「windblue」 by MIDIBOX


今回は久々にファッションの話♪(葉羽)

 毎日、ニュースは福島第一原発関連から始まる。 慣れては来たが、それでもついつい見てしまうし、気は滅入る。

 年老いた母親が、原発から55キロ離れた福島市にひとりで住んでいるので、関心は高い。

福島第一原発

福島第一原発

 いずれ退避勧告地域も現在の30キロ圏内から40キロ、50キロと広がるのではないかと思っている。

 この騒ぎが落ち着くまでもう2年や3年、下手すれば5年、もっと下手をすれば10年かかるというのが、次第に明らかになって来たが、それまでニュースはずっといつも福島第一原発から始まるのだろうか。たまらないなと溜息がでる。

                

 

 震災の1ヵ月程前、二期会によるオペラ「サロメ」を東京文化会館で見た。

 現代を代表するオペラ演出家のペーター・コンヴィチュニーが演出を担当するというので、マニアの間では前評判が高かったが、その上演は驚きの連続だった。

サロメ

サロメ

 舞台はオスカー・ワイルドの原作にあるように西暦30年頃のエルサレムではなく、まさに現代。

 それも核戦争後の核シェルター内で酒、薬、セックスに溺れて享楽的に生きる人々によって演じられる。 その中に主役のサロメもヨカナーンも暮らしている。

 そのストーリーは原作とはまるで違った展開になるのだが、現在のオペラ演出の流行である原作の「読み替え」である。

 核戦争後の核シェルターに生きる人々という設定はこの鬼才演出家の得意技でもあるのだが、まさか1ヵ月後に我が身の降りかかってくるとはその時ついぞ思わなかった。

ペーター・コンヴィチュニー

ペーター・コンヴィチュニー

 今回のような大惨事がなければ、我々は、実は核の危険にさらされながら生きているという現実を忘れてしまいがちなのだ。

 鬼才演出家はその現実を痛いほど知っているのだろう。

 だから憑かれたように核シェルターが繰り返し繰り返し登場する。

 まるで我々は核時代の申し子でもあるかのように。

                

 

 大胆な予想だが今年9月、10月に発表される2012年春夏コレクションでもそうした意識に基づいた作品、商品が少なからず見られるのではないだろうか。

 社会意識が強い弱いに関係なく、しばらくはそうならざるをえないのではないか。

 ファッションが、単なる衣服を超えて社会的な存在、あるいは社会を映す鏡であるならば。もちろん防護ファッション花盛りを予想するわけではないが、様々な形で「プロテクション」というキーワードが浮上するのではないか。

 ファッション・デザイナーたちの意識というのをしっかり見届けてみたい。

(※背景画像は2011秋冬ミラノコレクションより)⇒

 先日、松屋ファッションディレクターの関本美弥子さんと話していたら、「当面日本では、ゴージャス、自己主張の強いスタイリングは売りづらいと思います。癒し、優しさ、慰め、可愛らしさ、クリーンといった要素が売れ筋になっていくのでは」と予想していた。

                

(2011.7.8「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)


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