「windblue」 by MIDIBOX


録画はしたものの、観ることのない映画を少しは片付けようと、9月の連休に6本ほど観た。その中で、久方振りに再視聴して面白かったのが「冒険者たち」(1967年)だ。

 アラン・ドロン、リノ・バンチュラの2人の男に、ジョアンナ・シムカスというトリオ。いまだに根付よいファンがいる映画だ。名作「明日に向かって撃て」はこの映画へのオマージュだと言われている。

「冒険者たち」

「冒険者たち」

 2人の男については説明不要だろうが、このジョアンナ・シムカスという女優を知っている若い映画ファンは少ないだろう。

 1960年代に映画ファンだった方なら、名前ぐらいは知っているだろう。60年代に輝いた女優なら、ブリジット・バルドー、オードリー・ヘップバーン、ソフィア・ローレン、グレース・ケリー、ジェーン・フォンダ、フェイ・ダナウェイあたりということになるだろうが、ジョアンナ・シムカスは、そうした華のある大女優に比べると、ちょっと控え目な美人女優で、1976年には共演したシドニー・ポワチエと結婚して、映画界から引退している(現在はインテリアデザイナーをしているという)ので、わずか10年ばかりの活動期間であるから、本当に控え目な女優だった。

 しかし、中学生の頃から「スクリーン」をそれこそ耽読していた私のような映画ファンには、このジョアンナ・シムカスという女優の「可憐」という形容がぴったりな容姿は、ちょっと押し出しの強い濃厚な美貌の前述の女優たちよりも好ましかったのである。

ジョアンナ・シムカス

パリの街角の煙草屋の
評判の美人お姉さんという
感じのジョアンナ・シムカス

 この「冒険者」に続く「若草の萌えるころ」(1968年)、「オー!HO!」(1968年と)合わせて、シムカス&アンリコ三部作と言われている。

 当時恋愛関係にあったロベール・アンリコ(1931年-2001年)が監督で、シムカスがヒロインを演じている3本の映画なのである。

 3作はいずれも佳作だが、特に「若草の萌えるころ」はひたすらシムカスの美貌と魅力を引き出そうとした作品で、ちょっと映画的には難があるが、シムカス・ファンにとっては、最も重要な作品と言えるだろう。

 このシムカスという女優は、小柄(165cmぐらい)で華奢な体型で、何を着てもサマになるファッション系女優である。

 「冒険者たち」では、金属彫刻家という役柄だが、自らの初の個展で彼女が着ているドレスを見て驚いた。なんと「パコ ラバンヌ」の不朽の名作のメタル・ドレスではないか。

ジョアンナ・シムカス

冒険者で「パコ ラバンヌ」の
メタルドレスを着た
ジョアンナ・シムカス

 1980年代半ばにパコ・ラバンヌ(1934年、スペイン・バスク地方生まれ)をインタビューした思い出が甦った。1時間のインタビュー中、ひたすらイヴ・サンローランの悪口を言い続けていた。

 「闘うクチュリエ」「オートクチュールの闘牛士」と言われたパコ・ラバンヌだが、もうすでに活動は休止している。

 「パコ ラバンヌ」は現在プーチ・グループに属し、ジュリアン・ドゥセナがプレタポルテのディレクター。パコ本人のあの毒舌は今も健在なのだろうか。会って色々と昔話を聞いてみたい気がした。

PACO RABANNE

PACO RABANNE

 ともあれ、さっさと映画界を引退した我が青春の憧れジョアンナ・シムカスと「パコ ラバンヌ」を愉しんだ映画「冒険者」だった。

                

(2013.10.7「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)


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