Global
Warming 2
こんにちは。「ロマンサイエンスの夢先案内人」、岸波です。
貴方をまたも“the roman science of the cosmos”の世界へご案内します。
ヨーロッパでは、大平原の真ん中に、その辺りでは見られない組成の巨石がポツンと存在していることがあります。
これは、いったい誰が、何のために運んで来たのでしょう?
人々は、説明の付かないこの現象を“迷子石”と呼び、聖書に出てくるノアの大洪水によって運ばれて来たのだと考えるようになりました。
ところが・・・
19世紀の博物学者ルイ・アガシーは、スイスのヌーシャテルで開催される学会で魚類化石に関する研究を発表しようとしていました。
しかし、講演の直前に「迷子石は氷河によって運ばれた」という考えがひらめき、即興で“かつて地球は氷河に覆われていた時代があった”という講演を行ったのです。
彼の講演は、1840年に「氷河時代」と題して出版され、以後、研究が進められて学会の定説となるのですが、“氷河期がなぜ起きるのか”ということについては、ごく最近まで地球科学の最大の課題の一つでした。
氷河期~それは、我々が知っている地球気候変動の典型例です。
その原因について理解することが、地球温暖化の真の原因に迫る鍵になるのではないでしょうか?
ということで、今回のanother
world.は、“シリーズ地球温暖化”の2「氷河時代と超大陸」です。
(なお、氷河期の着想はアガシーのオリジナルでなく、彼に示唆を与えた人物がいるという異説もあります。)
1 氷河期サイクル
皆さんは、氷河期にどのようなイメージを持っているでしょうか?
僕は、長い間、“地球全体が氷に覆われた厳寒期”と考えていたのですが、実際の定義はそうではありませんでした。
氷河期とは、地球の平均気温が長期にわたって下降し、極地の氷床や高緯度地域の氷河群が拡大した時期のことで、過去数百万年に関して言えば北アメリカとヨーロッパに氷床が広がっていた時代を指します。
つまり、高緯度地域に氷河が広がっていても赤道付近では熱帯性気候が維持されている場合もあるわけで、あくまでも長期的に見た平均気温の問題として捉えられるのです。
ところで、アガシーの「氷河時代」では、過去数十万年の間に氷河期という時代があったと推論をしましたが、それより遥か過去の時代にも氷河期があったとは考えもしませんでした。
現代では、27億年前から23億年前頃の原生代前期に、最初の氷河期が到来したと考えられています。
(地球が誕生したのが45億年前だから、凄いスケールです。)
また、証拠が確認されているもので言えば、過去10億年の間に4回の氷河期がありました。
そのうち最も古く、そして最も厳しい氷河期は、原生代末期の8億年前から1億年以上も続いた“超氷河期”と呼ばれるものです。
この超氷河期時代の地球は、赤道まで氷に覆いつくされるほどの全球凍結状態となったことから、“スノーボール・アース”と呼ばれています。
(スノーボール・アースの終結が、引き続いて起こった生物種の大発生~カンブリア爆発の原因になったという説もあります。)
その後、超氷河期ほどの規模ではありませんが、古生代の4億6000万年前から4億3000万年前にかけてと3億5000万年前から2億5000万年前にかけて小さな氷河期がありました。
中生代(2億5000万年前~6500万年前)に入りますと、一転して温暖な気候が続きますが、4000万年前頃から地球は急激に寒冷化しはじめ、この最も新しい氷河期は、それ以降現代まで続いています。
「え、現代まで・・・?」
そうなのです。
地球史的なレベルから見れば、現代も氷河期の中にあると言うのですから驚きです。
「しかし、現代はむしろ“地球温暖化”が問題になっているじゃないか?」
それもごもっとも。
実は、氷河期はその全期間を通して寒冷な気候にあるわけではなく、さらにその中で、氷期(寒冷期)と間氷期(温暖期)の小さなサイクルで気候が変動しているのです。
2 気候変動とミランコビッチ・サイクル
南極の氷床コアや深海掘削試料の分析によって、過去60万年間の詳細な気候変動の実態が解明されて来ました。
その結果、ヨーロッパでは、この60万年間に少なくとも5回の氷期とその間に4回の間氷期、そして、最終氷期の後、現在に及ぶ後氷期が存在したことが判りました。
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氷期地形:薬師岳カール
(in
北アルプス)
←カールは氷期に小規模な氷河が侵食した地形。 |
大きな氷河時代の中のこれら小さな氷期のサイクルは、古い方から順にドナウ氷期、ギュンツ氷期、リス氷期、ウルム氷期と名付けられています。
最終氷期とされたウルム氷期は約1万年前に終息しましたので、それ以降の時代は最終氷期の後の時代という意味で“後氷期”と呼ばれて来ました。
(実際は次の氷期までの間氷期であることが10年前に判りました。)
では、このような氷期・間氷期のサイクルはどうして起こるのでしょう?
1941年にユーゴスラビアの地球物理学者ミランコビッチは、地球の公転軌道に周期的な揺らぎがあることを発見しました。
また、地軸の向きや角度など地球自体の天体活動にも周期的な変化が起きていることを、計算の結果、突き止めました。
そして彼は、こうした地球の自転・公転の揺らぎが氷期・間氷期の気候変動に大きな影響を与えているのではないかと推論したのです。
その後、氷期・間氷期に関する研究が進められますと、確かに過去60万年間の氷期・間氷期はミランコビッチが指摘したサイクルと対応していることが確認されました。
しかし・・・
ミランコビッチの理論だけでは、氷期・間氷期のサイクルが何故60万年前から生じたのか説明ができません。
いったい何故・・・?
それに答えを与えたのは、意外にも“大陸移動説”に関する研究でした。
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7000万年前のインド亜大陸
(想像図)
←アフリカ大陸から分離して北上を開始した。 |
今から7000万年前、プレートに乗って移動してきたインド亜大陸は、北上してユーラシア大陸に衝突し、チベット・ヒマラヤ山系の形成を開始しました。
この造山運動が地球環境を激変させ、地球寒冷化のひきがねを引いたのです。
その後も造山運動は続き、60万年前頃には、ヒマラヤ山系をさらに5000メートルも隆起させました。
まさにこの60万年前を境にして、氷期・間氷期の寒暖差が激しくなっていたことが判ったのです。
つまり、ミランコビッチ・サイクルが突然60万年前から始まったわけではなく、この時期から寒暖差が増幅されたため、氷期・間氷期が認識しやすくなったのだと考えられます。
このようにして、地球の気候変動には、ミランコビッチ・サイクルと大陸移動が大きな役割を果たしていることが突き止められました。
でも、この造山運動以外にも、大陸移動が気候変動に与える“よりダイナミックなメカニズム”が存在するのです。
それはいったい・・・?
3 超大陸と気候変動
今から2億5千万年前、地球上にはパンゲアと呼ばれる一つの超大陸が存在しました。
(Episode3&4「浮遊大陸(前・後編)」を参照してね。)
そして、その時代の大陸配置は次の図のようになっていました。
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超大陸パンゲア
(想像図)
←現在の大西洋地域にあった。 |
大陸がこのように赤道付近の一箇所に集合していると、海洋上を東から流れてきた暖流が大陸の東海岸にぶつかって両極方向に流れて行くために、全球的にくまなく熱が伝達され、温暖な気候になると考えられています。
(ただし、大陸が極地方に存在した場合には逆の効果になります。)
実際、諸大陸の衝突によって、2億5千万年前にパンゲア超大陸が形成された中生代(2億5千万年前~6500万年前)には、全体として非常に温暖な気候が続きました。
ところが、6500万年前頃になりますと、パンゲア超大陸から分裂した大陸がほぼ現在の位置まで移行し、極地方への熱伝達がうまくいかなくなりました。
その結果、地球は次第に寒冷化して行きます。
3600万年前には南極大陸が氷床に覆われ、次いで300万年前には北極の氷床が成長を始めるのです。
(これを促進させたのが、インド亜大陸の衝突によるヒマラヤの形成です。)
このように、地球上の大陸の配置は、海洋の熱循環を通して気候変動に大きな影響を与えます。
では、パンゲア以前はどうだったのでしょう?
実は、地球上に現れた超大陸はパンゲアだけではありません。
最初の超大陸はヌーナと呼ばれ、約19億年前に誕生したと考えられています。
そして、その後も数億年の周期で、大陸の集合離散が繰り返されているのです。
【かつて地球上に存在した超大陸】
ヌーナ超大陸(19億年前頃):最初の超大陸
コロンビア超大陸(18億年前~15億年前頃)
パノティア超大陸(15億年前~10億年前頃)
ロディニア超大陸(10億年前~7億年前頃)
パンゲア超大陸(2億5000万年前~2億年前頃) |
※大陸は、数億年周期で集合離散を繰り返している。 |
スノーボール・アースを現出させた8億年前は、ちょうど第4番目のロディニア超大陸の時代に当たります。
ロディニア超大陸は、パンゲアが形成された地域からほぼ正反対の、現在の太平洋地域の南半球寄りに形成されました。
10億年前にロディニア超大陸が形成されると間もなく、今度は離散が開始されましたが、8億年前頃には、分裂した全ての小大陸がスノーボール・アースの分厚い氷河に覆われていたと考えられます。
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超大陸ロディニア
(想像図)
←現在の大西洋地域にあった。 |
地球の長期的な気候変動に決定的な影響を与えている大陸移動~その活動は現在も続いています。
今から2億年後には、ユーラシア大陸とアメリカ大陸、オーストラリアが衝突して太平洋が消滅し、アメイジアと名付けられた超大陸が出現すると予測されています。
その遥かな時代、我々人類は、この地上の王として変わらずに君臨を続けていられるのでしょうか?
/// end of the “Episode20 「氷河期と超大陸」” ///
《追伸》
このシリーズ“地球温暖化”の製作に当たっては、多くのサイト・文献を参考にさせていただいていますが、特に影響を受けたサイトを二つだけご紹介いたします。
◆二酸化炭素温暖化説に対する反論 (サイト“二酸化炭素温暖化説に対する反論”より)
「地球の気候を変えるための地球の側の要因としては海陸分布の変化のようなダイナミックな変化が重要であり、温室効果ガスの濃度などは枝葉末節に過ぎない。」
◆二酸化炭素地球温暖化脅威説批判 (サイト“環境問題を考える”より)
「通説とされている人為的な二酸化炭素の増加によって近年の気温上昇を説明しようとする仮説は観測値を無視した「暴論」と言ってよいと考えます。また、人為的に増加した二酸化炭素の二次的な保温効果の影響が全くないとは言い切れませんが、言われているほど大きな影響があるとはとうてい考えられません。」
シリーズ“地球温暖化”はあと2編くらいを予定していますが、ブッシュが言明したスペースシャトル計画の中止に関してコメントしたいので、そちらの話題を先に取り上げるかも知れません。
では、また次回のanother
world.で・・・See
you again !
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ヒマラヤの造山運動
←(インド亜大陸の上昇は現在も続いており、
ヒマラヤも成長を続けている。) |
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