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日本のラグジュアリー・ブランドの市場に関して、興味深い2つのデータが発表になったので紹介する。

 ひとつは、矢野経済研究所が7月に発表した「日本における欧米からのインポートブランド(衣料品・服飾雑貨)市場規模の推移」。

主席研究員 松井和之氏

矢野経済研究所
ファッション・スポーツ&リテール事業部

主席研究員 松井和之氏

 必ずしもいわゆるラグジュアリー・ブランドばかりではないが、市場動向を知る一助にはなるだろう。

 それによると、2011年の同市場規模は9000億円で、前年の8314億円に比較して108.3%の水準だ。

 3月11日に発生した東日本大震災の影響はほとんどなかったという従来からの定説を裏付ける結果になった。

 2007年後半のサブプライムローン問題の露見、2008年9月15日のリーマン・ショックの影響が薄らぎ、在庫調整が進んだことが原因として上げられる。

 因みに、2006年 1兆1877億円→2007年 1兆1856億円→2008年 1兆643億円→2009年 8946億円→2010年 8314億円→2011年 9000億円という推移になっている。

 2011年で4年ぶりに増加したというよりも2007年~2010年と4年連続の減少で、このマーケットが1兆円を割り込んだという事実の方が重要かもしれない。

 この調査によると、1996年で同市場は1兆8971億円とされているから、この15年でほぼ半減したことになる。

LOUIS VUITTON

LOUIS VUITTON

 このうちラグジュアリー・ブランドと呼ばれる30ほどのブランド(ルイ・ヴィトンを筆頭にグッチ、エルメス、シャネル、フェンディ、フェラガモ、ディオール、サンローラン、ボッテガ・ヴェネタなどのレザーグッズブランド及びカルティエ、ティファニー、ブルガリ、ハリー・ウィンストン、ヴァン クリーフ&アーペルなどのハイジュエリー)が占める割合は、ほぼ60%程度で現状5400億円程度ではないかと推測される。

 矢野経済研究所の市場推測では全体が半分以下になっているが、度々指摘しているが、ラグジュアリー・ブランド30ブランドに関して言えば、そこまでの減少はなく、ピーク時(2003年~2004年)の60~70%に収まっているのではないかと推測される。

 矢野経済研究所の同調査によると、今年2012年の同市場規模予想では、8955億と昨年に対して若干の減少となっているのを付け加えておく。

 さて、日本のラグジュアリー市場についての、もうひとつの興味深いデータは、WWDジャパン9月10日号P.4に掲載された記事である。

 同記事の冒頭から引用すると:
―コンサルティング企業マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、世界不況真っ只中の2009年、中国ではラグジュアリー製品の売上高が16%伸びて640億元(約7872億円。元の交換レートは1元=12.3円)に達し、日本を追い抜いて世界最大のラグジュアリー市場になった―

 ラグジュアリー市場というのが、曖昧な表現な上に、マッキンゼーの推測数字に異議を挟むわけではないが、疑問点のひとつは、従来世界最大のラグジュアリー市場だったアメリカは一体どうなっているのかという点。

TIFFANY

TIFFANY

 この記事によれば2000年時点では、中国、日本、アメリカという順番らしい。アメリカのラグジュアリー市場というのは、それほど落ち込んでいるのか。

(※背景画像「上海」)⇒

 少なくとも1990年代では、日本と拮抗していたから、やはり日本同様にかなりのスピードで減少しているのか。

 「オメガ」、「スウォッチ」などでは、スウォッチグループのトップから、3年ほど前にすでに中国の売り上げが日本の売り上げを抜いているとは聞いていたが、LVMHの経営トップからは、2005年前後に、「中国が最大市場になるにはあと10年はかかるだろう」という話を聞いていたので、随分早く「その日」が来たなという印象である。

 ただし、日本の某宝飾ビッグブランドの関係者の話だが、今年上半期の中国での同ブランドの売り上げは、前年割れしているという(そのために、中国に過度に集中していた広告費が日本に回って来ているとも)

swatch

swatch

 中国の景気が減速しているというのはもはや紛れもない事実だが、それが次のステップに進む踊り場なのか、それとも終わりの始まりなのかは予断を許さない。

 さて、日本市場の7-9月のラグジュアリー・ブランドの動向だが、期間の大半がシーズンオフということもあり、前回と比べ大きな変化はない。

 ただし、特に8月末から9月初旬にかけて宝飾・時計部門を中心にして、イベント、新製品発表会が、ここ数年になく多かった印象だ。

 今年創業135周年の「ティファニー」の各種イベントを筆頭に「カルティエ」(「ネバー・ストップ・タンク」)、ブルガリ(新メンズ時計「オクト」)、ヴァン クリーフ&アーペル(創業一族の「ピエール・アーペル」展)など、かなり力の入ったプロモーションが展開された。

                

(2012.10.1「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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