曲第8番「グレイト」の2曲。
絶賛の嵐に包まれた演奏会だった。たしかに立派な演奏だった。ましてや97歳の現役最長老指揮者の実演となれば、批判などもっての他という雰囲気があるのも分からないではない。
97歳の指揮者とは思えないような速いテンポで、一音も揺るがせにしない晴朗なシューベルトだった。N響もこの老指揮者を盛り立てたいつもより集中した素晴らしい演奏だ。
私は2022年10月21日にNHKホールでシューベルトの交響曲1番と6番の休憩のないコンサートを聞いているが、印象はその時とあまり変わらない。
そこには陰影がない。悲しみや人生に対する徒労感、諦念と言ったものがあまり感じられない。「未完成」なら人間という存在の「深淵」が見えるような暗くどろどろした演奏も可能なはずだが、そうした演奏ではなかった。
若き日のブロムシュテット
若き日のイヴ・サンローラン(1936.8.1〜2008.6.1)。
2人はいやに似ている。
「グレイト」ではもっとじっくりと大きな造形でときおりその谷間に咲く可憐な花の悲しみを表現して欲しかった。
そうしたものを期待する私が間違っているのだろう。ブロムシュテットという指揮者はそうした演奏家ではないのだ。