(前号から続く)例の知人がチャーターしてくれたハイヤーのドライバーがポケモンGOフリークで、なんとレベル26だった。
聞きもしないのに、いろいろとその関連情報を話してくれる。例えば京都に本社をおくポケモンの生みの親である任天堂の本社およびその界隈にはキャラクターが全く出ないそうである。
あるいは、最近山科カントリークラブで行われたプロゴルフトーナメントで予選落ちした某男子プロゴルファーがポケモンGO狂いで、前日乗ったハイヤーのこのドライバーのことが気になって、次の次の日の乗車予約をしていたらしい。次の日はゴルフどころではなかったらしく散々な結果に終わった。
次の次の日、このプロゴルファーは早朝から、ドライバーの案内で、お香を焚いて(キャラクターが出やすくなるらしい)京都のお寺や名所を走り回ったという。その戦果に大満足し、プロゴルファーはドライバーに法外なチップを渡したという。
さらにこの話をドライバー氏がハイヤー会社の上司にしたところ、「早急に企画書を書け」ということになった。「ポケモンGOハイヤー」の出現は意外に早いかもしれない。
余談はそれぐらいにして、「アートフル京都」を代表するという「ホテル アンテルーム京都」を見学。前々から覗いてみたいと思っていたホテルだ。京都駅の南側(駅から徒歩15分の南区東九条)にある。
もともと代々木ゼミナールの学生寮だったが、学生激減でその一部をUDS(旧社名都市デザインシステム)に運営を依頼。これがアート感覚に満ちたホテル&アパートとしてオープンしたのが2011年4月。
さらに代々木ゼミナールは残っていた学生寮のすべてをUDSに運営依頼したことで今年7月にホテル客室67室が新たにオープンするなどアートホテルとして大幅にパワーアップした。
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ホテル アンテルーム京都の庭 |
今回の大リニューアルの最大の焦点はアーティストたちが作った宿泊できる8つのコンセプトルームだろう。
それぞれのアーティストのファンならこれは感動的な宿泊になるのだろうなと思う。そうでなくて泊まるハメになったら奇妙な夢を見そうな部屋たちである。(※右の背景画像:アンテルーム京都 ヤノベケンジの部屋)⇒
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アンテルーム京都
金氏徹平の部屋 |
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アンテルーム京都
蜷川実花の部屋 |
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アンテルーム京都
名和晃平の部屋 |
アートフル京都の総大将ということになるとこれは、名和晃平をおいてないだろう。名和自身は大阪府高槻市の生まれ(1975年~)だが、現在母校の京都造形大大学院准教授を務め、率いるデザイン集団サンドイッチは伏見に本拠を置いている。
どうでもいい下世話な話で恐縮だが、名和晃平は今年4月にアーティストでモデルの清川あさみ(1975年兵庫県生まれ)と結婚した。
清川あさみはデザイン集団nendoを率いる佐藤オオキ(1977年~)と結婚していたが、2012年に離婚。佐藤オオキといえば今、東京のデザイン界で飛ぶ鳥を落とす勢いのインダストリアル・デザイナーである。
下世話だが、佐藤から名和にパートナーを替えた清川あさみという女性にたいへん興味があり、インタビューしたいと思っている。
閑話休題。御厚意で、サンドイッチのアトリエが見学できるというので、伏見まで車を飛ばす。
アトリエは宇治川沿いに建つプレハブである。もともとサンドイッチを作っていた工場があったので、名和は自分が率いるデザイン集団をサンドイッチと名付けたのだそうだ。
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サンドイッチのアトリエ伏見にあり宇治川沿いのプレハブ
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外観からして梁山泊といっていい。まだ大家というわけではない名和の本拠らしい。中に入ると名和のトレードマークである「斜線ウォール」がいたるところにあって、「部屋酔い」状態になる。
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サンドイッチのアトリエ内部。
斜め本棚が名和晃平らしい。 |
様々なデザイン活動を進める名和がそのとき最も注力していたのは、広島県福山市にある神勝寺の「禅と庭のミュージアム」だった。
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サンドイッチのアトリエにて。
名和のトレードマークである
鹿の模型。
計算されつくした
ビーズの配置なのが分かる。 |
9月11日にオープンすることになっていた。いにしえの禅画、墨蹟、禅庭、伽藍、茶室などに加えて、藤森照信や名和の現代建築・現代アートを併設し現代における新しい禅体験を提案するという壮大なプロジェクトだ。
もう一つ稽古に余念がなかったのは9月3、4日に京都のロームシアターで公演が行われたダンスパフォーマンス「VESSEL」。
ダミアン・ジャレが振り付けを行い、名和は舞台美術を担当。半裸のダンサーたちが過酷なリハーサルを行っており、ジャレと名和の姿もそこにあった。
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名和が舞台美術を担当したダンスパフォーマンス「VESSEL」
(9月3、4日に京都のロームシアター)
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かなりプリミティブでグロテスクなパフォーマンスだ。残念ながら東京での公演はないとのことだった。
こんなに名刹、名所、名店がひしめいている古都に、アートの要素をさらに加える必要があるのかという意見がある一方、これだけ美術・造形系の大学があって、現代アート専用の美術館がないのはおかしい、という意見もある。まあ、いろいろあった方が来訪者としては有り難い。
古い京都だけではなく、アートに満ちた新しい京都も悪くない。
(2016.11.7「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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