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Warming 4
こんにちは。「ロマンサイエンスの夢先案内人」、岸波です。
貴方をまたも“the roman science of the cosmos”の世界へご案内します。
1608年に、オランダのメガネ職人によって最初の天体望遠鏡が作られてから、天文学は飛躍的な発展を遂げることとなりました。
イタリアのガリレオ・ガリレイもこれを真似て望遠鏡を自作した一人で、彼はその望遠鏡で太陽を観測し、驚くべきことを発見します。
「何と! 太陽には“あばた”があるではないか・・・。」
そうです。これが西洋で初めて太陽黒点が発見された第一声でした。
ところが・・・。
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ガリレオが自作した望遠鏡
(南アメリカ大陸及び南極上空) |
ガリレオと同じ年に、3人の人物が太陽黒点を発見し、それぞれ自分が黒点の発見者だと主張しました。
イエズス会の聖職者シーナーも、そうした発見者の一人。
ところが、彼だけは大きな悩みを抱えてしまいました。
キリスト教の教義にのっとれば、神が創造した天空の太陽は完全無欠のもの。
決して、“あばた”などあってはならないものだったのです。
それほどまでに、当時の人々に衝撃を与えた太陽黒点の発見・・・その黒点こそが、現在の地球温暖化の原因だとしたら・・・?
ということで、今回のanother
world.は、“シリーズ地球温暖化”の完結編です。
1 消えた黒点
17世紀初頭にガリレオが黒点を発見した後、世界のあらゆるところで太陽黒点の観測が行われるようになりました。
ところが、それから間もなくして、予想もしないことが起こります。
あれほど世間の耳目を集めた黒点が、突然、姿を消してしまったのです!
1645年頃から、観測される黒点の数が減りはじめ、1650年から1710年にかけては黒点の観測記録が全くありません。
(黒点が減少したこの時期のことを“マウンダー極小期”といいます。)
一方、この頃の北米やヨーロッパは非常に寒冷な状態にあったことが知られていて、拡大したアルプスの氷河が谷筋の村を押し潰したり、テムズ川やオランダの運河が凍結するほどでした。
後年になって、このマウンダー極小期よりさらに過去の太陽活動の変動が推定されると、このような太陽黒点が減少した時期というのは何度か繰り返されていたことが明らかになりました。
(これらは、シュペラー極小期(1420~1530)、ウォルフ極小期(1280~1340)、オーアト極小期(1010~1050)と呼ばれます。)
うち、ウォルフ極小期の1315年には、冷害による飢饉のために150万人もの死者が出てアイスランドの人口が半分になったと記録されています。
太陽の黒点が減少する時期と地球の寒冷期の奇妙な符合・・・。
このことに気付いた科学者たちは、太陽黒点の活動が地球の気候に影響している可能性があるのではないかと考えるようになりました。
そこで、太陽黒点の正体をめぐる研究が進められることになったのです。
2 黒点の正体
黒点の観測が進められると、極小期のような極端な時期以外でも、黒点は常に増減を繰り返していることが分かりました。
1843年、ドイツのアマチュア天文学者シュワーべは、こうした黒点活動に周期性があるのではないかと考えました。
その結果、黒点数の増減は11年周期で生じ、さらにそれらが5つ集まった55年の大周期ごとに大きな変動をするというサイクルが突き止められたのです。
20世紀初頭に入りますと、ついに米国の天文学者エラリー・ヘールが黒点の正体を解明しました。
黒点を生じさせているのは太陽内部から噴き出した磁力線で、強力な磁力線の束が太陽表面を突き抜ける時に、そこだけプラズマの対流が妨げられて“大きな穴”が開いた状態になるのです。
この“見かけの穴”こそが太陽黒点で、プラズマが入り込めないために相対的に周囲よりも低温になり、暗く見えるのです。
(黒点部分の温度は、まわりの70%くらいしかありません。)
その大きさは、直径が数千キロから大きなものでは数万キロにもおよび、地球などはすっぽりと収まってしまうほどの巨大な穴なのです。
(地球の直径は、約1万3千キロです。)
また、黒点を形成するのは磁力線ですから、当然にN極とS極の磁力線が同時に発生します。
地球の場合は、ちょうど地軸の反対側付近がN極・S極ですが、太陽の場合には、この両極がごく近い場所にペアで出現するという奇妙な姿を見せます。
次の画像が、実際の姿です。
ペアで発生する太陽黒点 |
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【可視光画像】
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【磁気画像】
※白いのがN極、黒いのがS極。 |
このように、黒点が多く発生するということは、太陽内部の核融合反応が活発化した現れです。
とすると、「黒点数の増加→太陽活動の活発化→太陽が放射する光エネルギーの増大→地球が受ける光エネルギーの増加→地球の温暖化」という図式が浮かびます。
ところが・・・
このような“太陽の放射する光エネルギーが変化する”という考え方は、長らく「異端の説」として排除されて来たのです・・・。
3 太陽は変光するか?
天文学には「太陽定数」という言葉があります。
これは、“太陽が放射する光や熱の総量は常に一定である”とする考え方です。
(その値は、最近の測定によれば、1.37キロワット毎平方メートル(1.96カロリー毎平方センチメートル毎分)だそうです。)
この立場から言えば、“太陽の光エネルギーの増減による地球気候の変動”という仮説は荒唐無稽にしか写らなかったのです。
もちろん、「太陽定数」を正確に測定しようとする努力は19世紀から続けられて来ました。
いかんせん地上での測定では、大気の状態による誤差が大きく、その誤差の範囲では一定と見なすしかなかったのです。
つまり、観測技術の限界が「太陽定数」という神話を生んだのです。
しかし、人類は20世紀後半になって、ようやく「太陽定数」の実態を把握する手段を手に入れました。
そう・・・“人工衛星”です。
1978年に打ち上げられた人工衛星「ニンバス7号」は、10年以上にわたって太陽光の強さを観測しました。
また、太陽の観測を目的としたSMM衛星、地球の放射収支の観測を目的としたERBS衛星もこれと重なりあう時期に観測をしています。
これらのデータを総合した結果、確かに黒点が活発に活動する時には、太陽光が強くなっていることが明らかにされたのです。
(11年サイクルの太陽周期で、±0.1%程度だそうです。)
この観測以降、天文学では「●●年の太陽定数は▲▲であった」というふうに、変化を前提とする表現が使われるようになりました。
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紅蓮の太陽
←スカイラブが撮影した太陽画像。
右下は、超巨大プロミネンス。 |
ならば、この太陽定数の変化が地球の気候にどのような影響を与えているのかを具体的に見て見ましょう。
4 太陽定数と気候変動の相関
まずは、「地球温暖化論への挑戦」(著:薬師院仁志)に掲載されている太陽黒点数と平均海水面温の観測地の相関図です。
平均海面水温は、太陽活動の変動によく追随しているように見えます。
次に、太陽黒点数と北極寒気団の勢力指数の観測値です。
両者は強い相関関係を示しており、太陽活動が地球の気候変動に大きな影響を与えていることが分かります。
さらに、「超異常気象」(著:根本順吉)に掲載されている黒点周期の変化と北半球気温偏差の相関図です。
この図は、ちょっと説明が必要なのですが、11年と言われる黒点周期は、実際には9.7年から11.8年の間で変動しています。
周期が短くなるということは太陽の活動が活発化していることを表しますので、この図の実線は、周期が短くなる度合いを、また点線は北半球の気温偏差を示しています。
ここでも両者は、非常に強い正の相関関係にあることを示しています。
以上のとおり、太陽黒点の増減によって表される太陽活動の変動は、地球の気候変動に大きな影響を及ぼしていることが判ります。
■ 地球温暖化に関するまとめ
このシリーズで紹介してきましたように、地球の気候変動には様々な要因が複雑に関与しています。
大陸移動の結果現出した地球上の海陸配置、地球の公転の揺らぎに伴う太陽との距離の変動、歳差運動等による地球の受光能の変化、太陽の銀河公転に伴う星間ガス通過、火山活動、温室効果ガス、そして太陽活動に伴う光量の変化・・・。
うち、数億年レベルの大周期では海陸配置などが、10万年前後の中周期ではミランコビッチ周期が、そして、数十年レベルの小周期では太陽活動の変動周期が最も大きな要因となっているように見えます。
とどのつまり、地球は殆どの熱量を太陽から受け取っているわけですから、太陽の放射するエネルギーの量そのものの変化と位置関係・海陸配置による地球の受光能の変化が決定的な要因で、それを温室効果ガスや火山活動が付随的な効果を与えて気候を変動させていると考えるのが妥当ではないでしょうか。
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プロミネンス爆発
←この圧倒的な太陽のエネルギー! |
二酸化炭素による温室効果が存在するのは事実ですが、それは、気温の上昇を後追いして、付随的な効果を与えているに過ぎません。
まして・・・繰り返し言いますが、二酸化炭素は同様な効果を持つ温室効果ガスのうちの2%に過ぎず、人為的に排出される二酸化炭素のウエイトはさらに微量です。
多くの要因を総体的に捉えず、“人為的に排出された二酸化炭素さえ削減すれば地球温暖化を抑止できる”とする「二酸化炭素温暖化説」は、あまりにも近視眼的な考え方ではないでしょうか。
それでも、貴方はまだ「二酸化炭素悪玉説」を信じますか・・・?
/// end of the “Episode22 「陽光(ひかり)満ちる時」” ///
《追伸》
専門家たちのサイトでは、ここで紹介した他にも「二酸化炭素温暖化説」に対する様々な反証が挙げられていますが、ここ「岸波通信」での紹介は、このへんまでにしておきましょう。
人為的排出二酸化炭素を抑制するためにわが国で行われている様々な“節約”・・・それ自体は日本人の美徳にも通じるところですので、良いことではないでしょうか。
ただ、物事を疑ってかかることも時には必要です。
京都議定書の件についても、先進国の削減義務にばかり目を奪われがちですが、あの議定書に調印したことによって、発展途上国は化石燃料の利用を制限され、先進国との格差が固定されてしまいかねない側面にも着目すべきです。
何と言っても、「二酸化炭素温暖化説」を声高に唱える学者たちが数多くいる「ある国」では、自らが調印を拒否しているという不思議な事実があるのですから・・・。
では、また次回のanother
world.で・・・See
you again !
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縮小する氷河
←グリーンランドの「イルリサート氷河」が
過去数年で10キロメートルも縮小。
←人為的排出二酸化炭素の抑制だけで
本当に全てが解決できるのか? |
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