「windblue」 by MIDIBOX


不世出の名馬シンザンが勝った有馬記念(1965年)を蕎麦屋のテレビで父と一緒に観た記憶がある。私の最初の競馬体験だと思う。

 父はギャンブルに全く興味のない男だったが、その反動なのか、私は競馬、競輪、競艇、オートレースについては、それぞれ必勝法を求めてそれなりの「投資」をしたし、それぞれに一家言ある(何を偉そうに)

シンザン 有馬記念勝利!

シンザン 有馬記念勝利!

 ギャンブルの快感は的中時の征服感にある。ギャンブルをロマンなどとのたまう輩がいるが、錯覚か負け惜しみである。

 ハイセイコー、オグリキャップ、シンボリルドルフ、ディープインパクトなどのスーパーホースのレースは全てオンタイムで観戦したが、その一時の感動も敗北の苦さを薄めることはなかった。

 当然のことながらある時を境に手仕舞いした。「必然は偶然に勝てない」は現代哲学の根本原理だからである。

 ついでに述べれば、将棋、麻雀(いずれも賭け事ではない。ゲームと言っていいかもしれない。

 長い間には必ず強い者が勝つ)も下手の横好きと言われながら誘われれば断らない。

 要するに勝負事が好きなのだが、いかんせん強くはない。

競馬

競馬

 手仕舞いはしたが、今でもJRA中央競馬会の競馬中継だけはほとんど毎週TV観戦しているし、参加費程度に馬券も時々買う。

 しかしJRAに最近大きな問題が持ち上がっているのを感じずにはいられない。

 なんと言っても、1997年以来14年連続で減り続けている売り上げだろう。

 1997年には史上初の4兆円の大台に乗った売り上げは実に14年間連続で減少し昨年は2兆2935億円とピークの57%の水準。

 ま、ファッション業界でいうと92年以降の日本の百貨店みたいなもの。

 日本経済のバブル崩壊は1990年だから、97年がピークというのは経営努力やスターホースの存在が大きかったかもしれない。

 昔からギャンブルは不況に強いと言われてきたがすでにそんなことは寝言だ。

 経営不振から閉鎖に追い込まれている地方の公営ギャンブルも多く、もはや日本のギャンブルはパチンコを除き大斜陽産業化している。

 デフレ経済、レジャーの多様化、若者のギャンブル離れなど様々な理由がありそうだが、当面この傾向が納まる気配はなくJRAの年商2兆円割れは時間の問題だろう。

JRAのCM

JRAのCM

 当然JRAの台所事情も厳しくなっていることだろう。競馬新聞の廃刊も牧場の廃業も相次いでいる。

 1月23日には騎手時代にダービーを2回も勝った小島貞弘・調教師(60歳)が首吊り自殺するという衝撃的な事件があった。厩舎の経営難が原因とみられている。

 競馬ジャーナリズムもこの事件についてはあまり多くを語りたがらない。

 運命共同体であるから身内の不幸を語らないその気持ちはわからないではないが、それだけに競馬不況はかなり深刻だという印象を受ける。

(以下次回)

                

(2012.3.15「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)


PAGE TOP


banner Copyright(C) Miura Akira&Habane. All Rights Reserved.