おふくろ亭 (詩:葉羽)
アパート暮らしの学生の頃
決まったように通っていた
貧乏学生の週に一度の贅沢
それは 溶き卵をたっぷり纏ったカツ丼
仙山線の北山駅の近く
おふくろ亭はガードを越えた坂の上
お婆ちゃんがたった一人で
切り盛りしている小さな食堂
あれはクリスマス・イブ
雪がシンシンと降る夜のこと
いつもありがとねの言葉と共に
付かないはずの味噌汁が付いてきた
「今日はクリスマスだからね」
「クリスマスに味噌汁かよ」
おどけた調子で答えたけれど
本当は泣きたいくらい嬉しかったんだよ
あれから四十年・・・
店は多分もう残っていない
だけど
お婆ちゃんに教えられたことは忘れない
幸せというのはとても小さなものだと
貧乏学生の青春の記憶
人生で一番美味しかった
クリスマス・イブのカツ丼の思い出 |