「windblue」 by MIDIBOX


コム デ ギャルソン社の南青山本社で今秋冬物の展示会を取材。

 パリコレの「コム デ ギャルソン」と「ジュンヤ ワタナベ」のハイビジョン映像を流しっ放しにしている部屋があって、2ブランドのショーも観た。

「コム デ ギャルソン」
2015-16年秋冬コレクション

Photo by Giovanni Giannoni
(c) Fairchild Fashion Media

← 死装束(しにしょうぞく)に思える。

 「ジュンヤ ワタナベ」は蜂の子プリーツを使った素晴らしいコレクションだ。

 宮前義之がデザインする「イッセイ ミヤケ」でもスチームストレッチプリーツを用いたコレクションが好評だが、「ジュンヤ」の方はなんというかヨーロッパの中世のムードが漂い、ベラスケスの絵画を想起させる。

 音楽はバッハのピアノ曲とオルガン曲だったが、自分の作品によほど自信がなければ、バッハをファッションショーで流したりしないだろう。

「コム デ ギャルソン」
2015-16年秋冬コレクション

Photo by Giovanni Giannoni
(c) Fairchild Fashion Media

← まるでハラワタのようである。

 一方「コム デ ギャルソン」は、「死」を描いたコレクションであろう。

 ハラワタをムキ出しにした怒りのコレクションにも驚いたが、今回はデザイナー川久保玲の「遺言」だとも捉えられかねない世界である。

 ギャルソン社のプレスに聞くとテーマは「別れ」だそうだ。

 音楽はフレデリック・サンチェスがリミックスしたマックス・リヒターの曲。よく日本の葬式にかかっているようなちょっと安手の音楽である。

 ここは是非マーラーの最後の交響曲第9番の第4楽章のアダージョを使って欲しかった。

「コム デ ギャルソン」
2015-16年秋冬コレクション

Photo by Giovanni Giannoni
(c) Fairchild Fashion Media

← 棺桶を思わせるコスチューム。

 ショー会場からは、すすり泣きの声が聞こえたという。もうすでにファッションショーの領域を超えてしまった、川久保玲の「私小説」の世界である。

 自分の心象風景をこんなにストレートに描いたデザイナーを私は知らない。

 余談だが、川久保玲は3月26日の「ミュウミュウ」青山店のオープニングレセプションに元気な姿を見せて、ミウッチャ・プラダと談笑していた。御安心下さい。

 川久保玲の「私小説」ファッションショー、次は何がでるのでしょうか。

                

(2015.4.15「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)

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