「windblue」 by MIDIBOX


毎年、元日の夜はウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートのライブ中継をお屠蘇を傾けながらTVで鑑賞する。

 このウィーンからのライブ中継が始まったのは、1980年(後半のみ)。91年からはNHK BSで全編ライブ中継されるようになった。

ニューイヤーコンサート

ニューイヤーコンサート

(ウィーン・フィル)

 ヨハン・シュトラウス父子のワルツやポルカを中心にウィーン・フィルがその艶美なオーケストラ芸術の粋を聞かせるという趣向。いまや世界で最も有名なコンサートになった。

 会場はウィーン楽友教会の黄金の間だが観客を見ると20人ほどの日本人が必ずいる。

 私も一度でいいから行ってみたいと思っているが、ある日本の旅行代理店によれば最高ランクの席が4800ユーロ(67万円)、立ち見で200ユーロ(2万8000円)というから、ちょっと考えてしまう。

 ソファに寝っころがってワインでも飲みながらTV鑑賞し続けることになりそう。何はともあれ、便利な世の中になったものだ、ということにしておこう。

ニューイヤーコンサート

ニューイヤーコンサート

(ウィーン・フィル)

 ところで今年のニューイヤー・コンサートでファッション業界関係者なら見逃せない出来事があった。

 このTV中継では、指揮者、オーケストラ、観客の映像に加えて、ウィーンの風景とウィーン国立バレエ団によるバレエシーン(録画済)が挿入される。

(※右の背景画像)⇒

 今年は、そのバレエの衣裳をなんとヴィヴィアン・ウエストウッドが担当ということで事前から話題になっていた(以前にクリスチャン・ラクロワが衣裳を担当していたこともあったがさして話題にはならなかった)。

 ワルツシーンではまあ普通のドレスだったのだが、ポルカではチェックのミニというヴィヴィアンの「伝家の宝刀」が炸裂したのである。

ヴィヴィアン・ウエストウッド

ヴィヴィアン・ウエストウッド

 ファッションに疎い視聴者は、「なんだ、これは!?」ということになったのでないだろうか。

 すでに初期の過激なパンクテーストを離れ、いわゆる「新古典主義」とでも言うべき様式に移行したヴィヴィアンにとっては、伝統に凝り固まったウィーンのニューイヤー・コンサートとの取り組みといっても別に奇異でもなんでもないのだが、この30年のファッション業界の歴史を知る者にとっては、不思議な感慨が湧き起こって来るのではあった。

 翌日、私は実家の福島を出発して上京したのだが、その帰路の上野駅の山手線ホームで、大きな初売りの福袋を下げている緑色の髪の女子が視界に入った。

山手線ホームにて

山手線ホームにて

 その巨大な福袋には「Vivienne Westwood RED LABEL」とあった。

 ヴィヴィアン人気はここでも不滅であったのだ。

                

(2014.1.17「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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