「windblue」 by MIDIBOX


8月もお盆を過ぎて、「金曜日の夕方に京都に来てくれたら、いろいろと御案内しますよ」と古くからの知人に誘われた。

「京都ぎらい」(井上章一著)という新書が売れているらしいが、リオ五輪も高校野球も振り切って、灼熱の京都に出掛けようというのだから、私は根っからの京都好きである。

 大阪・神戸の週末出張の帰りには途中下車して、京都の名刹、名所、名店を訪ね歩いてきた。その都度2,3カ所回る程度だが、いつも来てよかったと思う。

 もう少し時間に余裕ができたら、春、秋に1週間ほどウイークリーマンションでも借りてもっと丁寧に京都を歩いてみたいと思っているほどである。

 さて先ほどの知人との待ち合わせは、京都・寺町通。このアーケードにメガネショップチェーンのJINSが日本初のコンセプトショップを作るからついでに寄ってくれということらしい。

JINS寺町通店の内観

 寺町通りにできたばかりのホテルグレイスリーの1階部分で48坪の広さ。設計は中村竜治。青木淳(JINSを運営するジェイアイエヌ社の前橋本社を設計)の設計事務所にいて独立した新進気鋭の建築家だ。

 店の中に京都の町屋をイメージした部屋をコンクリートで作りメガネ展示スペースにしたり、検眼室&待合室を坪庭に見立てたり、なかなか凝った設計だ。

 メガネを置く白い台や検眼を待つ白い椅子が少しへこんでいて雪の上の足跡をイメージするなど詩情も漂う。さらにコンクリートにはTAKAIYAMAinc.の山野英之氏による京都をモチーフにしたイラストが白くペインティングされて変化をつけている。

 海外展開を本格化したいジェイアイエヌにとっては、日本発企業であることを打ち出すシンボル的な店舗なのだろう。

JINS寺町通店を設計した中村竜治と
「JINS」を展開するジェイアイエヌの田中仁・社長

 JINS寺町通店を取材した後、一服した。

 河原町三条の六曜社1階でハイボール(サントリーオールド750円、地下のバーで作っているのだろう)を飲むが、実に旨い。ハイボールやジントニックを飲んだ瞬間「旨い!」感じさせるバーは滅多にない。

(※右の背景画像:六曜社のハイボール(オールド)は750円。ハイボールやジントニックが旨いバーが少なくなった。)⇒

 京都の喫茶店文化、バー文化の奥深さを感じさせるに十分な一杯であった。聞けば、京都でもこういう名店がバタバタ閉店しているらしい。哀しいことである。

京都の老舗カフェ&バー
六曜社でいまだに
活躍するレジ

 この後、先ほどのJINS寺町通店オープニングパーティのアフターパーティが蹴上のヴィラ九条山という高台にある日仏文化交流会館的な場所で開かれた。

 このヴィラ九条山館内には、イヴ・サンローランの公私にわたるパートナーだったピエール・ベルジェが最近多額の寄付金をしたことで存続できたというプレートが壁に貼られていた。

 ドキュメンタリー映画「サンローラン」で観たが、ベルジェはサンローランと二人で集めた美術品をオークションにかけたら440億円になったというクダリがあった。そのうちの一部であろう。

 パーティには京都のセレブが多数登場。いかにも京都らしいと思ったのはプリ大谷光輪・門主の才色兼備の奥さんが来ていたこと。お坊さんの奥さんというのにパーティで初めて会った。

ヴィラ九条山のパーティで会った本願寺の
大谷光輪・門主の夫人である大谷沙織・新裏方

 パーティの後「もう一軒面白いバーに行きましょう」ということで烏丸御池のバー「酒陶 柳野」へ。

 最近の京都は烏丸通りから西の開発が進んでいるらしいが、住所は釜座町だ。

「酒陶 柳野」の入口

 鰻の寝床を思わせる店で町屋を改造しと思われるが、奥になかなか素敵な庭がある。

 酔っぱらった男女には危険な庭である。(次号に続く)

                

(2016.10.18「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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