指揮者のロリン・マゼールが7月13日に死去した。享年84。
ウィーン国立歌劇場、クリーブランド管弦楽団、ニューヨーク・フィルなどの音楽監督を歴任しており、現代を代表する巨匠、大指揮者と言っていい人物なのだが、いろいろと問題があってどうも素直には「巨匠」の称号は与えたくない存在なのだ。
ただし、その音楽性と暗譜力、指揮テクニックは指揮界のナンバーワンであることに異論のある向きはいないだろう。
一流指揮者が集まって雑談した時に「ベートーヴェンの交響曲のスコアを一音たりとも間違わずに再現して書ける人物がいるとすれば、それはマゼールだろう」という結論になったという。
そんな凄まじい音楽家で、かつオペラ「1984年」(ジョージ・オーウェル原作)を始めとした作品もある作曲家で、ヴァイオリニストとしても独奏CDがあるほどの腕前だった。まあ、掛け値なしの天才である。
では、なぜ「巨匠」ではないのかと言うと、まずギャラ交渉を始めとして「金にキタナイ」。
またカラヤン死去後(1989年)のベルリン・フィルの音楽監督に選出確実と言われたのに選にもれたのに激怒して「今後ベルリン・フィルに出演しない」と宣言するなど「地位や名誉への異常なコダワリ」。
やはり「巨匠」は金にキレイで地位や名誉には淡泊であって欲しいもの。
さて、こんなにクサすなら追悼記事など書かなければいいと思われようが、私のたった一度のマゼール体験が凄まじかったから書いてみたのだ。
それは1988年のミラノスカラ座の日本公演。曲目はプッチーニ作曲のオペラ「トゥーランドット」である。
マゼールの指揮、フランコ・ゼッフィレッリの演出には度胆を抜かれたからである。
舞台は豪華絢爛、そしてマゼールの指揮のスカラ座オーケストラが本当に素晴らしかった。私がオペラに開眼してしまった公演だった。
ただし演奏以外で忘れられないのは、その夜、私の席の近くに曲に合わせてハミングする男がいたこと。
この「トゥーランドット」というオペラは中東が舞台で日本を含めアジアっぽい旋律がかなり出てくるのだが、その中に「夕焼け小焼け」にそっくりの旋律があって、これが出てくるたびにこの男はハミングするのであった。
なかなかいい声ではあるがオペラ鑑賞にあるまじき行為。注意してやろうと思ったが、これがなんと谷村新司であった。
もちろん注意はしなかった。
よく見るとロリン・マゼールと谷村新司、顔がちょっと似ているのであった。
(2014.7.28「岸波通信」配信 by
葉羽&三浦彰)
禁煙で一番厄介なのは太ることである。これ以上太っては逆に心臓に負担が かかる。食事制限をしないといけない。
禁煙でもっともキツイのは麻雀で不調の時である。とくに囲んでいる奴に喫煙者がいるときはキツイ。
麻雀をやらないのが一番だが、そういうわけにはいかず、我慢していると、煙草を吸う代わりに対局者の牌をよく見るようになり勝率があがった。
禁煙で次にきついのは作稿時に行き詰ったときである。が、喫煙すると文章が浮かんでくるなんて言うのは駆け出し者で、いい歳をしたオヤジがそんなことで名文が書けるなんてことは、断言するが、ない。
禁煙で困るのは飲酒時の手持無沙汰だ。そのため酒量が増えるが、体重増加のかなりの原因になる。荒療治だが酒もついでにやめてしまえばいいのだが、これはどうかな。
禁煙してわかったが、煙草が本当に旨いとすれば、朝の起きがけの一服と食後の一服、計4服だけであるが、これも疑わしい。
そもそもこうやって自戒を込めて禁煙のすすめを書いているのすら煩わしくなってきた。
タールで真っ黒になった肺と坂本龍一の写真をピンナップするだけで十分ではないか。 なあ、葉羽くん。
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(2014.8.8「岸波通信」配信 by 葉羽&三浦彰)
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