TV録画で映画「インドへの道」(1984年 デイヴィッド・リーン監督 163分)を見る。
映画史に燦然と輝く「アラビアのロレンス」(1962年)を監督した巨匠リーン(1908〜1991)が監督した最後の映画だが、何故か今まで見ないで来てしまった。
え、これってどういうこと?と思わずにはいられないストーリーなのだが、それでいて2時間43分をダレることなく見せるのだから、やはり巨匠の技であろう。
英国の植民地時代のインドで起こった英国女性の傷害事件に関する裁判をめぐる英国人支配者とインド原住民の対立を描く。
リーン監督としては、 イマイチの出来だと思うが、随所に滋味深い巨匠の芸を楽しめるのだ。
左から傷害を負った英国人女性(ジュディ・デイヴィス)、その容疑者にされたインド人医師(ヴィクター・バナルジー)、2人に理解を示す英国婦人役(ペギー・アシュクロフト)。
アシュクロフトはアカデミー賞助演女優賞賞を受賞した。
中央のインド人大学教授を演じるのはなんと英国人俳優のアレック・ギネス(写真中央)。怪優の面目躍如である。
「全てはもう決められているから運命に抗っても無駄」とこのインド人大学教授は宣う。
傷害事件の舞台になるマラバー洞窟。
インドの英国人大学教授役のジェームズ・フォックス(写真右)は容疑者のインド人医師の無実を信じて奔走する。
しかしこの傷害事件にあった英国人女性役のジュディ・デイヴィス(写真左)が「天然」というかとにかくワケが分からない謎の存在。
みんなこの女に振り回されて運命を変えられてしまう。
評論家が訳知りに言うような英国的なものとインド的なものの対立という大仰なテーマがあるとも思えない。
まあ、こういう映画があってもいいんだが。
映画の最終部分には、ヒマラヤの素晴らしい風景がふんだんに出てくる。
なんとなく、リーンはこのヒマラヤの風景を撮りたくてこの映画を作ったんじゃないかという気がしてくるのだが。
映画とは関係ないが、ヒマラヤの麓のネパールの小さな村に300万円持って移住した友人がいた。
年間5万円で楽々暮らせるから、60年間そこで暮らして死ぬという計画だった。
しかし、彼は6カ月で日本に帰ってきた。何故か、周りのネパール人の白眼視に耐えられなかったという。
10年ほど前に彼は癌で亡くなった。ヒマラヤの山を見ると必ず彼を思い出す。
(2020.4.23「岸波通信」配信 by
三浦彰 &葉羽)
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