TV録画映画評論家のカリスマ彰です。
いやあ、三連休が続いて、ソファに寝っ転がってひたすらTV放映された映画の録画を見続けております。
このままでは年間100本越えは確実(9月末時点で79本)。一種の映画鑑賞鬱病ではないか、と思っています。
ただ観るだけでは能が無いので、前回紹介したベスト10に続くベスト10を紹介。
1.「甘い生活」(1960年 フェリーニ監督)
歴史的名作で過去に観てるはずだが、改めて観ても初めて観るような感動。やはりとんでもない傑作。
冒頭のキリスト像をヘリコプターで運ぶシーンからしてまさに「映像の魔術師」。
7つのエピソード中、ある知識人が未来への不安から幼な子を殺害後ピストル自殺する話が不気味だ。
2.「太陽はひとりぼっち」(1962年 アントニオーニ監督)
監督の愛人だったモニカ・ヴィッティが主演した「愛の不毛三部作」の最終作。
現代人の荒涼たる心象風景を映像化する方法論を確立したパイオニアがアントニオーニだと思う。
1960年代といのは、まさに映画の黄金期だった。
3.「バルタザールどこへ行く」(1966年 ロベール・ブレッソン監督)
主人公バルタザールは一頭のロバ(写真中央)。
このロバが見る人間たちの愚行を描く。ロバの演技もブレッソンが指導したらしい。
女主人公を演じるのはアンナ・ヴィアゼムスキー(写真中央)。
後にヌーヴェルヴァーグの代表的映画監督ゴダールの妻になる。人間の描き方に甘さがなくて厳しくて(安易な勧善懲悪が皆無)泣きたくなる映画。
なお動物愛護団体から抗議があったという。
4.「スワンの恋」(1983年 シュレンドルフ監督)
プルーストの畢生の大作「失われた時を求めて」をゆっくり読むのが私の老後の夢だが、これはその中の一編を映画化したもの。
監督がドイツ人で主人公が英国人、その恋人役がイタリア人という変な映画だが、19世紀末のパリと貴族&ブルジョワ社会を実に緻密に描いている。
5.木と市長と文化会館(1992年 エリック・ロメール監督)
フランスの田舎町の市長が自然を破壊して文化会館を建設しようとする。
これを阻止しようする人々と市長をめぐる政治風刺喜劇。
登場人物はとにかく理屈、屁理屈を喋り捲る。フランス人でないとできない映画。
巨匠ロメールの面目躍如たる風刺映画である。
6.「トゥルー・ロマンス」(1993年 トニー・スコット監督)
面白いことこの上ないヴァイオレンス・ムービー。脚本がタランティーノだから当然だが。
感動的な場面がある。
主人公の父(デニス・ホッパー 写真)がマフィア(クリストファー・ウォーケン)に拷問されるが息子の行方について完全黙秘。
その時、ドリーヴの歌劇「ラクメ」から花の二重唱という天上的な名曲が流れるが、これは映画の中のクラシック音楽の最も素晴らしい使われ方だと思う。
7.「ソイレント・グリーン」(1973年 リチャード・フライシャー監督)
B級SF映画の第一人者のフライシャーが食糧難に陥った未来社会を描く、ディストピアもの。
写真は主人公のチャールストン・ヘストン(写真左)と仕事仲間のエドワード・G・ロビンソン(同右)が久しぶりにありつくマトモな食事のシーン。
シューベルトの「岩の上の羊飼い」の旋律が流れる。これもクラシック音楽の見事な使用例だ。
この映画はロビンソンの遺作になった。
8.「ハッピーフライト」(2008年 矢口史靖・監督)
同監督の「ウォーターボーイズ」「スウィンギングガールズ」も面白かったが、こういう群像喜劇が日本映画の成功パターンのようだ。
気晴らしにはサイコーだ。
9.「おくりびと」(2008年 滝田洋二郎・監督)
上山温泉に行ったときに、本木雅弘と広末涼子の主人公夫婦の住居になった喫茶店を見学したことがある。
遅ればせながら、公開後10年経った8月にこの映画を観た。
山形の空気が流れた喜劇で実に面白かった。
山崎努は本当に見事、こっちが実の主人公。
10.「君の膵臓をたべたい」(2017年 月川翔・監督)
早くもTV放映されたので、気がすすまなかったが観てみた。
細かいことだが「君の膵臓がたべたい」ではないのだろうか。私の日本語がおかしいのかな。
そして、こんな素敵な女の子は残念ながら今の日本に現れる確率はほぼゼロだ。
そしてちょっと考えもつかない結末。
そんなに悪くない。
(2018.10.10「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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