7月19日に名優というか怪優というべきか原田芳雄が71歳で死んでしまって、その最後の主演作品の「大鹿村騒動記」(阪本順治・監督)が話題になっている。
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大鹿村騒動記
(C)2011「大鹿村騒動記」製作委員会
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18年前に駆け落ちした男女(岸部一徳と大楠道代)が大鹿村に帰って来て、元夫(原田芳雄)の家に転がり込む。
女はアルツハイマーを患っており、様々な騒動が繰り広げられる。
これに有名な大鹿村の村歌舞伎が絡むというペーソスあふれる大人のコメディだ。
この映画は7月16日から全国ロードショーされているが、是非観に行きたいと思っている。
ファッションと全然関係ないじゃないと言われそうだが、ほとんど関係はない。
主演の大楠道代がビギ・グループの楠祐二・代表の奥さんというくらいのものだ。
いつも思っていることだが、ビギ・グループの1社であるビギの副社長でデザイナーでもある稲葉賀恵(いなばよしえ)氏に大楠道代(旧姓安田道代)はよく似ていて、色々と下司の勘繰りをしてしまうが、それは本稿とは関係ない。
さてこの大鹿村(長野県下伊那郡)、一度訪れてみたいと思いながら、なかなか果たせないでいる。
この村に住んで村の四季折々の風情を切り絵に描いている柳土情(やなぎどじょう)という人物と長年付き合いがあるのだ。
本名柳下修(1933-)氏。
1987年に大鹿村に奥さんの敏子さんと移り住むまでは、品川区の戸越で居酒屋「伊那路」を営んでいた。
その客の一人が当時戸越銀座に住んでいた学生の私だったという古い話である。
当時流行った西島三重子の「池上線」(戸越銀座は池上線の駅)とかかぐや姫の「神田川」なんか鼻歌で歌いながら、近くの福井湯の帰り、洗面器抱えながら、店の前の枝垂れ柳をかき 分けてこの「伊那路」でビールを一杯やるというのが決まりだった。(一杯で済めばよいのだが)遠い昭和の風景である。
この柳下夫妻今も元気で、村の親善大使として東京で時々切り絵展を開いている。
その都度出掛けて旧交を温めているが、もう二人とも喜寿を迎えたというのに、ほとんど昔と変わらない。
よほど大鹿村の空気と水がいいのだろう。
私は、おいちゃん、おばちゃんと呼んでいるのだが、ふたりはどんな思いで映画「大鹿村騒動記」を観たのだろうか。
なにせ二人は居酒屋を始める前は劇団に所属の役者だったのだから。
もしかしたら映画にもチョイ役で出ているかもしれない。
観に行かなきゃ。
(2011.7.27「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)
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