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新国立劇場でヴェルディのオペラ「運命の力」を観た(4月5日)。

 ヴェルディには中期3大傑作(「リゴレット」「イル・トロヴァトーレ」「椿姫」)と後期3大傑作(「アイーダ」「オテロ」「ファルスタッフ」)に挟まれた5つのオペラがあるが、その中では「ドン・カルロ」が抜きん出た傑作で、この「運命の力」は序曲ばかりが有名で、その割にあまり上演されない傑作だ。

ケテワン・ケモクリーゼ

2011年
「マチェラータ音楽祭」より

 4幕物で上演時間は3時間近い長尺。いわゆる仇討ちもので、しかも結末は返り討ちという締まらない話。

 例えば、仇討ちの本筋とはあまり関係のない第2幕第1場とか、第3幕第2場をカットすれば2時間の丁度良い長さのオペラになるじゃないかという意見もあろう。

 が、どうもこの時期のヴェルディは歴史や社会を描くことに興味があったようである。

 日本にも中里介山の大長編「大菩薩峠」という仇討ち小説があるが、これも机竜之介と宇津木兵馬の果たし合いよりは、道中の人間模様の方に見応えがあるのと同じである。

 ヴェルディもサンクトペテルブルグの初演の際、「ジプシー女占師のプレツィオジッラの役は重要だから良い歌手を準備するように」と劇場側に念を押したという。

 プレツィオジッラは2つの場面にしか登場しないのに、戦意高揚というか行進曲調のアリアを2つも歌う。

 実は、今回の上演も、レオノーラ(イアーノ・タマー)もアルヴァーロ(ゾラン・トドロヴィッチ)もカルロ(マルコ・ディ・フェリーチェ)もそれぞれの及第点の歌唱だったが、カーテンコールで一番拍手喝采だったのは、予想通りプレツィオジッラ役のケテワン・ケモクリーゼであった。

「運命の力」 撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

 昨年の1月に同劇場で「カルメン」の主役を歌ったケテワン嬢だが、歌唱はまずまずだったが、その美貌と抜群のスタイルと艶っぽい演技が大評判だった。

 今回のプレツィオジッラもその時とほぼ同じ演技。とにかくテーブルやらベッドにやたら飛び乗って、地声混じりの少々品の良くない歌を2曲も披露。大喝采だった。

 グルジア出身のケテワン嬢だが、今回レオノーラ役のイアーノ・タマーもグルジア出身だ。

イアーノ・タマ―

2009年「トスカ」より

 オペラ歌手以外でもクラシックの世界では、グルジア出身の美人ピアニストのカティア・ブニアティシヴィリや美人ヴァイオリニストのリサ・バティアシュヴィリの人気が急上昇。グルジアは美人音楽家の大宝庫の様相を呈している。

 とにかく新国立劇場はケテワン嬢を1年に1度は呼んでいただきたいものである。鼻の下を伸ばしたオジサンたちが大集合必至だ。

                

(2015.4.22「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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