十年前の春 (詩:葉羽)
十年前の春 生前の父を連れて相馬港へ
危険だと諭したが どうしても行きたいと言う
父は若い頃 港の建設に関わっていた
港に到着すると 凄絶な光景に息を呑む
父は震えながら怖いと言い 車を降りることが出来なかった
あの日 喫茶店で二人押し黙り 苦いコーヒーを飲んだのが 昨日の事のようだ
あれから十年・・ 街はすっかり綺麗になったが 海は灰色の防波堤の彼方
あの店を訪れると 黙って二人分の珈琲が出てきた
今、目の前に 愛だけがある
PAGE TOP