マルタ・アルゲリッチ(1941年6月5日ブエノスアイレス生まれ)という当代随一の女流ピアニストがいる。
若い頃は強靭なテクニックを駆使した奔放な演奏で女リストと呼ばれたものである。
が、20年ほど前から滅多にソロ活動をしなくなり、室内楽や協奏曲などが活動の中心になっている。
テクニックが衰えたわけではない。
本人の弁によると、誰かとともに演奏することの喜びに目覚めたのだという。
そうではなくて、なにか一人で演奏することに恐怖感を持つようになったのではないかと訝る評論家もいた。
7月22日に原宿ジャイルで「コムデギャルソン」と「D&DEPARTMENT PROJECT」(人気廃盤の復刻というコンセプトは良いアイデアだがこの長ったらしい名前はなんとかならんのだろうか。以下DDP)のコラボショップ「GOOD DESIGN SHOP」のオープニングイベントを取材した。
そのとき私はふとその場には不在の川久保玲のことを思いながら、その顔にアルゲリッチの顔を重ね合わせていた。
「誰かとともに演奏することに喜びを感じる」と言うアルゲリッチの言葉は、今回のコラボショップを思いついた川久保玲の言葉にだぶる。
本日発売のファッション週刊紙WWDジャパン8月1日号のP.3のChat Chat!でDDPの長岡賢明・代表は「4ヵ月前に川久保さんから、突然今回のコラボについて私の携帯電話に連絡があった」と語っているが、いかにも川久保玲らしい。
「思い立ったらすぐに実行、必ず完結」が彼女の信条なのだろう。
ここ10年ばかりの間、コムデギャルソンはコラボ・ビジネスに活路を求めて来たような印象をうける。
高速水着で話題になった「スピード」とのコラボ、イタリアのセレクトショップ「ディエチコルソコモ」とコラボした南青山のショップ、遂にはファストファッションの「H&M」、ラグジュアリー・ブランドの「ルイ・ヴィトン」ともスポットではあるがコラボした。
もっとも「もうファストファッションとはコラボしない」と川久保はどこかで話していた。
この他にもコラボとは言えないのだろうが、マルタン・マルジェラを始めとした様々な「共同作業」があった。
同社の「ジュンヤ ワタナベ」に至っては(特にメンズウエア)コラボ狂と言っていいほどである。なぜ同社はこれほどコラボに熱を上げるのだろうか。
(以下次回)
(2011.8.12「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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