例によって、NHKラジオの聞き逃し配信らじるらじるを聞きながら就寝。
日曜日(6月5日)のラジオ深夜便のラジオ文芸館で朗読されたのは、浅田次郎(70歳)の短編小説「うたかた」。
住人は皆転居や死んでしまった東京郊外の古ぼけた公団住宅で餓死した老女をめぐる短編小説だ。
これが実に見事な小説。というか、身につまされた。例によって、「平成の泣かせ屋」浅田次郎らしい話の運びになっている。
しかし、なぜ餓死?なぜニューヨークやパリで幸せな暮らしをしている息子や娘のところに行かないのかなどの綻びがないわけではない。
まあ、そんなことは小さな傷でしかないのだけれど。
60歳代後半の方には是非文庫本(さすがに人気作家らしく大量に中古が売られている)を購入して読んで欲しい。
右背景写真はこの作品を含めて8編が収録された光文社文庫の表紙だ。⇒
その前の週のラジオ文芸館は、やはり死期の迫った祖母と私の関係を書いた角田光代(かくたみつよ、55歳)の短編小説「さがしもの」(祖母がある画家のエッセイ本を読みたいと言い出して孫娘に探させる話)だったが、なんとも文章がガサガサしていて、聞いていてイライラして来た。
作家の格の違いというものだろう。
角田光代
いずれにしても、60歳代も後半にさしかかり、言ってみれば「いつ死んでもおかしくない」歳なのだが、こういう終活小説が心にささるようになったということか。
上記2編は夫に先立たれた老女の話だが、逆だとどうなるのだろうか。ちょっと探してみるか。