昨日(2月18日土曜日)、清瀬けやきホールで金川真弓ヴァイオリン・リサイタル(ピアノ:ヴィラー・ヴァルボネージ)を聞いた。なんと料金は2500円!さらに私はシルバー料金で2200円だった。
自宅から電車で30分の私には本当に嬉しいコンサートだ。今、売り出し中の金川真弓(かながわまゆみ)のプロフィールは以下の通り。
ドイツ生まれ。4歳から日本でヴァイオリンを始め、その後ニューヨークを経て12歳でロサンゼルスに移る。現在はベルリンを拠点に演奏活動を展開させている。
ハンス・アイスラー音楽大学でコリヤ・ブラッハーに、また名倉淑子、川崎雅夫、ロバート・リプセットらに師事。
2019年チャイコフスキー国際コンクール第4位、18年ロン=ティボー国際音楽コンクール第2位入賞および最優秀協奏曲賞を受賞し、一躍注目を集める。
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会場の清瀬けやきホールは西武池袋線清瀬駅北口から徒歩5分。清瀬駅は南口に繁華街がある。北口は再開発中のようだ。
北口からバスで奥に行くと映画「万引き家族」でカンヌ映画祭最高賞(パルム・ドール)を受賞した是枝裕和監督が9歳から住んでいた清瀬旭ヶ丘団地がある。
同監督が「海よりもまだ深く」でこの団地を主人公(阿部寛、母親役は樹木希林)の実家として登場させていた。
さて清瀬けやきホールの収容人員は508人。音響はきわめて良好。備え付けと思われるピアノはヤマハだったが、音はイマイチ。
清瀬けやきホール
曲目はまずモーツァルトのK.296のヴァイオリン・ソナタ。
使用楽器は日本音楽財団から貸与されている1725年製のストラディヴァリウス「ウィルヘルミ」ということだが、なんとも底光りのする渋い音色でかなりボリュームのあるビオラのような音だ。
もっと愉悦的な音が聞きたいとか、モーツァルトとしてはちょっと華やかさが足りないなあというのは贅沢か。
続いて、当初の曲順が変わってバルトークの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ。ベートーヴェンではなくて確かにこっちを前半に持ってきた方がよかったと思う。
金川の確かな技巧と集中力と真摯な音楽性が発揮された厳しい演奏だった。1.「シャコンヌのリズムで」、2.フーガ、3.メロディア、4.プレストの4楽章からなる30分が胸に突き刺さった。
後半のベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番「春」も、第1楽章の主題などもう少し愛想があってもいいんじゃないかと思うほどきっちりと弾くが、そこが金川の音楽なのかもしれない。
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前日夜には読響とブラームスのヴァイオリン協奏曲を演奏したようだが、まさにピッタリの曲ではなかったか。これは聞きたかった。
そう言えば、2021年1月にヴァイグレ指揮読響とのブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番を聞いているのを思い出した。やはり、同じ印象で、きちんと弾けてはいるが、ちょっと地味過ぎるブルッフだった。
ベートーヴェン「春」の後は小品集。全て女性作曲家だ。
リリー・ブーランジェ:ノクターンとコルテージュ
大島ミチル:メモリーズ
マリー・クレメンス・ド・グランヴァル:ボヘミエンヌ
バツェヴィチ:ヴァイオリンとピアノのためのユーモレスク
なかなかいい選曲で、金川のテクニックの確かさが楽しめたが、こうした小品ではチャームというかシャルムというか愛嬌というか、そういうのが欲しい。ないものねだりかな。
アンコールは・・
あ、演奏中に眉間に皺を寄せて苦しげな表情をするのは、やめた方がいいと思う。余計なお世話だけども(笑)。
老婆心ついでに、ポスターなどの写真も笑えとは言わないが、もっと柔らかい表情の写真を使ってはどうだろう。
演奏会後のサイン会(↓)。
金川真弓の国籍はアメリカだが日本語は普通にちゃんと話せるようだ。
若い女流ヴァイオリン奏者が、雨後の筍のように登場しているが、ヴィジュアル系が多い。
そうした中にあって、この金川真弓は地味めではあるがなかなかの大器だと思う。注目してみたい。
(2023.2.24「岸波通信」配信 by
三浦彰 &葉羽)
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