渋谷109が秋のリモデルを行なったが、規模もさほど大きくはなく、あまり話題にも上らない。
2009年、109は14年ぶりに前年を割り込んだが、昨年も2年連続で前年割れ。今年も前年クリアは難しそうだ。
ギャル・ファッションの牙城も2008年9月13日の「H&M」日本初上陸に端を発したファストファッション・ブームや同年9月15日のリーマン・ショックの影響を他のゾーンと同じように受けているということだ。
とくにファストファッションの影響は甚大だった。
銀座、原宿、渋谷、新宿といったビッグマーケットに「H&M」「フォーエバー21」が巨艦店をオープンしたのだから無理からぬことだ。
今年に入って、5月に「ギルフィー」を手掛けるギルド・コーポレーションが、営業不振を理由に1円(間違いではありません)で親会社のフルスピード社からサンフランシスコ社に売却されたのを皮切りに、6月に「ジョイアス」のフォーアンドコレーが負債10億円で民事再生法を申請。
8月に「ラブボート」のララ・プランが負債70億円で民事再生法を申請。
同社はピーク時(2009年2月期)には125億円だった売り上げが2011年2月期には79億円まで急減していた。
ギャル・ファッションの世界ではいずれも109で名を上げた有名メーカーだが、営業不振と貸し渋りで資金繰りが悪化し、3月の東日本大震災でトドメをさされた格好だ。
この3社に続く破綻予備軍はまだまだありそうだと言われている。
かつては、不況に強いヤング・ファッションと言われたものだが、昨今はそうでもない。
なぜ不況に強かったかと言えば、「若者のおしゃれ心は景気に左右されない」なんて暢気なことを言っていたのである。
選択肢も増え、競合も激しくなってそんな「暢気」は通用しなくなった。
ただひとつ言えることは、ヤング・ファッションを扱うファッションメーカー(この言い方は古いか)は、社員の平均年齢が20歳代で、平均年齢が40歳を超えるような大手・老舗アパレルと比べると人件費が格段に安価で、資金が少ないのに色々面白い仕掛けができるということになっている。
もちろん大手や老舗に比べて、デザインや店頭や販売で新しい感覚が表現されているのは言うまでもない。
前述した破綻3企業もそうだが、109系ブランドの特徴はブーム的急成長だ。
倍々ゲームも珍しくはない。人気が人気を呼ぶというヤツだ。そしてある日例外なく急落。
その急落から這い上がれるのかどうかがいわゆるちゃんとした「企業」になれるのかどうかの分かれ道ということになっている。
しかし考えてみれば当たり前のことだが、現在大手・老舗とよばれている企業もやはりそうした道を同様に歩んで、その前の大手・老舗企業にとって代わってきたのだろう。
現在のポイント、パル、クロスカンパニー(WWDジャパンではPPC御三家と呼んでいる)はすでにその域にあるが、さらにジャパンイマジネーッション、バロックジャパンリミテッド、マークスタイラーがこれに加わっているようだ。
果たして109はこうしたビッグ企業を生み出してその使命を終えるのか、それともさらなるビッグを生み出す孵化器として存在し続けることができるのか。今が正念場であろう。
(2011.9.28「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)
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