The distance impression in outer space
こんにちは。「ロマンサイエンスの夢先案内人」岸波です。
貴方をまたも“the roman science of the cosmos”の世界へご案内します。
この通信は、メール・エッセイ版の時に「another
world.の話はさすがにちょっと難しいという感想をいただきました」 という書き出しでした。
そこで・・・ このepisode5 では、少し肩の力を抜いて小休止することにし、宇宙の理解を助けるための話~「宇宙における距離感を生活感覚で理解する」というテーマに挑むことにしたのです。
ところが!
この通信を配信した当時の読者は身内のお仲間ばっかりだったもんですから、もみぢ食堂とか、弁天山とか、かなりローカルな楽屋ネタで押し切っていたのです。
Web版のリメイクではどうしようか悩みましたが、やはり、こちらも力を抜いたまま、原文のままで押し切っちゃおうということにいたしました。
なので、全国の「岸波通信」読者の皆さんには、このエピソード、参考にならないのでゴメンなさい。
なお、後半は読者から要望のあった“流星”の話です。
1 ちょっと理解しがたい宇宙の距離感
宇宙についての話が夢物語だったのは、1969年7月、アポロ11号のアームストロング宇宙飛行士が「月面への一歩」を標した時までだった、と言われています。
1926年に、ガーンズバックが「サイエンス・フィクション(SF)」という言葉を発明して世に定着させましたが、アポロの月面着陸があった時、「これで世界中のSF作家はもう書くことが無くなった」と言う人も現れました。
今考えれば、それは何と不遜な言葉だったでしょう。
宇宙の時空間の巨大な広がりに比べれば、それは、人類にとってほんの取るに足らない前進でしたし、さらにその後、月面から採取された石の一部には60億年以上前のものも発見されるなど、月の謎は一層深まることになるのに・・・。
(←太陽系の生成は約46億年前です。60億年以上経過した月の岩石は、外宇宙からの隕石の破片をアポロが「たまたま拾った」と解釈されていますが、まだ真相は謎です。)
でも、地球外天体に人類が最初の足跡を標したこの画期的事件は、宇宙というものを身近な存在として捉えさせるのに確かに貢献したと言えるでしょう。
それにもかかわらず、宇宙は、未だ普通の人々には“ロマンの世界”で、スペース・シャトルの墜落事故や流星群の到来などマスコミで報道されるとき以外は現実感のない世界の話、というのが正直なところではないでしょうか。
その大きな理由の一つは、存在が大きすぎて距離や大きさが実感できないことにあると想います。
それじゃあ、ということで、岸波通信では、太陽系の大きさを生活感覚に置き換えて認識する試みをやってみましょう。
2 太陽までの距離を生活感覚で認識する
まずは手始めに、我々の住む地球を考えましょう。
地球の赤道の円周は、約4万キロメートルありますから、もしも赤道上にハイウェイがあったとして、皆さんは、自動車でそれを時速約100キロで走るとすれば、400時間で地球を一周することができます。
だいたい17日ですね。(走りづめですけど・・。)
これがジェット機ですと、時速約1000キロで飛行できますから、その1/10の40時間で一周できることになります。
昨年、土屋課長や本間ちゃんがブラジルに行きましたが、ブラジルはちょうど地球の裏側ですから、その半分の20時間くらい・・・だから約一日で行けたわけです。
では次に、アポロが到達した月ですが、地球からの距離は約38万キロメートルですから、地球一周(4万キロ)のざっと十倍と考えていいと想います。 つまり、ジェット機なら400時間(17日)、自動車なら170日(約半年)で到達できる距離です。
(←意外と近い? ・・・そんなことないか。)
さて、宇宙での距離を表すのに「天文単位」というものが使われますが、これは前にもご紹介したように「地球と太陽の平均距離」~約1億5千万キロを「1天文単位=1AU」と呼んでいます。
仮に、1AUを10メートルに置き換えて見ますと、縮尺150億分の1ですから、地球の直径(約1万2千キロ)は0.8ミリになります。
月の直径は地球の約1/3.5ですから、その大きさは0.2ミリちょっと。地球と月の距離は2.5センチというところです。
以下、細かい計算は省略しますけれど、10メートル先の太陽の直径は野球のボールくらいの大きさになります。
なので国際交流グループの部屋で考えれば、端っこの佐々木さんの机の上に野球のボール(太陽)があるとすれば、逆の端っこのryoukoちゃんの席のあたりに0.8ミリの地球があって、その2.5センチ先を0.2ミリくらいの月が廻っている、ということになるんです。
(←太陽まで結構遠いと思いませんか?)
ものはついでですから、内惑星の水星と金星についても触れておきますと、水星は太陽から4メートルの所で直径は0.3ミリ、金星は太陽から7メートル(地球から3メートル)の所で直径は地球と同じ0.8ミリの大きさです。
(←いずれにしても小さっ!)
3 太陽系からプロキシマ・ケンタウリへ
さて、次に、地球より遠い軌道を廻る外惑星を考えてみましょう。
“Mission to Ares”が向かっている赤い星「火星」は、地球から外側に5メートルの所で、直径は地球の約半分。もう一度、時速100キロの自動車の話で言えば89年かかる計算です。
つまり、貴方が二十歳で自動車免許を取って、火星へ向けて時速100キロで運転していくと、到着した頃には109歳になってしまうという事です。
次いで、太陽系最大の惑星「木星」は太陽から52メートルで直径が1センチ。
これも無理に例えますと、県庁東側の「もみじ食堂」のあたりで、ワンタンメンに浮かんでいるネギの小口切りの大きさが木星というワケです。
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木星
←(え~これがもみぢ食堂の
ワンタンメンのネギの小口切り!?)
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だんだんと非現実的な話になってきていますが、いっきに最果ての惑星、冥王星を考えてみます。
冥王星の位置は太陽から400メートル先で直径は0.1ミリ!
0.4キロ先というのは、弁天山の裾くらいの距離になりましょうか?
そこにある直径0.1ミリの塵が冥王星です。
時速百キロの自動車で冥王星に向かうと、えーと、到着まで何と5千5百年!
(←ちょっと自動車では無理がありそうです。)
太陽系は、実はこれで終わりではなく、冥王星の遥か外側3万AUから1光年(6万4千AU)以上の広い範囲にかけて、“オールトの雲”という彗星の巣が太陽系を球状に包んでいます。
オールトの雲というのは、1950年に、ジャン・オールトによって存在が計算された大質量の天体群で、おそらく1兆個を超えるだろうという長周期彗星が太陽を周回していて、その総質量は木星と同じかそれ以上と見積られています。
その果ての位置を先ほどの縮尺で表すと、太陽が佐々木係長の机の上のボールなら、静岡から京都あたりまでオールトの雲が広がっていることになります。
これが太陽系の勢力範囲です。
さて、いよいよ太陽系を飛び出しますが、太陽系に最も近い恒星系は、プロキシマ・ケンタウリ星系で、太陽から4.2光年(27万AU)の彼方に在りますから、約2千7百キロの位置~これはだいたい台湾辺りの場所になります。
(←もうとても自動車では無理です!)
・・・この広大な宇宙空間で、僕たち人間自身が到達した宇宙旅行の成果は、僅か2.5センチ先の「月」でしかないのです。
いったい何時になれば、スターウォーズの世界のように、銀河系を自由に飛び回ることができるのでしょうか?
そして、さらに銀河系のほかの宇宙へと・・・。
(←気が遠くなる・・。)
4 流星の話(読者のご要望)
流星の話・・・流星はどこから来るのでしょう?
前半の話で、オールトの雲について触れました。
オールトの雲は“彗星の巣”と呼ばれているように、主に氷でできた大小無数の(1兆個を超える)彗星が活動する領域です。
それらの彗星はケプラーの法則により、太陽を焦点とする楕円軌道を公転していますが、それらのうち数%は、超長楕円軌道で太陽の近くまで到来するものもあります。
こうした彗星が、太陽風や惑星の重力摂動の影響で小片を分離させ、地球などの惑星の引力に引き寄せられ、大気圏の摩擦で発光するのが流星群です。
これら氷流星の外にも、彗星が火星と木星の間を取り巻くアステロイド・ベルトを通過する際に、アステロイド・ベルトの小惑星の軌道を逸らせて、地上に飛来させる鉄隕石などもあります。
しかし、流星の多くは彗星自身の起源だと言われており、近年、流星と母彗星との関係の解明が進められています。
彗星はさらに、200年を超える軌道を持つ「長周期彗星」とそれ以下の軌道の「短周期彗星」とに分類されています。
(←長いものはなんと数百万年の周期!)
長周期彗星は、遥か1光年彼方のオールトの雲から飛来しますが、短周期彗星は、もう一つの彗星の巣であるエッジワース・カイパーベルトが起源です。
エッジワース・カイパーベルトというのは、木星から海王星の軌道を過ぎる辺りまで厚く分布している氷天体密集地帯のことで、1992年にハワイ大学のルーやジューイットによって初めて発見されました。
カイパーベルトの天体の軌道は、海王星等の軌道を横切っているため、惑星との相互作用によって妨害されることがあり、海王星に接近して、太陽系の外に送り出されたり、逆に太陽系内部に送り込まれたりします。
オールトの雲が球殻状に太陽系を取り囲んでいるのに対して、カイパーベルトは惑星公転平面上に円盤状に分布して、その外縁部は冥王星を遥かに超え、オールトの雲にまでつながっています。
こうした発見によって、冥王星が太陽系の果てであるとする概念は覆され、オールトの雲までを太陽系とみなす大きな概念の変更がなされました。
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ボイジャー1号
(2012年8月25日に太陽圏脱出。
星間空間の航行に入った。)
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「地球市民リーダーズセミナー」をリポートした通信その37“地球市民、二本松の夜に燃える!”では、僕とブイ・チ・トルン先生の「ふたご座流星群」の発見競争をお伝えしましたが、これから予想される流星群としては“こと座流星群”があります。
こと座流星群が最も良く観測できる「極大期」は4月22日で、夜10時頃から北東の空低く見え始め、明け方には天頂付近に観測できそうです。
実は、こと座流星群は、記録上に残っている最も古い流星群で、紀元前687年に中国で観測されました。
最近では、1980年、1982年、1991年に突発的な大出現が観測され、今年の4月は、久々に大出現が予想される「要注意年」とされています。
(←この流星群の母彗星は周期420年のサッチャー彗星です。)
全天を覆う漆黒の夜空に、あたかも象嵌(ぞうがん)細工さながらに煌めく色とりどりの無数の星。そして、そこから降り注ぐ光のシャワー・・・。
皆さん、4月の22日は火曜日ですが、この日は“お花見”をちょっとお休みにして、僕と一緒に流星でも見に行きませんか?
幹事は多分、馬場ちゃんがやります♪
(※・・・なーんてことを、書いてしまいましたが、実際には、イラク戦争やSARS発生なんかで、それどころではありませんでした。いやー、その頃、大変だったなぁ! 2003.10.7追記)
/// end of the “Episode5「宇宙の距離感」”
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《追伸》 2003.10.4
僕の好きなユーミンの歌に“ジャコビニ彗星の日”という曲があります。
ジャコビニ彗星の日/松任谷由実
夜のFMからニュースを流しながら
部屋の明かり消して窓辺に椅子を運ぶ
小さなオペラグラスじっと覗いたけど
月をすべる雲と柿の木ゆれてただけ
72年10月9日
あなたの電話が少ないことに慣れてく
わたしは一人ぼんやり待った
遠く横切る流星群・・ |
また、僕にとって忘れられない流星群は、1974年1月のコホーテク流星群。
僕がちょうど二十歳の頃、「今世紀最大」と言われる流星群を見ようと、友達と山に登りました。
実際は肉眼ではとても見えず、携えた望遠鏡で視野の端に捉えるのが精一杯でした。
でも、後日、有人宇宙船スカイラブの宇宙飛行士が、コホーテク彗星を宇宙船からスケッチした絵が新聞に紹介されたのです。
その時、自分も同じ星を見ていたんだという感慨が今も忘れられない大切な思い出になっています。
次にコホーテクが現れるのはあと8万年後・・・。
人類は、再びあの美しい星を目にすることができるのでしょうか?
では、また次回のanother
world.で・・・See
you again !
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be continued⇒ “Episode6 coming soon!
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