昨晩(12月6日火曜日19時)、初台のオペラシティコンサートホールでクリスチャン・ティーレマン指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団で、ワーグナー楽劇「トリスタンとイゾルテ」から前奏曲と愛の死及びブルックナー交響曲第7番。
ティーレマン指揮ドレスデン国立管弦楽団は2012年10月にNHK音楽祭でブラームスの交響曲第3番、第1番を聞いている。フレージングにちょっと癖のあるブラームスだった。
ベルリン国立歌劇場管弦楽団は、2016年2月にバレンボイム指揮でブルックナー交響曲第8番をサントリーホールで聞いている。素晴らしかったが、クラリネットの音色が明る過ぎるのが気になった。
上掲写真は終演後のカーテンコール。来日海外オーケストラの公演で撮影を許可するのは初めてのケースだ。
このオペラシティのコンサートホールは、ややサイズが小さくて、ブルックナーの交響曲には向いていないと思っているが、昨晩は全く気にならなかった(19列の左端から6人目)。
フォルティッシモは大きく、ピアニッシモは小さいが、音楽が要求しているまさにその強弱なのである。
クリスチャン・ティーレマン
美しく、切なく、雄渾で、大河が滔々と流れるような演奏だった。簡単に言うと、巨大なスケールの音楽なのだが、それでいながら味が濃いのだ。こういう音楽は久しぶりに聞いた。
この交響曲でいつも言われる終楽章のスケールの小ささが全く気にならなかった。
第3楽章のスケルツォが、アッチェレランドをかけるあたりにティーレマンらしい癖がちょっと出ていたかもしれないが、これは終楽章とペアだと考えると納得がいった。
終演後のティーレマン
前に聞いた時には感じなかったが、オーケストラは不思議な音を出していた。
現代のオーケストラとして高度な機能を持っているが、出てくる音は全然トゲトゲしくなく、温かみのあるふくよかな風情に満ちているのだ。いぶし銀の魅力というのだろうか。これはワーグナーでもブルックナーでも感じられた。
そして、音楽が高揚していくときの音楽のウネリというのが現代の指揮者とは一線を画しているし、オーケストラが必死でついてくるのだ。カリスマということなのだろう。
とにかく、予想をはるかに上回る素晴らしい一夜を堪能した。私にとっては今年のベストコンサートではないか。
ティーレマンは、病気のバレンボイムの代演ということで今回来日した。当初の予定では、今夜はシューベルトの「未完成」とチャイコフスキーの交響曲第5番というプログラムだったが、代演に合わせて変更になった。
子どもがイヤに多くてこれは招待らしい。演奏中の落下物が何度もあったのは、このためか。また女性客が2割近くいたが、ティーレマンのファンなのか?
現代には名指揮者はかなりいるが、カリスマ性を持ってオーケストラに有無を言わせず指揮できる指揮者というと今回病欠のバレンボイム(80歳)そしてムーティ(81歳)、ゲルギエフ(69歳)に、このティーレマンということになるのかな。
メータ(86歳)と小澤征爾(87歳)の2人もいるが、この2人はもう指揮台には上がらないのではないだろうか。
しかし、こうして見てみるとティーレマンの63歳というのは若いなあ。なんと、私より若いではないか(笑)。