(前号から続く)さすがに金曜日は飲み過ぎたが、例の知人がスケジューリングしてくれた土曜日の見学ツァ―はかなりのハードスケジュールだった。ハイヤーを手配してくれているのが有り難い。
テーマは「アートフル京都」ということらしい。京都に暮らす魅力的な3人の女性をこの回では紹介する。
まず2013年9月30日完成以来3年がたつが、妹島和世氏が設計した集合住宅(全10戸)ということでいまだに注目されている「西野山ハウス」。京都市のちょっと北にある高級住宅地の大宮西野山にある。
上空から見ると蛇行するような一枚屋根が異様に映るが、実際に住んでいる住人(といってもほとんどは別荘として居住)によれば自然との共生、住人同士のコミュニケーションを考えると理想的な住まいだという。
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自然や他の住人との
共生がテーマ。
オリーブの木が
につかわしい。 |
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世界的なガラス工芸作家
の三嶋りつ恵さんの自宅 |
世界的なガラス工芸作家三嶋りつ恵さんがちょうど在宅で話を聞く。
京都(この西野山ハウスからほど近い)とヴェニスに家があるが、「なんか面白い家に住んでみたいと思っていたら、妹島さんが集合住宅を京都に作ると聞いてどうしても住んでみたくなって」と三嶋さんはここでの暮らしに満足そう。ただし「収納スペースが少ないのが難」だそうだ。
昼食は東山区五軒町の7月オープンしたばかりの「丹 tan」で。割烹老舗の和久傳の新業態だ。
(※右の背景写:真和久傳の新業態の食堂「丹tan」)⇒
和久傳はもともとは丹後の料理旅館。その「丹」が店名の由来だという。簡単に言って和久傳版の食堂である。朝は8時から営業している。もちろん昼も夜も。
和久傳だから朝食も2000円はするが、ちゃんと季節の食材を取り入れてその値段なら高くはないと思うが。驚いたことに1階には扉がない。誰でも入れる気軽さを狙っているのか。
2階には大きなテーブルがドーンとおいてあって見知らぬ者同士が隣り合わせで食事をするカジュアルさをコンセプトにしている。この2階から見える白川と柳が絶景なのである。
この新業態の発案者は若女将の桑村祐子さん。「このあたりの地域に元気がない。夜はすぐに電気が消えるし何とかならないかと言われてこの店を始めました」。
扉がないのは夏はいいが、冬はどうするのだろうか。若女将は自ら無農薬で育てた米から作った日本酒をふるまってくれた。フルーティで旨かった。それにしてもエネルギッシュな若女将である。
空き家になっていた隣接する2軒の町屋を連結・改造して住んでいるアート・プロデューサー&キュレーターの女性が左京区新間之町にいるという。
例の知人の知り合いである家主の徳田佳世(とくだかよ)さんは京女ではなく岡山の出身だという。
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町屋住まいをする京都造形芸術大学キュレトリアル・ディレクターの徳田佳世さん
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岡山で創業したベネッセホールディングスの社員として直島および豊島(てしま)のアート化を進めてきた。大体メドが立ったところで退社して、WATER AND ART(なるほど彼女の会社にぴったりな名前だ。ベネッセ顧問は今でもやっている)という会社を設立し京都へ移住。現在は京都造形芸術大学のキュレトレアル・ディレクター。
さらに京都の町屋に住みたいという長年の望みを果たす。つながっている2軒の町屋を大改造して完成したニュー町屋で快適な日々をおくっている。
住まいは、生活の大前提という考えはわからないでもないが、前出の川島りつ恵さんといい、ここまで拘るものなのか。
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町屋の中のインテリアは西沢立衛(りゅうえ)のデザイン
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インテリアは前出の妹島和世氏と建築ユニットSANAA(サナ)を運営している西沢立衛(にしざわりゅうえ)氏。
ただし「デザイン性が際立ちすぎて、階段から転げ落ちたりする(笑)」と徳田さんは腕の痣を見せてくれた。美しく暮らすのも命がけなのである。
(次号に続く)
(2016.10.27「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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