「windblue」 by MIDIBOX


ちょっと仕事が捗ったので、土曜日(7月13日)の読響マチネーの空席をwebで覗いたら、なんと東京芸術劇場2階中央最前列がひとつだけ空いていた。皇族か評論家の席じゃないか。即購入した。

 指揮者のカタリーナ・ヴィンツォーは1995年オーストリア生まれの女性指揮者だ。今年誕生日を過ぎていたら29歳、まだなら28歳。さすがに経験不足だろうと予測していた。

 コンサートの最初はドヴォルザークの序曲「謝肉祭」。最初の曲は音合わせで調整に充てるオケが多いが、いつも読響は最初から真剣勝負。長い手を振り回し、足を踏み込んでダイナミックな指揮ぶり通りの演奏。なかなかやるじゃないか。

 双眼鏡で観察したら、この曲では後半ハープがソロイスティックに活躍する。これは2曲目のモーツァルトのフルートとハープのための協奏曲(フルート:マチュー・デュフォー、ハープ:読響首席:影山梨乃)の「準備運動」という感じか。この協奏曲は手堅い演奏で、デュフォーのフルートの音色が一本調子で今ひとつに感じた。アンコールはグルックの精霊の踊り。

 しかし15分の休憩後のドヴォルザーク交響曲第8番が目の覚めるような名演だった。いやあ、この曲ってこんなに素晴らしい曲だったんだ。とくに第2楽章は泣けてきた。

 旋律は十分に歌うが品格には欠けていない。管楽器も咆哮するが突出はしない。たぶんこの曲は彼女の十八番なのだろう。スコアが身についているという感じ。

指揮者ヴィンツォー

 読響(コンサートマスター:長原幸太)も彼女を盛り立てる。フルートのフリスト・テブリノヴが実に味わい深く木管群を牽引し、第1楽章と終楽章のトランペット(長谷川潤)の難関も切り抜けていた。ホルン(日橋辰朗)も妙技を聞かせた。というか、もしかしたら、この指揮者のヴィンツォーってトンデモナイ天才!?そんな気もして来た。

 いずれにしても名曲の名演を十ニ分に楽しめた。

 ベテラン指揮者ではこういう興奮はなかなか味わえないものだ。

ルコナンさんのXより

 中学生の時に、友人からジョージ・セル指揮クリーブランド管弦楽団で「謝肉祭」&「交響曲第8番」のカップリングのレコードを借りてそれこそ擦り切れるほど聞いたことを思い出した。

 レコードにはキズもつけたのだが、文句ひとつ言わなかったその友人は元気にしているだろうか。その時の興奮が久しぶりに蘇ったのだった。

(2024.7.19「岸波通信」配信 by 三浦彰 &葉羽

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