土曜日(7月22日)の午前中、大学で特別講義(「なぜ服は売れなくなったのか?」)をした後、小田急線鶴川駅前で昼飯を食べていたら、いろいろあって、予定していた14時からの読響のコンサート(池袋・芸劇)には間に合わなくなってしまった。
14時には東京大学音楽部のコンサートというのも上野・東京文化会館であったのだが、これも当然間に合わず。
仕方なく音楽の友社のコンサートガイドで調べたら15時から住吉のティアラこうとうで東京シティ・フィルのコンサートがあった住吉は都営新宿線なら新宿から22分!上野よりも近いのだった!
ティアラこうとうへ行くは初めてだし、まあ行ってみるか。なんとS席3000円のフレッシュ名曲コンサートだった。ティアラこうとうは大ホール1228人収容で音響も素晴らしいらしい。
東京シティ・フィルは結構聞いているが、音楽監督の高関健とか飯森泰次郎の指揮で名演を聞いてはいる。
上手くはないが「真摯」な演奏をするオーケストラだ。ティアラこうとうは東京シティ・フィルの本拠地である。
前置きが長くなったが、このコンサートは前半2曲目のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲に尽きた。独奏の前田妃奈(ひな)に度肝を抜かれたのだ。
前田は2001年大阪生まれだから21か22歳である。昨年のヴィエニアフスキ国際コンクールで優勝して脚光を集めている。
チャイコフスキーの協奏曲の出だしから、落ち着き払った遅いテンポで弾き始めたが、え、これが聞いたこともない、こんな弾き方があったんだという新解釈。
第2楽章のカンツォネッタ・アンダンテが涙を誘う見事な感情表現。第3楽章はテクニックの限りを尽くした驚くべき演奏。
いやあ、素晴らしい!服部百音(23歳)、辻彩奈(26歳)という凄い日本人ヴァイオリニストをここ2年ばかりの間に聞いているが、もしかしたらこの2人を凌駕するような存在になるかもしれない。いやあ、感服しました。
(前田妃奈:ヴィジュアル系ではないがそんなこと関係ない!)
ただ、服部、辻とは違って、いわゆるヴィジュアル系ではなくて健康優良児タイプではあるから、その点で出世が遅れるかもしれない。いや、これほどの逸材ならそんな馬鹿なことはないだろう。
書き忘れたが、前田の使っているストラディヴァリウス「ヨアヒム」が素晴らしい音色の銘器だった。完全に自分の楽器にしていたということか。
実はこの土曜日午後の3つのオーケストラコンサートで最も聞くべきコンサートを私は聞いたことになる。またホールの「鳴り」(1階15列センター)も素晴らしく、ラッキーだった。禍い転じて福となった。
三ツ橋敬子指揮の「シェエラザード」(コンサートマスター:戸澤哲夫)が後半には演奏された。
まずまずかな。何より、コンサートマスターの独奏が貧弱に聞こえて楽しめなかったのだ。これはコンサート前半に、前田妃奈のチャイコフスキーを聞いてしまったからだろう。
(三ツ橋敬子:ビジュアル系だと勘違いしないことを祈る)
それと老婆心だが指揮者の三ツ橋敬子は、芸能人みたいに笑い顔を無理につくるのはやめた方がいいと思う。
新体操みたいな指揮ぶりをやめろとは申しませんが。
(2023.7.28「岸波通信」配信 by
三浦彰 &葉羽)
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