「味覚の秋」とか「食欲の秋」と言われるが、「B級グルメの帝王」とか「WWDジャパンのラーメン番長」と陰口をたたかれている私も、御相伴にあずかって、A級グルメの仲間入りするのがこの季節と言えるだろうか。
デザイナーだろうがアーティストだろうが、アスリートだろうが大切なのは「発想力」「知性」「テクニック」だと思う。
スーパーな料理の値段の大半は、シェフの発想力と知性とテクニックに支払われているのであり、材料費はごくわずかなのである。
この3つを感じさせるような3皿に最近出会ったので紹介する。
1.長良川郡上鮎のグラッセとスクランブルエッグ ピストゥ風(有楽町 アピシウス/シェフ:岩本学)
鮎はシンプルに炭火で塩焼きが一番だと思っている方は考えを改めてもよいかも。
私も見た瞬間、鮎を甘く煮てバジル風味のスクランブルエッグの上にのせるなんて、なんとバカなことするのかと思ったが、これが食べてみると、ああフランス料理ってやはり素晴らしい、ということになる。
美人は浴衣を着ても、シンプルなサックドレスを着ても美しいのだ。
2.生ハムと信州水ナス(銀座 ファームゲンテン/シェフ:新藤昇巧)
生ハムに何を合わせるかで、料理人のセンスがわかるものだ。
エコなスタイルにこだわって信州産の野菜や肉を多く使う「ファームゲンテン」。
なんと信州産の「生」の水ナスを合わせてきた。
これはクリーンヒットだ。
3.鰻とフォアグラのテリーヌ仕立て(六本木 アジュール45/シェフ:宮崎慎太郎)
この組み合わせはまず凡庸なシェフでは思い付かない。
重いものには軽いもの、軽いものには重いものを合わせてバランスをとろうとするのが日本人の常だが、重と重をかけ合わせてさらに濃厚な世界を目指す試みはフランス・キュイジーヌの本質のひとつかも。
なお、この料理が出た食事会は6種類のローラン・ペリエのシャンパンを料理に合わせるというもの。
このテリーヌにはローラン・ペリエ ブリュットL-Pが添えられた。
(※右の背景写真)⇒
樽成熟を一切しないローラン・ペリエは食中シャンパンとしては申し分なかった。
(2015.9.21「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
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