「windblue」 by MIDIBOX


今年のウィメンズ・ファッションの最大のヒットアイテムがガウチョパンツ(gaucho pants)である。

 今春にヒットしたが、今秋も勢いは止まらないようだ。七分丈のワイドパンツだ。 (※右の背景写真)⇒

ガウチョパンツ/GUの2015春夏展示会(※左の3枚がガウチョ)

 ガウチョとは南米の草原地帯(パンパス)の牧畜に従事しているカウボーイのことで、彼等がはいているパンツということだが、ぱっと見ではスカートに見えてエレガントだし、ウエストをマークして、美脚やヒップラインをアピールできるし、足首の強調もできる。

 カジュアルで着心地は楽なのにデザインによってはエレガントに着こなせるというなかなかの秀れ者アイテムなのである。

 例えば足元でも、スニーカーにも合わせられるしパンプスもOKという万能ぶり。

 ファッションの世界ではヒットした後にもその理由が判然としないヒット商品が少なくないが、大ヒットの理由がこのガウチョパンツにはいくらでも後付けができる。

ガウチョパンツ

 ワイドパンツは数年前からスタイルの良いオシャレ・ウーマンの間ではひそかに人気だったのだが、「小柄で足の短い日本人にワイドパンツは似合わない」という「迷信」が日本のファッション業界人の間では未だに信じられており、これが「ワイドパンツ」で勝負に出るというブランドがなかなか出なかった理由のようだ。

 しかし、そういう「迷信」はすでに20年ほど前の話で、最近のヤング・ジェネレーションの身長の伸びは著しく、またスタイルが飛躍的に良くなっているのは周知の通りである。

 ここに目をつけたブランドが「GU」である。今年4月から4ヶ月で150万枚を販売して、今秋冬でも引き続きヒットを狙っている。中心の小売価格は1490円である。

 「GU」は「ユニクロ」を手掛けるファーストリテイリングの連結子会社ジーユーが2006年にスタートしたブランドである。

GU

 「GU」の名前を一躍有名にしたのは2009年3月にジーンズ市場に殴り込みをかけた990円ジーンズの大ヒットである。昨年8月決算でジーユーはすでに年商1000億円を突破している。

 1兆円ブランドの「ユニクロ」はベーシックアイテムが主力でターゲットはノンエイジなのに対して、「GU」の主要ターゲットはヤング(18才〜28才)でファッションコンシャスな商品のラインナップを強化している。

 また「GU」の小売価格は「ユニクロ」の約半分だ。今回のガウチョパンツももちろん20代女性を狙っていたが、これが30代、40代の女性にも広がっていったのが大ヒットの背景にあると見られている。

 特にキャリアウーマンが通勤着として、ストライプ、黒、ネイビーなどのガウチョパンツをTシャツにジャケットと合わせ、足元はパンプスというコーディネイトが人気になっている。

ガウチョ・コーディネイト

 注目したいのは、パリやミラノなどの海外のファッションウィークに登場しているトレンドを追いかけるのではなく、独自提案で「GU」がこのガウチョパンツに勝負したことだ。

 また「ガウチョ」のネーミングも当たった。今年4月の販売開始当初から、TVCFで香椎由宇(かしいゆう、28歳)、波留(はる、24歳)、山本美月(やまもとみつき、24歳)の3人のタレントが「ガウチョ」を連呼して「ジーユー」の「ガウチョパンツ」の刷り込みに成功した。

 最近のファッションマーケットではなかなか大ヒットが出ないのだが、今春ファッション市場に登場したガウチョパンツの久方ぶりの大ヒットにウィメンズウェア市場は沸いている。

                

(2015.9.10「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

PAGE TOP


banner Copyright(C) Miura Akira&Habane. All Rights Reserved.