TV録画で映画「あん」(2015年 河瀬直美監督)を観る。
ドリアン助川の小説が原作だが、ハンセン氏病に対する誤った理解を糺す意味でこういう映画の存在意義は大きいだろう。
加えて人間の運命の非情や酷薄を淡々と描く映画として、それなりに意味もあるのだろう。
河瀬直美は優れた映画監督だとは思うが、こういう映画には、もっと向いている監督がいるはずである。
樹木希林はいつもの樹木希林以上でも以下でもない。最期の映画出演である。
いい味を出しているとも言えるし、飄々として主人公の悲哀がまるで感じられないという感想もあろう。
主人公の親友役で登場する市原悦子(上掲写真右)の方が主人公に向いているなんて感想があるぐらい。
永瀬正敏はこういう役にはぴったりで、こちらの方が実は主人公だということが徐々に分かってくる。背中の演技が素晴らしい。
問題は、どら焼きの店によくやってくる女子高生を演じる内田伽羅だろう。樹木希林の孫である。
妥協した配役をリカバー出来ていないのは、監督の責任だろう。河瀬直美はなんでこの仕事を引き受けたのだろう。
この映画を見ていて、なんか見たことのある風景が続出する。
そうか!この原作はハンセン氏病の国立療養所多磨全生園のある東村山市を舞台にしていたのだった。
ロケは東村山市というか我が街久米川駅周辺で行われたようだ。永瀬正敏がやっているどら焼き屋もアパートもどの辺りか私は知っている。
これが、この映画を観て最大の驚きだった。
東村山市というと馬鹿のひとつ覚えで志村けん=東村山音頭となるが、いろいろと見所があるのだ。私は33年もこのあたりに住んでいる。
それと、この映画で気になったが、何故わざとくすんだカメラワークにしているのだろうか、それとも街自体がくすんでいるのだろうか。
全体にカメラフォーカスが甘い。このあたり河瀬監督に是非聞いてみたいところだ。
(2019.9.20「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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