サザビーリーグが京都の「麺屋 猪一(いのいち)」を昨年9月に買収して、ラーメン業界に殴り込みをかけようとしているのは既報したが、今度はスニーカー専門店「アトモス(atmos)」の創業者である本明秀文(ほんみょうひでふみ)と大塚の老舗おにぎり屋「ぼんご」の女主人である右近由美子が新会社を設立した。
右近由美子
その最初の店舗として新宿3丁目(明治通り沿いで伊勢丹新宿本店の右隣のビルの隣のビルの1階)に1月18日おにぎり屋「ぼんこ」がオープンした。
ちゃんと営業できるようになったら「ぼんこ」から「ぼんご」に店名変更する予定だという。オープン当初はテイクアウトのみだったが、1月26日からイートイン展開も始まっている。
2021年にアメリカの大手スポーツ専門店のフットロッカーがなんと3億6000万ドル(468億円:1ドル=130円換算)でこの「アトモス」を運営するテクストトレーディングカンパニーを買収したので、ファッション業界のみならず、世間をあっと言わせた。
テクストトレーディングカンパニーは2020年、日本で36店舗、日本以外で10店舗を展開し、年商は192億円。これを468億円で買おうというのだから、どれほど凄い会社なのかが分かろうというもの。
日本のスニーカーブームを牽引していたのはABCマートだが、マニアック客のハートを捉えたのが「アトモス」だったのだ。
「アトモス」
この本明秀文(1968年生まれ、54歳)という人物の「目のつけどころ」というか「商機」を見つける才覚というのも鈴木陸三が創業したサザビーリーグ級だと言っていいだろう。
その本明がスニーカーの次に目をつけたのが、「おにぎり」だったのだ。
なるほど、ラーメンがインフレによって、長年の「1000円の壁」をあっさり超えた今、1個300円程度のおにぎりがラーメンに代わって日本食のボリュームゾーンの王者になるというのは、考えてみれば必然の流れかもしれない。
裏原のスニーカー屋から468億円を叩き出した本明秀文の第2クオーターがいよいよ始まるというわけ。
おにぎりは日本人のソウルフードである。
おにぎりの名店と言えば、「浅草 おにぎり 宿六」(食べログ3.52&レビュー404件)である。東京で一番古い(1954年創業)おにぎり専門店であり大行列店だ。
「浅草 おにぎり 宿六」
ミシュランガイド東京2019では、おにぎり専門店で唯一ビブグルマン(コスパの良い美味しい料理店)に選ばれているが、大塚の「ぼんご」(食べログ3.64&レビュー1473件)もこの「宿六」に匹敵する人気店である。
創業は1960年。現在の女主人である右近由美子の夫だった故・右近祐(たすく)が元ジャズドラマーだったことから「ぼんご」という店名が付けられた。
由美子は店の常連の一人だったという。本明の野望が第2の「アトモス」を作れるのか大注目である。
コロナ禍で大打撃を受けた日本の飲食業界だが、一応の収束が見えてきた今、異業種からの飲食業界参入にはいいタイミングなのかもしれない。
サザビーリーグのラーメン、本明秀文のおにぎりはどんな結果になるだろうか。
(2023.2.3「岸波通信」配信 by
三浦彰 &葉羽)
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