初台の新国立劇場のオペラパレスが今年開場15周年を迎える。
10月から始まる2012-13年シーズンはその15周年記念公演が目白押しのようだ。
開場当座は席数が少なすぎて(約1800席)海外オペラの引越し公演が出来ないとか(採算が取れない)、いろいろと批判もあったが、15年が経過して、いわゆる東京のオペラ座としてその評価は定着しつつあるのではないだろうか。
なによりも公演のレベルがここ数年格段にアップしているのは間違いない(これは在京のオーケストラにも言える)。
さて6月は2011-12年シーズンの最終演目であるワーグナーの歌劇「ローエングリン」。
私はワグネリアンではないが、この公演は楽しみにしていた。
今をときめくヘルデンテノールのクラウス・フローリアン・フォークトが題名役で登場するからだ。
(※右背景写真「クラウス・フローリアン・フォークト」)⇒
しかも指揮が今やワーグナーやリヒャルト・シュトラウスのオペラの第一人者として名声のきわみにあるペーター・シュナイダーときては、どうしても行ってみたくなった。
6月1日の初日を聴いたが、久方ぶりにワーグナーのオペラを満喫した。
フォークトはまさに透明で明るくしかも良く通る声という白鳥の騎士ローエングリンを歌うために生まれたようなテノールである。しかもイケメン。
早くも追っかけらしきオバサンもチラホラ(韓流オバサンは許さないがこっちは許す)。
かつてのペーター・ホフマン(2010年に66歳で死去)を彷彿とさせる風貌で人気急上昇中なのもうなずける。
このフォークトとともに、その婚約者エルザのリカルダ・メルベートもメンヘラな王女を好演。ハインリヒ・ドイツ国王役、敵役のフリードリヒ役も手堅い歌唱で水準以上だった。
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クラウス・フローリアン・フォークト
(ローエングリン役)
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さらにシュナイダー指揮の東京フィルが大熱演。
有名な第1幕の前奏曲、第3幕の前奏曲はもちろん実に骨太のワーグナーを聴かせた。
衣装はバイロイト音楽祭でも活躍するロザリエが担当。
ファッション的にはネオプレン(ウェットスーツなどの素材)を使っているのが注目だ。
「ジル・サンダー」で前デザイナーのラフ・シモンズ(次のシーズンに、いよいよ「ディオール」のチーフデザイナーとしてデビューする)が好んで使った素材で、シルエットがスッキリと出ている。
最近は海外の有名オペラハウスの引越し公演が、この新国立劇場オペラパレスの倍近い値段で凡庸な演奏を行うケースが少なくないがそれを思えば声を大にして今回の公演を大推薦したい。
間違いなくワールドクラスである。
ただし全3幕で2回の休憩があり、トータル約5時間の長丁場。くれぐれも前夜は十分な睡眠を。
それにしても、この「ローエングリン」は、かつてはバイエルン国王ルードヴィッヒを虜にしてその作曲者のワーグナーに国が傾くほどの金を注ぎ込ませるきっかけになった魔性の曲。
さらに悪魔の総統アドルフ・ヒトラーのテーマ曲でもあった(第3幕のドイツ帝国のために立ち上がれあたりの音楽)。
たしかに、悪魔的で変に血を騒がせるのである。
ローエングリン 2011-2012シーズン[New
Production]
リヒャルト・ワーグナー/全3幕 [ドイツ語上演/字幕付き]
公演会場:新国立劇場 (東京都渋谷区本町1-1-1
http://www.nntt.jac.go.jp/access/)
上演期間:6月7日(木)マチネ、10日(日)マチネ、13日(水)ソワレ、16日(土)マチネ
上演時間:
Ⅰ幕65分 (マチネ:14:00~15:05、ソワレ:17:00~18:05)
Ⅱ幕85分 (マチネ:15:45~17:10、ソワレ:18:45~20:10)
Ⅲ幕65分 (マチネ:17:50~18:55、20:50~21:55)
※会場は開演の45分前から
※開演後の入場は禁止
※上演の都合により、上映時間が変更になる場合もあり
(2012.7.10「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)
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