ファッションの世界では、秋冬ものが立ち上がる8月、9月には様々なプロモーションが行われる。
消費者の消費意欲を刺激するために最近急増しているのが、「コラボ」と呼ばれる複数ブランドによる協同商品の打ち出しだ。
例えばファッションブランドAとセレクトショップBのコラボ。AはBでしか売られることのない商品企画を提案する。
するとそれにつられて今までBに行ったことのない消費者もAを買うためにBを訪れる。
一方AはBに選ばれ、お墨付きをもらうことでそのプレステージをあげることができるし、ついでにコラボ料というボーナスも手に入れることができる。コラボは双方にとって損のないプロジェクトなのである。
コラボ商品が店頭で売られるだけでなく、コラボ自体が大々的に広告・宣伝されて、まるでそれぞれのブランドがリニューアルしたような印象すら与える。そんな「刷新効果」もある。
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「ユニクロ」と「ルメール」の今秋のコラボ「ユニクロアンドルメール」
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コラボがファッションの世界で本格化したのは、そんな昔の話ではない。
2004年にファストファッションブランドの「H&M」が「シャネル」「フェンディ」のデザイナーとしてモードマスターの異名を持つカール・ラガーフェルドと初のコラボを行ったのがその始まりといえる。
従来からファストファッションについては、ミラノコレクションやパリコレクションのファッションショーでラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドが発表するコレクションからトレンドを抽出して、それをいち早く価格の安い自らのブランドの商品にしてしまっているという指摘がなされていた。
しかし、まさにそのデザイナーとコラボをするということは、ある意味で自らの「潔白」を証明したことにもなる。
このファストファッションとデザイナーのコラボは話題になると同時にそうした「浄化作用」もあったと言うことができる。
この「H&M」と「カール・ラガーフェルド」のコラボを契機にして、ファッション業界では実に様々なコラボが試みられるようになった。
お菓子のブランドEとファッションブランドBのコラボ、ブランドGとゆるキャラHのコラボなど、その範囲も広がっており、もう新しいデザインや企画は出尽くしてしまったのではないかと思うほど、各ブランドの企画スタッフはこのコラボ企画に頼り切っている印象さえうける。
すでにこの2つがコラボして何のメリットがあるのか、ただのサプライズではないのかと首をかしげさせられるコラボも数多く登場している。
極め付けは「ジバンシィ」の今秋冬の広告ビジュアルであろう。そのキャラクターに起用されたのはなんとドナテラ・ヴェルサーチだった。
(※右の背景写真:「ジバンシィ」今秋の広告ビジュアルに登場したドナテラ・ヴェルサーチ)⇒
ドナテラは彼女の兄のジャンニ・ヴェルサーチが生み出した「ヴェルサーチ」ブランドの現在のデザイナーである。
このポスターを見た瞬間、「ジバンシィ」のブランドロゴがミスプリントに見える。しかし、とても悪ふざけではない。
本来はライバルである2つのブランドがコラボしなければならないほど、現在のファッション不況は深刻だということだろうか。
(2015.9.28「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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