「なんでも千(せん)」が私のモットーである。
ファッションショーも展示会も1000回観ないとダメ。落語も1000席聴かないと駄目。ワインも1000本飲まないとダメ。鰻丼も1000杯食べないと駄目。「何事も1000を経験しないで一丁前のことを語るな」というわけである。
さて今回は、ファッション業界も夏休みなので、生まれてから2000軒はラーメン店を踏破している小生が、東京のラーメンの最新トレンドを書いてみた。
なお、小生がスマホを替えた今年5月2日以降の実食ラーメンから注目度の高い9店を日付順にピックアップしている。店名の横は評価でA→B→C
の順。
1.BASSOドリルマン:A
2008年12月のオープンだが、今や東京を代表するつけ麺の有名店になった。ずーっと注目していたが、池袋駅から徒歩12分の住宅地にありわかりづらい場所ということで避けていた。
今年5月の連休にやっと訪問。麺は太くて旨い。接客も高水準でインテリアもオシャレだ。
変な店名だが、バッソはソバの逆さ読み、ドリルは鍛えるという意味らしい。店主は秋田県出身の日本人。しかし駅からは遠い。
2.しゃぶしゃぶ 山笑う :B
飲食ビジネスに注力するセレクトショップ・チェーンのベイクルーズ・グループが今年2月に北青山(トンカツまい泉の近く)にオープンしたしゃぶしゃぶ屋が「山笑う」。
リーズナブルなプライスのしゃぶしゃぶも及第点だが、シメにそのしゃぶしゃぶのスープで食べるラーメンは、下手なラーメン屋のそれより旨い。上品な牛スープにトッピングの高菜がまたあう。
3.麺屋 武一(たけいち):C
初台の新国立劇場には、オペラを観によく行くが、その帰りに時々行く近くのラーメン屋。2014年のオープンだが、焼き鳥&ラーメンのハイブリッド業態ですでにチェーン化している。
鳥スープのラーメンは難易度が高く、この店も出来不出来の差が大きい。今回は運悪く不出来の日。
4.赤坂麺処 友:A~B
2012年5月オープン。最近のラーメン業界の一大トレンドのアゴ(トビウオ)出汁を使った濃厚スープというが、アゴの旨みがどう生かされているのか、飲み過ぎのせいか把握できなかった。旨いことは旨かったが。
(※右の背景画像:赤坂麺処)⇒
5.ラーメン526(こじろう):S
並木橋の橋下にある。渋谷駅からも恵比寿駅からも代官山駅からも歩いて15分かかる。三田の「ラーメン二郎」に最も似ているラーメン(乳化しない高脂スープ)ではないかと思うが、店主に聞くと「三田二郎からは破門された」とのこと。
この526も武蔵小杉、鶴見、盛岡に店がある。言ってみれば、反・三田二郎勢力なのであろう。
この二郎風(写真)とは別に、釣り好きの店主が海釣りで釣った魚から出汁をとった海鮮ラーメンがあるがこれが異様に旨い。店主夫婦が趣味でやっているような異色店だがなぜか行列ができない。
6.らあめん渋英(しぶひで):B
経堂の「らあめん英(ひで)」(1994年オープン)からのれん分けした店。渋谷警察署の近くで明治通り沿いのある「渋谷三丁目らあめん」(通称渋三らあめん)も同様。「東京のとんこつラーメン」を標榜している。
九州の人間に言わせると「東京とんこつは臭くなくてその分コクがない」そうだが、西麻布の名店「赤のれん」も含め、私に言わせれば、「十分臭いし、コクもある」。とんこつラーメンはあまり食べないが、1年に1回ほど無性に食べたくなる時がある。
7.焼きあご塩ラーメン たかはし:S~A
昨年2月に西武新宿駅前にオープンした13席の深夜営業(11時から翌朝5時)の店だが、深夜でも行列ができていることがある。前述したが、あご出汁は最近のメガトレンドだ。
1998年新宿にオープンした麺屋武蔵が秋刀魚出汁でラーメン界に巻き起こした新風の再現がなるか注目される。実食すると最初はアッサリ感じるが飲み進むと深い味わいが口いっぱいに広がる。平打ちの麺、チャーシューともに高レベル。
8.原宿 九州じゃんがらラーメン/ こぼんしゃんラーメン :A
場所柄、ファッション業界関係者が多い店で、私もよく行くが、「こぼんしゃんラーメン」というのがあるというのを最近知った。
「熊本系トンコツこんがりマー油スープ」と説明されている。これが実に旨い。マー油(焦がしニンニク胡麻油)と唐辛子が絶妙なハーモニーのスープだ。
このこぼんしゃんが旨いので、今後博多系の「じゃんがら」や「ぼんしゃん」は注文しなくなるのではないだろうか。
9.六本木 麺屋武蔵 虎嘯(こしょう):A~B
私のオフィスは六本木にあるが、この地区の最近の話題を2つ紹介する。
ひとつは「麺劇場 玄瑛 六本木店」という気取ったラーメン屋が昨年4丁目にオープンしたこと。私が5口、6分で完食した「XO醤薫イベリコ豚の玄瑛流」は920円。替え玉は210円だった。
もうひとつの話題は4年ほど前に話題になってあっという間に閉店した「楽観」というラーメン屋が「楽観 NISHIAZABU GOLD」という店名でかなりグレードアップして復活したことだ。近いうちに行ってみようと思っている。
さて、私が六本木でラーメンを食べたくなったとき、よく行くのは「麺屋武蔵 虎嘯(こしょう)」という店だ。
最近久しぶりで入ったら、麺に胡椒が練りこまれていて、小さな豚の角煮が添えられていた。一番安いものでも900円するようになっていた。胡椒練りこみと豚角煮は値上げするための言い訳だったようだ。
いよいよラーメンも1杯1000円時代の到来である。アベノミクスは、ことラーメンに限っては大成功している。
(2016.8.26「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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