セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下の百貨店そごう・西武の売却先が、予想されていた米国投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループに正式に決定した。
セブン&アイが11月11日に開いた臨時取締役会で決定したもの。売却額は2000億円内外。
フォートレスは家電量販店ヨドバシHDと組んで、そごう・西武の運営にあたる。
西武池袋本店など首都圏の店舗には、ヨドバシが家電量販店を出店する計画だ。
今回、売却先にセブン&アイ・HDがフォートレスを選んだ背景には、売却により百貨店事業から離れるそごう・西武の人員を再雇用する受け皿を十分に用意してくれそうだからという。
誇り高き百貨店マンたちが家電量販店で働けるのかどうか気になるところだが、百貨店業界を40年間見てきた私からすると、西武池袋本店、そごう横浜店、そごう千葉店といったそごう・西武の基幹店には、ヨドバシカメラの店舗が導入されるというのは驚きだ。
なかんずく日本百貨店業界の牙城のひとつとも言うべき西武池袋本店では地下1階から地上4階までヨドバシカメラが入居して、西武百貨店はそれより上の階に集約する案が有力だという。
この案が実現すれば、これほど日本の百貨店の落日を実感させる出来事はないように私には思える。
百貨店業界の七不思議として2010年まで、東西を代表する三大百貨店店舗、伊勢丹新宿店、阪急うめだ本店、西武池袋本店に「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の店がないのは何故かということが業界内でよく話題になった。
この3店は、「ルイ・ヴィトン」が要求する高い掛け率を絶対に受け入れられない「百貨店の誇り」があるからだろうということになっていた。
この話、「なるほど」と唸らせるだけの説得力があった。3店ともそれだけの人材を備え、MD力を持ち、高い坪効率を誇っていたからだ。
「ルイ・ヴィトン」を導入することは、つまりその誇りを捨てることだと暗黙のうちにこの3店は胸に刻んでいたのだというのだ。
しかし2010年10月30日西武池袋本店の1階に「ルイ・ヴィトン」がオープンした。それは西武百貨店が2006年にセブン&アイ・HD傘下に併合されてしまったからなのだ。
もうすでに西武池袋本店に「百貨店の誇り」は無くなってしまったのだと私は、そのオープニングを見ながら悲しい気持ちになった。
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ルイ・ヴィトン 西武池袋店 |
そして今回、その西武池袋本店の心臓部はヨドバシカメラになるというのである。
この知らせをあの誇り高き西武百貨店マンはどんな気持ちで受け取るのだろうか。今回の買収制はまさに沈みゆく大きな太陽を思わせる。
「百貨店は都心大型旗艦店しか残れないだろう」と述べるファッションジャーナリスト(南充浩オフィシャルブログ)がいるが、そんなに簡単なものではないというのが今回の一件で明らかになった。
百貨店の前途はまだまだ暗いのだ。
(2022.11.18「岸波通信」配信 by
三浦彰 &葉羽)
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