こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
「8番出口」から、外に出ること。
昨年2025年8月に日本公開された、二宮和也主演の『8番出口』がAmaプラで無料鑑賞できるようになっていたので早速視聴いたしました。
2025年の第78回カンヌ国際映画祭でPrix Luciole部門の再優秀賞を獲得した作品で、日本国内だけで50億円超、世界興行収入は66億円以上を稼ぎ出した話題作。
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8番出口
(C)2025 映画「8番出口」製作委員会 |
これは、KOTAKE CREATE(コタケクリエイト)が開発したゲームソフト『8番出口』を実写映画化したもので、よりストーリー性を加味した脚本となっています。
さて、その内容は?

それは無限にループする迷宮に入り込む、
劇場サバイバル体験。
映画の冒頭、地下鉄に乗っている「迷う男」(二宮和也)は、赤ん坊が泣く若い母親を執拗に叱りつける男を目撃する。
しかし周囲の誰も関わろうとせず、「迷う男」もスマホのイヤホンを付けて大音響で音楽を流し、気づかないふりをして地下鉄を降りる。
そこに掛かって来た電話は、別れようとしていた彼女から「病院で診て貰ったら妊娠していた」という報せ。「どうする?」の問いに答えないまま、とりあえず病院へ向かうことにする。

しかし・・いつもの慣れた地下迷路のはずが、いつまで経っても出口にたどり着かない。「迷う男」は、向こうから同じ男が何度もやって来るのを見て「無限回廊」に捉われていることに気付く。
さて、男は目指す「8番出口」にたどり着くことができるのか?
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8番出口
(C)2025 映画「8番出口」製作委員会
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以下、映画の概要とあらすじは以下の通り。
◆『8番出口』の概要とあらすじ(映画.comによる)
2023年にインディーゲームクリエイターのKOTAKE CREATEが個人制作でリリースし、世界的ブームを巻き起こしたゲーム「8番出口」を、二宮和也主演で実写映画化。
蛍光灯が灯る無機質な白い地下通路を、ひとりの男が静かに歩いていく。いつまで経っても出口にたどり着くことができず、何度もすれ違うスーツ姿の男に違和感を覚え、自分が同じ通路を繰り返し歩いていることに気づく。そして男は、壁に掲示された奇妙な「ご案内」を見つける。「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から、外に出ること」。男は突如として迷い込んだ無限回廊から抜け出すべく、8番出口を求めて異変を探すが……。

主人公の“迷う男”を二宮、スーツ姿の“歩く男”をドラマ「VIVANT」の河内大和が演じ、「渇き。」「糸」の小松菜奈、「遠いところ」の花瀬琴音、子役の浅沼成が共演。監督・脚本は、「怪物」「君の名は。」など数々のヒット作のプロデューサーとして知られ、2022年の初監督作「百花」で第70回サン・セバスチャン国際映画祭の最優秀監督賞を受賞した川村元気。2025年・第78回カンヌ国際映画祭ミッドナイト・スクリーニング部門出品。
2025年製作/95分/G/日本
配給:東宝
劇場公開日:2025年8月29日 |
まず、大音響のラヴェルの「ボレロ」が流れる「導入」が秀逸。
地下鉄に流れるには違和感あり過ぎのこの曲が、実は主人公(二宮和也)が面倒事から気を逸らすためのスマホ音楽であることが示される。
同じメロディが何度もループする音楽は「迷宮」に迷い込むための序曲として用いたのでしょうか。
この音楽を聴くと、ボレロをテーマにしたクロード・ルルーシュ監督の永遠の名作『愛と哀しみのボレロ』(1980年)を思い出さずにはいられません。
ボレロをテーマにした『愛と哀しみのボレロ』
スマッシュヒットを放った原作のインディーズゲームのルールは単純で・・
「異変を見逃さないこと」
「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」
「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」
「8番出口から外に出ること」
の4つを守りながら「8番出口」からの脱出を目指すもの。
ゲーム「8番出口」
ただし、この「異変」と言うのがくせ者で、天井の蛍光灯がおかしな配置になったり、非常口の取っ手が中央に付いていたりという些細なものから、コインロッカーから赤ん坊の泣き声が聞こえたり、人間ではない通行人がおかしな行動を始めたりという「怪異」まで。
果ては奇形のネズミが集団で襲ってきたり、汚水の大洪水が起きたりという大掛かりなクライシスもあり、最終的に誤った出口から出てしまうとカオスに呑みこまれてゲームオーバーとなる。
VRでやるとより怖い
このように初めから「脱出ゲーム」と割り切れるのに対し、映画版では現実世界で通勤途中の人物が次第に「違和感」を感じる出来事に巻き込まれ、いったい何が起きているのか分からないパニック感が恐怖をそそります。
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8番出口
(C)2025 映画「8番出口」製作委員会
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この映画をネットで先行して観たGINさんは「良く分からない映画だった」と言いましたが、たしかに「何故、この異世界に迷い込んだのか」は全く説明されません。
映画全体を見れば、いつもトラブルから逃げ続けている主人公が、別れようとしていた彼女の妊娠発覚でどうしていいか分からず、堂々巡りの「心の迷宮」に迷い込んだメタファーであることが理解できるでしょう。
彼女(小松菜奈)
ただ、同じ地下通路を何回もループするシーンが際限なく続くので、途中で「なんだコリャ」となるのも分かる。(笑)
このループ・シーンを見て思い出したのが、トム・クルーズが主演した『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014年)で、戦闘経験ゼロの主人公が謎の侵略生物「ギタイ」との戦いで死亡するたび、出撃前日に時間が巻き戻る話です。
『オール・ユー・ニード・イズ・キル』
つまり、同じようなシーンが何度も繰り返されるので「くどい」と感じるのも事実。実際僕も「くどさ」に嫌気がさし、途中で投げ出そうかと思いました。
だがしかし!!
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また最初からやり直しか・・
(C)2025 映画「8番出口」製作委員会
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映画には大きな転換点が訪れます。何度も向こうから歩いて来るオジサン「歩く男」(河内大和)が視点の話に途中切り替わるのでした。
彼自身もまた「心の迷宮」に捉われたもう一人の主人公だったのです。
岸波 ゲームでは、このシークエンスは無い。
さらにもう一人、「少年」(浅沼成)も迷い込んでおり、この少年とどう関わるかが「迷う男」と「歩く男」の脱出ミッションの成否を分けることになります。
地下迷路の「少年」
というのも、この少年は「小さな異変を見つけることに長けている」のですが、それを他人に「上手く伝えることができない」のです。
「歩く男」はあくまでも少年を「ただの子供」としか見ていないため、彼の「能力」に気づくことさえできません。
一方「迷う男」は、少年が黙って立ち止まると「同じ目線」で異変を発見し、彼と協力しながら謎を解いていくことになるのです。

人生の様々な出来事に「無関心」であった生き方を反省し、些細な「違和感」にも真摯に対応していくことが如何に大切か・・それがこの「映画」のテーマでしょうか。
そのことを「歩く男」と「迷う男」の対比で物語っていると感じました。
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8番出口
(C)2025 映画「8番出口」製作委員会
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しかしこの映画での二宮君、『グラックペアン』の冷酷な天才医師とは打って変わり、人生にオドオドと惑う持病持ちの・・どこにでも居そうな青年を上手く演じています。
でもやはり「歩く男」を演じた河内大和の怪演は一見に値する。特に、無表情ですれ違った彼を振り返ると、笑っているという演技が超絶コワイ(笑)
映画の最終盤、「0番」から「7番」まで進み、あと少しで「8番出口」が見えて来ると言う場面で突然「地鳴り」がし、彼方から血や汚物の混ざった大洪水が襲ってきます。
何が起こった? いったい何を見逃した!? さて、二人の運命や如何に?
/// end of the “cinemaアラカルト546「8番出口」”///

(追伸)
岸波 映画のエンディングでは「迷う男」が「地上への出口」ではなく、「地下鉄への降り口」から脱出し、最初の地下鉄シーンに戻ることにります。(ゲームでは、単純に「8番出口」から地上に出てエンディング)
そこで再び、赤ん坊が泣いている母親を叱りつける男のシーンと向き合うのです。
そして今度は、耳のイヤホンを外し、叱っている男の方へ歩みだすシーンで終焉となります。
彼は迷宮での「少年」との触れ合いを通じて成長し「迷わない男」として生きていくのでしょう。
きっと、彼女の妊娠にも真正面から向き合い、二人で「正しい答え」を見つけだすのではないでしょうか。
人生は「選択」の積み重ね。ゲームを実写化した「ホラー映画」にとどめず、成長と感動の物語に昇華させた脚本に拍手です。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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8番出口
(C)2025 映画「8番出口」製作委員会
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