昨日(12月9日土曜日14時)、初台の新国立劇場でヨハン・シュトラウスII世のオペレッタ「こうもり」を鑑賞。
今年のオペラ鑑賞はこれが最後になるが、その掉尾としてこれ以上の作品はない。なにしろ、ウィーンの大晦日の椿事という設定なのである。
あらすじは以下の通り。
舞台は1874年の⼤晦⽇。3年前のある仮装舞踏会の帰り、ユダヤ人銀行家アイゼンシュタインは酔っぱらったファルケ博⼠を「こうもり姿」のまま道ばたに置き去りに。それ以来「こうもり博⼠」と呼ばれていたファルケ博⼠は、アイゼンシュタインに仕返しをしたいと考えていました。
この⽇、問題を起こして刑務所に⼊らねばならず苛⽴っているアイゼンシュタイン。ドッキリの罠が仕掛けられているとも知らず、彼はファルケ博⼠に誘われて、収監前の気晴らしにとロシア人大富裕貴族オルロフスキー公爵邸のパーティへ出掛ける。
パーティには⼥優に扮したアイゼンシュタイン家のメイドのアデーレ、フランス⼈になりすました刑務所⻑のフランクの姿が⾒える。そこでアイゼンシュタインが⼝説き始めたハンガリー⼈の貴婦⼈、実は・・・? |
人気作品の土曜日のマチネーということで、ほぼ満席で、着飾った女性たちの姿が目立つ。
私の席の後ろには、ちょっとしたクスグリにもケタケタと笑う若い女性が2人連れでいて微笑ましい。
このハインツ・ツェドニク演出の「こうもり」は2006、2009、2011、2015、2018、2020年と上演されている。この新国立劇場の大定番ということなのだろう。
確かに良く出来ていて私の後ろの若い女性たちには大ウケだが、2015年から毎回見ている私としては、外人歌手たちの日本語ギャグまで同じで、新演出が期待されるところ。
今回の「新機軸」は第3幕の看守フロッシュ役のホルスト・ラムネクが美声の歌(上手い!)を披露したことぐらいかしら。このフロッシュは通常は歌わない役。いつも思うが、これはタモリ、さんま、タケシ、最近なら錦鯉みたいな日本人コメディアンを起用して欲しい。絶対にウケる!
なお刑務所所長フランク役だったヘンリー・ワディントンが健康上の理由で降板したため畠山茂が代役を務めたが、無難以上の好演だった。
外人歌手たちは上述の看守役のラムネク以外は、全て新国立劇場初登場だったが、歌の上手い芸達者揃いで楽しめた。
ただ、オルロフスキー公爵役のタマラ・グーラは、ドスの効いた低音の話し声とメゾソプラノの歌にギャップがあって違和感があった。
それとファルケ役のトーマス・タツルがエルヴィス・プレスリーにそっくりで、いつ「ブルーハワイ」を歌いだすのかと想像して笑ってしまった。
なんだかんだ言っても、楽しい3時間であった。
いつも感じるが、馬鹿騒ぎの奥に普墺戦争(1866年)に敗れて以来、斜陽国家になるオーストリアのペーソスが滲み出てくる。
我が日本を重ね合わせてしまうと、笑うに笑えないのではあるが(笑)。
今年1年、新国立劇場の公演を全て見たが、5月の「リゴレット」(新制作)と11月の「シモン・ボッカネグラ」(新国立劇場初上演)が個人的にはベスト2だった。
どちらもロベルト・フロンターリ(65歳)がタイトルロールを演じた公演だった。また今年1月の「タンホイザー」でタイトルロールを演じたステファン・グールドが9月19日に胆管癌により61歳で亡くなったのは大ショックだった。