HOT HOUSE 1
こんにちは。「ロマンサイエンスの夢先案内人」岸波です。
貴方をまたも“the roman science of the cosmos”の世界へご案内します。
大きなのっぽの古時計 おじいさんの時計
百年いつも動いていた 御自慢の時計さ
おじいさんのうまれた朝に 買ってきた時計さ
今はもう動かない その時計・・
僕が小さい頃、近所の大きな農家に遊びに行くと、たいていそこには「大きな柱時計」があったものでした。
当時貧しかった我が家には、とてもそんな大きな時計をかける場所もなく、またお金もなく、とてもうらやましかったことを覚えています。
柱時計は必ず柱に掛けてあるもの。柱がなくては掛けられません。
でも、当時は幸いにして、柱のない家はありませんでした (爆!)
今回のanother world.は「時」と「地球の終末」に関する話を前・後編でお届けします。
1 狂った星座~「時」に関する大事件
「狂った星座」という小説は、SFの巨匠フレドリック・ブラウンの名作短編。
星座を観測していた世界中の天文台が、ある日、星座が形を変え始めたことを報告しました!
星座といっても、実際は、地球から同じ方向に見えているいくつもの星の集合体。
それが動き始めるということは、光速を超えるくらいの猛スピードで移動しているということ ・・・そんな有り得ないことが起こったのです。
さて、その結末は??
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宇宙を僕の手の上に
(フレドリック・ブラウン)
←「狂った星座」を所収。 |
さて、こちらは現実の世界。
1930年代、ヨーロッパのいくつもの天文台に置かれた時計が一斉に狂い始めたことがありました。
それまで「時間」というものは、天文台が星と地球の角度を測定して時刻を決定していましたので、もしも星の角度と時計の刻む「時」に狂いが生じれば、時計の時刻の方を修正していました。
しかし、その事件のあった頃、各国の天文台に導入され始めていたのは、極めて正確に時を刻む新技術の「水晶時計」でした。
(←水晶に電極を取り付けて電圧を加えると分子振動が生じ、この振動が正確に一定間隔を刻むことが発見され、“水晶時計”が作られました。現在の小型化された水晶クォーツ時計の前身。)
水晶時計の正確さについては、誰もが絶対の信頼を置いていましたので、これはひょっとすると、地球の自転の方が狂っているのではないかと疑問が持たれました。
さて、よく調べてみると、果たして事実はそのとおりだったのです!
2 自転は何故狂ったのか?
地球の自転が狂った原因については、諸説あって結論が出ませんでしたが、ちょうどその頃、4億年前のデボン紀の地層から古珊瑚の化石が発見されるニュースがありました。
その古珊瑚の表面には、「年周期」を示す大きな皺と「日周期」を示す小さな皺が刻まれていました。
さらに詳細に調査をすると、何と、年周期を示す大きな皺の間には小さな皺が400本以上もあることが突き止められたのです。
すると、こう結論付けざるを得ませんでした・・・4億年前の遥か昔、地球の一年は365日よりも長かったと。
すなわち、地球が太陽の周りを一周する間に400回ほど自転していたということになりますので、「地球は今よりも早く回転していた」ということになります。
地球の自転は、大昔から少しづつ変化していたのです。
現在では、月からの重力摂動を受けて、地球の自転が次第に遅くなっていることは天文学の常識となっています。
(←最大で1日、1/1000秒遅れます。)
地球と月の起源については、太陽系が形成された今から46億年前、原始地球にもう一つの巨大惑星が衝突し、地球が二つに分断され、その一方が月となったという“巨大衝突説(ジャイアント・インパクト説)”が有力になりつつあります。
その頃の月は、現在よりも遥かに地球に近い軌道を廻っており、地球の1日は「5時間程度」だったことまで分かって来ました。
人類は長い間、地球の自転によって「時」を測って来ました。
でも、水晶時計の登場によって、それまで認識していた「時間」というものが不確かであったことを知ったのです。
さらに現在では、その水晶時計よりもさらに正確に時を刻む時計が作られています。・・セシウム原子時計です。
真空の中でセシウムの原子を加熱してビーム状に飛ばし、これにマイクロ波を照射すると、9,192,631,770プラスマイナス20ヘルツのところで独特の吸収現象が起きます。
この振動数を回路を通じて1秒に移し変えたセシウム原子時計は、3万年に1秒しか狂うことがないのです。
こうして人類は、さらに正確な「時」を手に入れたのです。
3 絶対の存在「時(クロノス)」の敗北
ギリシャ神話では、この世の始まりはカオス(混沌)であったとされ、やがて最初の女神ガイア(大地)が誕生します。
女神ガイアは、やがて眠りながら後に夫となる天空の神ウラノスを生み、二人は地上に山々や木々や花々、鳥や獣を、天空には星々を生み出し、ウラノスが降らせた雨は海や湖を創造しました。
そして、二人の間には、巨神族(タイタン神族)、一つ目巨人族、そして百の手と五十の頭を持つ百腕巨人族が次々に生まれますが、ウラノスはこの醜い子供たちを嫌って冥界に閉じ込めてしまうのです。
母ガイアは、これを怒り、子供たちに父ウラノスを倒すように言いますが、子供たちは父の力を恐れて手を出そうとはしませんでした。
ただ一人、母の呼びかけに応えたのが、巨神族の末っ子であったクロノス(時の神)でした。
クロノスはウラノスを倒し、神々の王となりますが、今度はクロノス自身が妻レアとの間に生まれた子供たちに自分の地位が奪われるのではないかと恐れ、子供が生まれるとすぐに呑み込んでしまいました。
・ ・・やはり彼も父と同じことを繰り返したのです。
そのクロノスの仕打ちに怒ったのは、やはりその妻レアで、今度はクロノスの6番目の子であったゼウスが、クロノスを倒し、最高神となります。
(←”歴史は繰り返す”というやつでしょうか。)
このようにして、神話の中では「全てを呑み込んで無に帰す究極の力」を持った「時(クロノス)」でさえ、実は“絶対の存在”でなかったことが証明されたのです。
4 再び揺らぎ始める「時」
一方、原子時計によって“正確な時”を手に入れたと考えた人類にも、意義を唱える人物が現れます・・・アインシュタインです。
アインシュタインの相対性理論では、時間さえも相対的な存在であり、動いている人の時間は止まっている人の時間よりゆっくり進むとされています。
いわゆる“浦島効果”というもので、亜光速の宇宙船で隣の太陽系プロキシマ・ケンタウリまで往復して地球に帰ってくると、地球では何百年も経っていたという現象が起きるというのです。
そのことを実証しようと、1971年に、米国で飛行機に原子時計を4個積み込んで、地球を一周させ、地上の原子時計と比較する実験が行われました。
果たして、飛行機に積んだ原子時計は、地上のものよりも大きく遅れ、アインシュタインの説が正しかったことが確認されます。
そう・・・ギリシャ神話と同じように「時(クロノス)」さえも絶対のものではなかったのです。
ともあれ、地球はこれからも長い時間をかけて回転を緩めていきます。
いったい、その先にはどのような運命が待ち受けているか?
答えは「後編」で・・・。
/// end of the “Episode6「地球の長い午後/前編」”
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《追伸》
時を制御する・・・これは究極の人類の夢の一つではないでしょうか?
中国の秦の始皇帝も「不老不死」に憧れたり、最近では「タイムマシンの作り方」という本がベストセラーになってみたり、時をコントロールしたいという人間の欲望は普遍の欲望のようです。
そしてどうやら、ブラックホールの「時空の境界線」を利用することで、理論的にはタイム・トラベルが実現できるのだそうです。
・・・でも、なんか納得がいかない。
有名な「親殺しのパラドックス」というのがあります。
これは、タイムマシンで過去に遡って自分自身の親を殺すことができるか、という命題です。
つまり、親を殺せば、自分自身は生まれて来ないはず。
そうすると、生まれてこない自分が親を殺せるのか・・・考えると頭が痛くなります。
そしてもう一つ。
アインシュタインによれば、二つの特異点どうしの移動速度というのは「相対的」なものだそう・・・そりゃそうですね。
例えば、地球から打ち出されたロケットがあるとしても、地球自体は太陽の周りを公転し、太陽は銀河を回り、その銀河自体、アンドロメダ銀河の方向に猛烈な勢いで突進している。
・・・もしかすると、遠ざかりつつあるロケットの方が、結果的には宇宙の「原点」に静止しているかもしれない。
つまり、片方が絶対的に止まっているということはあり得ず、空間の中で認識できるのは、二つのオブジェクトの位置関係がどのくらいの速さで遠ざかりつつあるか、ということだけなんですね。
と、いうことは・・・ 高速度で遠ざかるロケットの時計が遅れるというならば、ロケットから見れば、地球が高速度で遠ざかっている。
高速度で遠ざかる地球上の時計はどうして遅れないのか??
・・・あぁ、考えるとまた頭が痛くなる。
では、また次回のanother
world.で・・・See
you again !
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