岸波通信その47「バレンタイン伝説」

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Present by 葉羽
「Endless Love」 by CUPID'S VALENTINES MIDIS
 

岸波通信その47
「バレンタイン伝説」

1 リチャード・ロジャース

2 マイ・ファニー・バレンタイン

3 聖バレンティヌスと薔薇伝説

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  The Rose Legend  【2018.2.12改稿】(当初配信:2004.2.14)

「誰も愛してくれないと、孤独の淵に立ったとき
 せつないけれども、この唄を思い出そう。」
  ・・・「マイ・ファニー・バレンタイン」

 土日・祝祭日とバレンタイン・デーが重なると、何故か悲しいですよね。

(2018年は平日でよかった…。)

 いやぁ、昔のバレンタインデーはよかった・・・実に。

 だけど高校の時、机にチョコが入ってたのを発見した時には、「これが男子校でなければ」と残念な思いをしました(笑)

考える人・・

考える人

(男でなければ…)

(さてココからは「である調」で行ってみます。たまには…ネ(笑))

 最近は、虚礼廃止の影響か“義理チョコ”なるものも姿を消しつつあり、全国の職場は至って平静なようである。

 バレンタイン・チョコの国内消費額も1991年の4,684億円をピークにして漸減傾向だ。

 まあ、心に期すものがある女性にとっては、未だにバレンタイン・デーは大切な日であるに違いあるまいが、もともと2月14日というのは、イタリアの聖バレンティヌスが処刑された日に他ならない・・・決してメデタイ日などではなかったのである。

 また、チョコレートを贈るという日本独特の風習も、昭和33年にメリー・チョコレートの営業主任の原邦夫さんが考案したもの。新宿伊勢丹でキャンペーンを行ったのが始まり。一日かかって売れたのはたったの5個だったそうだ。

 ということで、今回の通信は、メール・エッセイ版で既配信の「マイ・ファニー・バレンタイン」を、改題・全面リメイクでお届けしたい。

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【バレンタインの迷信1】
あなたが結婚するかもしれないと思う男の子、または女の子を5、6人思い浮かべて下さい。
そしてリンゴのへたをぐるぐる回しながら、へたがぽきっと折れるまでその名前を繰り返し唱えます。
ちょうどへたが折れたときに唱えた名前の人とあなたは結婚することになるでしょう。

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1 リチャード・ロジャース

 『万人の心を打つ、20世紀を代表する最高のメロディメーカーは、クラシック音楽の側からついに生まれることはなかった。』

 これは、ハリウッドの映画音楽の巨匠リチャード・ロジャースを讃えて言われたほめ言葉だ。

 クラッシック音楽をこよなく愛する人々からは“異議アリ”の声も聞こえてきそうだが、確かにこう言われれば「そうなのかもしれない」と考え込んでしまう。

ハリウッドの巨匠リチャード・ロジャース

リチャード・ロジャース

(ハリウッドの巨匠)

 考えてみれば、世界に普遍的に知られる音楽というものは、20世紀に入ってから大きく変貌を遂げたのだ。

 その理由の一つには、もともと西欧の宮廷音楽であったクラッシックが、大航海時代から産業革命を経て帝国主義に至る西欧の世界進出と軌を一つにして世界化したという経過もあるだろう。

 すなわち、クラッシク音楽の世界化は西欧の覇権とともにあった。

 もう一つ言うならば、そこに“キリスト教”も加えていいだろう。

 西欧による世界の分割・植民地化の尖兵となったのがキリスト教会であり、次に軍事力という問答無用の“力”によって相手国をねじ伏せ、最後にクラッシック音楽を初めとする西欧文明によって征服地の民心安定と文化的教化を図ったのだ。

 しかし、第二次世界大戦を経て、西欧の覇権は大きく揺らぎ、米ソの二大国時代がもたらされる。

 イデオロギーの対立だ。最早、尖兵としての宗教の出番はない。

 アメリカがその代わりに用いた戦略が“ハリウッド”だ。

 ハリウッド映画が世界を席捲し、そのスクリーンの中にさりげなく登場する米国文化・・・コークやマックやミュージカルやカジュアル・ファッションなどのアメリカン・イメージはやがて世界に浸透し、それらを実際に輸出することで、米国の経済的な主導権確立に大きな役割を果たしたのである。

 西欧クラッシク音楽とハリウッド映画音楽、それぞれの果たした役割を考えれば、冒頭のほめ言葉のより深いニュアンスが理解できるのではないだろうか?

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【バレンタインの迷信2】
種になったタンポポをつみ、大きく息を吸って種を吹きます。
茎に残っている種の数を数えましょう。それが将来のあなたの子供の人数です。

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2 マイ・ファニー・バレンタイン

 リチャード・ロジャースは、ハリウッドを代表するメロディ・メーカーの一人だ。

 「サウンド・オブ・ミュージック」、「オクラホマ!」、「南太平洋」、オードリー・ヘプバーンが主演した「王様と私」も彼が担当した。

 こうした数々の映画音楽、ミュージカル名曲を世に送り出したロジャースは、ジャズのスタンダード・ナンバーも世に残している。

 2002年は、ちょうどロジャースの生誕百年に当たったこともあり、日本でも多くの記念アルバムが発売されたが、そこで欠かせない曲は、毎年バレンタイン・デイに繰り返し演奏されている「マイ・ファニー・バレンタイン」だ。

 1837年初演のブロードウェイ・ミュージカル“Babes In Arms”のテーマとして書かれたこの曲は、名コンビ、ローレンツ・ハートの心に残る詞とともに、今なお愛され続けているスタンダード・ナンバーの一つだ。

 はじまりはアンニュイでダークな曲想、しかし山場になると、一転してむせび泣くようなトランペット・・・。

映画「Babes In Arms」

(1939年)

←ミッキー・ルーニィとジュディ・ガーランド

 だが実は、この「マイ・ファニー・バレンタイン」は“バレンタイン・デイ”のことではないのだ。

 男性歌手チェット・ベイカーの中性的な甘い高音で歌われるのでよく誤解されるが、バレンタインはもともと男性の名前~イタリアでいう“ヴァレンチノ”だ。

 そのへヴィーなメロディとは裏腹に、女性が恋人をからかうような歌詞である。

へんてこりんなバレンタイン。可笑しくて可愛いバレンタイン。

あなたを見ていると思わず笑っちゃうわ。

あなたの姿ときたら写真向きじゃあないわね。

でも、私好みの芸術作品だわ。

体型はギリシャ彫刻より落ちるし、口元はちょっと締まりがないし、

話し方だってスマートでもないわ。

 もう、散々な言い草・・・。

 だが、この女性、そんな風采の上がらない彼氏が大好きなのである。

 その後はこう続く。

でも、私のために髪型なんか変えないで。

そのままでいて、素敵なバレンタイン。

そのままでいてくれれば、私には、毎日がバレンタイン・デイ。

 ・・・なるほどなぁ。

チェット・ベイカーの甘い歌声

チェット・ベイカー

 世の中、プチ整形などといって、自分自身の思い込みで整形手術を受けたがる人も増えている。

 だが、ありのままの自分自身を愛してくれる人もきっといるはずだ。

 こんな名言を言った人もいる。

「誰も愛してくれない」と、孤独の淵に立ったとき

せつないけれども、この唄を思い出そう。

愛されないのは、目が小さいからでも背が低いからでもなく

他ならぬあなたが、自分自身を愛してないからなのだ・・・。」

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【バレンタインの迷信3】
バレンタインデーに頭上を飛ぶコマドリを見た女性は船乗りと結婚し、
すずめを見た者は貧しい人と結婚するが、幸せになれる、
そしてもしゴシキヒワ(鳥の種類)を見たら億万長者と結婚する。


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3 聖バレンティヌスと薔薇伝説

 ところで、バレンタイン・デイの由来となったのは、西暦3世紀のローマでの事件だ。

 ローマ皇帝クラウディウス二世は、若者たちがなかなか戦争に出たがらないので手を焼いていた。

 その理由は、彼らが自分の家族や愛する者の許を離れたくないからだと早合点した皇帝は、ついに兵士の結婚を禁止する暴挙に出たのだ。

 兵士である若者たちは、皇帝の命に逆らうこともかなわず、泣く泣く恋人と別れねばならなかった。

 しかし、イタリアのテラモという町のキリスト教司祭であったバレンティヌスは、こうした兵士たちの嘆きを見るに見かね、皇帝の命に背いて内緒で結婚式を執り行ってやったのだ。

薔薇伝説?

聖バレンティヌス

 やがてそのことはローマ皇帝の知るところとなり、皇帝は彼を咎めようとしたが、バレンティヌスは頑として聞き入れず、遂には投獄されて、西暦270年の2月14日に処刑されたのである。

 一方、ローマにはルペルカーリアという豊穣祭があり、毎年の祭りの間、若い男女がくじ引きでカップルを決めて愛しあうことが行われていた。

 西暦496年に、若者たちの風紀紊乱を憂えた教皇ゲラシウス一世はこの風習を禁止し、代わりに聖人の名前を書いたくじを引かせ、以後一年間、引き当てた聖人の人生にならった生き方をすることを義務付けた。

 このルペルカーリア豊穣祭は、毎年2月14日から行われていたことから、約200年前の同日に殉教し、市民の絶大な支持を得ていた聖バレンティヌスが祭の守護聖人とされたのだ。

 こうして、2月14日は、“聖バレンティヌス・デイ”(英語読みでバレンタイン・デイ)となったのである。

薔薇伝説?

ルペルカーリア祭

 また、この聖バレンティヌスには、もう一つ“薔薇伝説”というエピソードが伝えられている。

 心底から愛し合って婚約までしたのに、ささいなことで口げんかが絶えないカプッルがいた。ある日、バレンティヌスは、薔薇の花束を携えて二人のもとへと赴いた。

 その薔薇を受け取った二人は、不思議なことに、つまらないプライドや行き違いで頻繁にいさかいを繰り返していた自分たちの不明に気づくようになり、以後、お互いを傷つけあうような喧嘩を一切しなくなり、めでたく結婚することができたというのだ。

 

 その一輪の薔薇に、どのような不可思議なパワーが宿っていたのかは分からない。だが、おそらく、若い二人は花の美しさを愛でる余裕さえないような生活を送っていたに違いない。

 バレンティヌスから捧げられた一輪の薔薇が自分たちに潤いと喜びを与えてくれたことで、お互いが相手に対してそういう存在でなければならないということに気づいたのではなかろうか?

 ・・・この薔薇伝説にちなんで作られた愛のリキュールがある。

 その名を『ロゾーリオ』といい、薔薇の花びらで造られた甘い香りを漂わす赤い酒だ。イタリア最古のリキュールとも呼ばれている。

ロゾーリオ

薔薇のリキュール『ロゾーリオ』

←右は同封されている聖バレンタインの“誓いの書”

 このリキュールは日本でも入手する事が可能で、エレガントな細いボトルには、一緒に署名すれば二人は必ず結ばれるという“聖バレンタインの書”が同封されている。

 バレンタイン・デーにチョコレートを贈るのは、森永製菓の大キャンペーンが実った日本だけの不思議な風習。

 “愛の殉教者”聖バレンティヌスの薔薇伝説にあやかって、甘美なルビー色のロゾーリオのグラスを傾け、飲み終わったボトルに一輪の薔薇を飾って、「誓いの書」をしたためる・・・たまには、そんな大人のバレンタイン・デーもいいものではないだろうか?

 

/// end of the “その47 「薔薇伝説」” ///

 

《追伸》

 バレンタイン・デーには、近年、オーストリアでも商業広告が街に溢れるようになったのだそうだ。

 その商業効果は一億ユーロと言われているが、プレゼントするのはチョコレートではない・・・花束である。

 また、オーストリアのサンクト・バレンティンは、その名前から“愛の街”と呼ばれるようになり、バレンタイン・デーにこの街で結婚式を挙げることが若いカップルにとっての憧れなのだそうである。

 そこに目を付けた日本の町がある。

 岡山県の作東町がそれで、作東町はサンクト・バレンティンと姉妹都市提携を結び、自らを“日本のバレンタインの里”と呼んでいる。

 いったいどういうワケなのだろう?

(サンクト・バレンティン・・・サンクト・・・サクト・・・サクトウ・・・あーっ!)

 

 では、また次の通信で・・・See you again !

マイファニーバレンタイン

マイファニーバレンタイン

(作:鶴田一郎)

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