Global
Warming 3
こんにちは。「ロマンサイエンスの夢先案内人」、岸波です。
貴方をまたも“the roman science of the cosmos”の世界へご案内します。
今年の日本の夏は、とりわけ暑い気がするのですが、皆様、いかがお過ごしでしょう?
北半球にいる僕たちが夏の暑さに参っている今頃、南半球のシドニーにいるデンジャラス・レディーやニュージーランドのニコラさんたちは、きっと寒さに震えているのではないでしょうか。
北半球が夏ならば、南半球は冬・・・こんな当たり前の話が、どうやらあと6500年ほど過ぎると“当たり前”ではなくなるらしいのです・・・。
地球に季節があるのは、太陽を廻る公転面に対して23.5度傾いているから・・・確かに小学校の時にそう習った記憶があります。
しかし、この自転軸の傾く方向は、我々が気が付かないくらいにゆっくりと変化しているのだそうです。
その自転軸の揺らぎのために、6500年後には北半球と南半球の季節が同じになり、更に6500年後には、逆転してしまうというのですからコトは穏やかではありません。
母なる太陽の周りを、悠久の時を刻みながら、同じように廻り続けていると思っていた地球(テラ)・・・。
それは、あたかも宇宙を彷徨う旅人のように、ゆらゆらと自転や公転が変化しているのです。
ということで、今回のanother
world.は、“シリーズ地球温暖化”の3「彷徨える地球(テラ)」です。
1 織女星(ヴェガ)が北極星になる日
SF作家フレドリック・ブラウンに「狂った星座」という作品がありました。
宇宙を観測していた科学者が、ある日、望遠鏡をのぞいてみると不思議な違和感を感じます。
星座の形が微妙に歪んでいるような気がするのです。
でも、実際の星々は、何万光年以上も離れているのですから、そんなことがあり得るはずはありません。
ところが・・・
世界中で観測されていた星座が次々と動き出し、人類はパニックに陥ります。
さて、その結末は・・・。
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「宇宙をぼくの手の上に」
(「狂った星座」を収録)
『ブラウンの面白さは、狂気を扱っていても
作品自体はまったく狂っておらず、
徹頭徹尾、論理的だということ。
特に「ミミズ天使」の謎解きのすごさときたら!』
SF作家 山本弘 |
ブラウンの「狂った星座」は驚天動地の結末を迎えるのですが、我々が見上げる現実の星空でも似たようなことが起こっていると言ったら驚きますか?
満天の星空で唯一動かない星とされる北極星。
北極星は、ちょうど地球の自転軸の延長上にありますから、さも動かないように見えています。
でも実際の地球の自転というのは、コマが倒れる寸前に見せるような“味噌すり運動”をしていて、約2万6000年で一回転するのです。
さあ、そういたしますと、地球の傾く方向が変わってしまうのですから、当然、天の北極も変わってしまいます。
紀元前2000年~エジプトで初めて「太陽暦」が使われた頃、地上の人々が見ていた北極星というのは、りゅう座のα星(トゥバン)でした。
現在の北極星は、こぐま座のα星。
そして、あと1万2000年ほどが経過しますと、今度は、天の川を挟んでいる織女星(ヴェガ)が北極星の位置に来るというのです。
地球の歳差運動(地軸の向きの変化:2万6000年周期) |
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【現在の近日点(1月7日)】(左)
北半球:真冬、南半球:真夏 |
【1万3000年後の近日点(1月7日)】(左)
北半球:真夏、南半球:真冬 |
このように、地軸の向きが変化することによって、北極星が入れ替わり、北半球・南半球の季節が入れ替わるという不思議な現象が起きるのです。
(この“味噌すり運動”のことを「歳差運動」と呼びます。)
2 地球の周期運動
地球の周期的な天体運動は、この「歳差運動」だけではありません。
■ 地軸の傾きの変化(4万1000年周期)
歳差運動では、“地軸の向く方向”が2万6000年周期で変化しました。
ところが、地軸の傾き自体も、4万1000年周期で変化しているのです。
現在は23.5度に傾いていますが、月と太陽の影響を受けて、最大24.5度、最小21.8度の間を行ったり来たりします。
これは、気候の季節変動の大きさに影響を与えます。
(地軸の傾きが大きくなると、太陽が沈まない白夜や太陽が昇らない極夜の範囲も大きくなる。)
■ 公転軌道の変化(10万年周期)
地球の公転軌道は太陽を焦点の一つとする楕円軌道を描いていますが、約10万年周期で、円に近づいたり大きくひしゃげたりしています。
公転軌道の変化(10万年周期) |
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【真円に近い状態】
夏・冬の日射量の差が4% |
【長円に近い状態】
夏・冬の日射量の差が20% |
これは、主に木星の影響によるものですが、真円に近い状態と長円に近い状態とでは、夏・冬の日射量の差が最大20%から最小4%まで大きく変化します。
現在の差は7%で、比較的安定した状態にあります。
以上、「歳差運動」と「地軸の傾き」と「公転軌道」の三つの周期変動が相俟って、地球に氷河期をもたらしていると考えたのがユーゴスラビアのミランコビッチです。
この三つを合わせてミランコビッチ・サイクルと言いますが、実際、過去60万年の氷期・間氷期のサイクルとピタリと一致しているのだそうで、現在ではこの考え方が主流となっています。
では、どうして地球の天体運動が気候変動に影響を与えるのでしょうか?
3 陸半球・海半球
地球の天体運動は、太陽から受け取る日射量を大きく変化させます。
考えてみれば、北半球と南半球では、太陽からの距離がほんの僅か(地軸の傾きの分)しか違わないのに、片や夏・片や冬という具合に大きく気温が違うのですから、太陽からの距離自体が変化するとなれば、どれほどの影響が出るかは容易に想像がつきます。
また、これと大きく関ってくるのが現在の海・陸分布です。
現在の地球の大陸は、極端に北半球に偏っています。
次の図は、陸半球と海半球を表したものですが、南半球を中心とする海半球には陸地が10%しかありません。
陸半球
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海半球
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陸地は海洋に比べて熱しやすく冷めやすいという性質があるので、陸の多い北半球への日射量が変化すると、地球全体が寒冷化したり温暖化したりするのです。
そして、北半球への日射量は、ミランコビッチ・サイクルによって数万年から数十万年の周期で変化しますが、少しの寒冷化が引き金になって氷河の形成が始まると、氷河が太陽光を反射してしまうため、ますます寒冷化に拍車がかかるという循環が起きます。
このようにして、ミランコビッチ・サイクルによる地球の天体運動は、地球上に氷河期を到来させていたのです。
地球の温暖化・寒冷化を支配し、氷河期を到来させて来た地球(テラ)の天体運動と大陸移動・・・約1万年前に始まった現在の間氷期は、あと数千年で終わりを告げ、再び厳しい氷期が到来すると言われています。
やがてニューヨークもロンドンもハンブルグも、2万年前にそうであったように、ぶ厚い氷の下に閉ざされてしまうでしょう。
その時、我々の子孫たちは、果たして・・・?
/// end of the “Episode21 「彷徨える地球(テラ)」” ///
《追伸》
前回の「氷河期と超大陸」では、“長期の氷河期サイクルは大陸移動が主原因”であること、今回の「彷徨える地球(テラ)」では、“小さな氷期・間氷期サイクルは地球の軌道要素等が主原因”であること”を述べました。
しかし、最近になって、これに太陽の軌道要素も関係していることが判ったのです。
太陽は約2億年をかけて銀河系を一周しているのですが、実は単純な円運動ではなく、銀河円盤を上下に波打ちながら公転しているのだそうです。
すると、数千万年ごとに銀河円盤の分子雲が密集している部分を通過することになりますので、分子雲に太陽光が遮られ、地球寒冷化の引き金となるのです。
(凄いことが判るものです・・・これを知って大変驚きました。)
ということで、いよいよ次の“シリーズ地球温暖化”最終エピソードでは、さらに小さなサイクル~現在の地球温暖化をもたらしている主原因(←二酸化炭素ではない)について報告したいと思います。
では、また次回のanother
world.で・・・See
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