あれは先日のこと、お昼のカラオケ会を終えて、バスに乗ろうと福島駅の地下道へ入ると、彼方から聞こえてくるピアノの音色。
おや? これはもしや噂に聞く街ピアノとか駅ピアノとかいうものか?
近づいていくと、演奏しているのは女性で地下道には僕しかおらず、どうしたものか・・女性の背後に立ち止まるのも憚られたので、歩みをゆっくりと遅らせて演奏を耳に入れながら通り過ぎた。
ふとピアノを見ると『福のピアノ』というロゴが貼られている。で、帰ってから調べてみた。
このストリートピアノは”ふくしま情熱通り実行委員会”が設置したもの。元は福島駅構内に二年前から設置され、この地下道は3か所目とのこと。
福島駅東口は現在、辰巳屋ホテルやデパート中合などの跡地が再開発されているが、新ビルが出来ればその周囲に移設される予定だそうだ。
ところがこうした街ピアノ、全国を見ると撤退の動きが始まっているらしい。
ニュースなどで取り上げられていたのが、兵庫県JR加古川駅に設置された駅ピアノが「マナー違反」続出で撤収が決まった件。
一人10分以内という利用時間が守られなかったり、必要以上に大きな音を出して苦情が出たり、禁止されている「弾き語り」をする利用者が居たらしい。
個人的意見だが、三番目の「弾き語り」はOKでもいいと思う。
撤去された加古川駅のピアノ
そしてルール違反の元凶は、どうやら街ピアノYoutuberによるもので、動画撮影のための機材を持ち込んでセッティングするだけで時間を喰ってしまうし、派手なアレンジの曲目が大音量で演奏される事が多い。
これらは加古川に限らず、どこの街ピアノでも起こっている事で、結果、ピアノの配置場所が当たり障りのない(ひと気のない)場所に移設されている。
難しいものだ、と思う。昔、航空行政を担当した時に全日空の国際便に「香道」のサービスを提案したことがあった。
ところが、実は既に試行した事があったが「香り」は大多数の者がかぐわしいと認識するものでも、一部には「雑臭」としか受け止められなかったとの事だ。
公共空間に関わることは全て同じかもしれない。音でも匂いでも景観でも。現代アートであっても思想性などによって撤去されたケースもある。
撤去されたサン・チャイルド
音楽評論家の石黒隆之氏がコラムで書いていた・・「日本の街ピアノにはコミュニケーション」が無いと。
彼がロンドンで目にしたケースでは、ベートヴェンの「歓喜の歌」をダウン症の女の子と男性が連弾していた。
女の子は好きなように鍵盤を叩くだけだったが、男性は「いいよ、いいよ、その調子」と応援して弾き続ける。演奏が終わると万雷の拍手が。
腕自慢が曲芸のような演奏を披露してネットのバズリを狙う日本の街ピアノとは全く”空気感”が違ったと。
ロンドンの街ピアノ/参考画像
なるほどな・・「使われ方」の問題なのだと思う。ヴァイオリンの大道芸などがあった西欧文化の歴史の深さもあるかもしれない。
これから、福島の「福のピアノ」は、どんなふうに成長していくのか。
願わくば、簡単に廃れてしまう”一時の流行”ではなく、福島市民ならではの新しい地域文化を育む”種”になって欲しい。
・・そんな事を考えた一日だった。
「ということなんだよ、ケイコ」
「今回は珍しく、真面目な話だったんじゃない?」
「そりゃあそうだよ、僕だって高校の時、新浜公園のベンチでギター弾いてたストリート・ミュージシャンだったんだから!」
「それは単に、女子高生にモテたかったからでしょ」 m9っ`Д´)
ぐっ、ぐぬう・・。o(-_-;*)
(ちゃんちゃん!)
(ToT) (ToT) (ToT) (ToT) (ToT)
<<THE END>>
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