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4月4日にオーク表参道がオープンした。場所はかつて表参道のメルクマールとして君臨していたハナエモリビル跡。

(※右の背景画像:「オーク表参道」)⇒

 正面には向かって左から「エンポリオ アルマーニ青山店」(600㎡)、「ネスプレッソブティック」(380㎡)、「コーチ表参道」(463㎡)の3店。

 さらに向かって右側面に「スリードッツ青山店」、建物の奥の2階部分には「茶洒(サーシャ)金田中」(日本料理の金田中のカフェ業態)、「ケイ・ウノ表参道」(オーダーメイドもあるジュエリー・ブティック)という配置だ。

オーク表参道

オーク表参道

「エンポリオ アルマーニ」は、従来の表参道店から交差点寄りへの移設・拡大で、従来の3層店舗が2層になり、1階には日本初となる「エンポリオ アルマーニ カフェ」(80㎡)を併設し、国内最大の品揃えを誇っている。

 ある業界関係者に話を聞くと、東京の主要商業地の銀座、表参道、渋谷、新宿を比較すると月坪家賃(1カ月の1坪=3.3㎡あたりの家賃)は、銀座>表参道>渋谷>新宿の順、月坪売上高平均は、銀座>新宿>表参道=渋谷の順だという。

 要するに、表参道は、4つの市場のうちで、最も投資効率の悪い場所だということになる。

 実際、表参道の路面店で、黒字化している店舗は「グッチ」「エンポリオ」「ルイ・ヴィトン」「ドルチェ&ガッバーナ」ぐらいではないのかと業界では言われている。

ドルチェ&ガッバーナ

ドルチェ&ガッバーナ

(表参道店)

 では、なぜ有名ブランドは表参道に出店するのだろうか。

 なんと言っても、文教地区としての環境の良さを背景にしたイメージの高さであろう。

 長引くデフレ経済の影響で地価全般が下がり続けているにもかかわらず、銀座、表参道・青山についてはこの10年間高止まりが続いているのを見ても、銀座と並んでその人気は依然として高い。

 前述した「エンポリオ」については、従来年間20億円以上の売り上げがあると言われて来たが、今回の移設・拡大でそれ以上の年商を期待していると思われる。

 余談だが夜に輝く鷲のシンボルマークの巨大さは度胆を抜く。

エンポリオアルマーニ青山店

エンポリオアルマーニ青山店

(表参道)

 さて、表参道への出店を熱望し続けていた「コーチ」だが、関係者の話を総合すると大体銀座の売り上げの半分程度を見込んでいるという。

 日本一の売り上げを誇る銀座店の年商は25億円程度と推定されるから、恐らく表参道店の予算は月商1億円、年商は12億円程度ではないか。

 ちなみに、売り上げに占める家賃比率を賃貸物件の平均的な損益分岐点である25%で想定すると、月商1億円として月の賃貸料総額は2500万円。

 同店は1階2階合計で140坪だから、月坪家賃は17万8500円になる。

 不動産関連者の話を聞いても「あの場所なら1階部分で20万円、2階部分で10万円。ならして15万円前後」ではないのかという答え。

 コーチ・ジャパンの関係者も「月商1億円ならもちろん黒字」と語っているから、上記の推測数字はさほど間違っていないはず。

コーチ表参道

コーチ表参道

「コーチ表参道」で注目されるのは、2階がほとんどメンズアイテムで占められている点と、1階でかなりインパクトのある陳列がなされているウィメンズ・シューズである。

 すでに日本のラグジュアリー・ブランドの市場はかなりの飽和状態にあるのは、本コラムでも指摘して来た通り。アクセシブル・ラグジュアリーの「コーチ」にしても状況は同様である。が、メンズアイテムとウィメンズ・シューズはまだまだ可能性があるとみられている。

 コーチ・ジャパンの関係者によると、同店の30%程度をメンズアイテムで売り上げたいとしている。

 ウィメンズ・シューズはハンドバッグに続いて、日本の女性たちが熱烈に欲しがり始めているアイテムである。

 ラグジュアリー・ブランドのハンドバッグが10万~20万円だが、同じブランドのシューズはその半分の5万~10万円というプライスレンジ。

 アクセシブル・ラグジュアリーのコーチなら、その半分という価格設定である。

一階の店内

一階の店内

(コーチ表参道)

 エンポリオ アルマーニ、コーチそれぞれになかなか勝算のありそうな今回の出店ではある。

 特にコーチは、表参道への出店は「悲願」と言ってもよく、店舗作りにも力が入っており、著名な大手建築設計事務所OMA及びパートナーとして重松象平を起用。

 これで、表参道・青山地区に路面店のないラグジュアリー・ブランドは「エルメス」「ティファニー」ぐらいになった。

 しかしながら、今回のオーク表参道の目玉は、「ネスプレッソブティック」であるように思われる。

 テナントの中で、最もこの表参道ブティックのオープンを熱望していたと不動産関係者も認めている。

 パリのシャンゼリゼにある「ネスプレッソブティック」に匹敵するブティックをこの表参道にオープンするのがネスレ日本の長年の夢だったという。

ネスプレッソブティック

ネスプレッソブティック

(表参道店)

 もちろんグラン・クリュと叫ばれるコーヒー・カプセルやネスプレッソマシン等の販売も行うが、1階中央には「テイスティング・エリア」と呼ばれる無料でコーヒーの飲める場所まである。表参道の新名所になりそうな予感がする。

 また2階ではネスプレッソの魅力を伝えるセミナーを常時開催するという。まさに、ネスプレッソの広告塔に徹した館だが、日本でも最高レベルの家賃の場所で、ここまで徹底されるとファッション業界に身を置くものとしては複雑な思いである。

 奇しくも、オーク表参道の表参道を挟んだ向かい側(伊藤病院の向かい)には2014年3月にアップルストア(3階建て)がオープンする。

 銀座のアップルストアはすでにファッション業界のナンバーワンである販売店である「ルイ・ヴィトン」銀座店を抜き去っている(推定年商80億円)と聞く。

 うかうかするとアップルストア表参道店がアッという間にナンバーワン店舗になるかもしれない。「ファッションの街、表参道危うし」である。

                

(2013.5.4「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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