こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
その『兄妹』を覗き込んではいけない
今年5月4日にNHKで放送された『泉京香は黙らない』をもう一度、Amaプラで視聴しました。
荒木飛呂彦の代表作『JOJOシリーズ』から、漫画家岸辺露伴を主人公としてシリーズ化された『岸辺露伴は動かない』の露伴担当編集者、泉京香をさらに主人公とした二重のスピンオフ作品です。
なお今作は、漫画を原作としないドラマ用新作で、原作者の荒木飛呂彦が脚本協力を務めています。
NHKの同シリーズで共演した露伴役の高橋一生と京香役の飯豊まりえが現実に結婚し、夫婦共演となった作品。(ただし、今作の主人公は京香)
スタンド能力を持たず普通の人間である京香が、「怪異」に対してどのように立ち向かうのか?
さて、その結末は?

飯豊まりえの“最強”と堀田真由の“最恐”
ドラマの冒頭、レストランで食事をしようとしている泉京香(飯豊まりえ)と彼氏の新聞記者勘助(橋本淳)。
勘助は映画を誘おうとするが、京香は「ごめん、その日は仕事が入っちゃって」。すると勘助はボイスレコーダーを取り出して「先週も同じことを言ったよ」と。
彼氏の勘助
会話を録音されていたことに腹を立てた京香は、こっそりとそのレコーダーをポケットに入れてしまう。←(終盤のどんでん返しの伏線)
場面変わって、岸辺露伴との打ち合わせシーン。
最近、発掘した新人漫画家の人気が出て「目利き」を自慢する京香に対し、「会話は強烈だが、絵やストーリーは平凡」と駄目だしする露伴。
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以下、ドラマのあらすじは以下の通り。
◆『泉京香は黙らない』のあらすじ(映画.comによる)
「そんな言い方、ひどいじゃないですか!」
漫画編集・泉京香は、岸辺露伴との打ち合わせで声を荒らげた。原因は、最近、京香が連載を立ち上げた新人漫画家・西恩ミカ。100万部の大ヒットだと得意気に語る京香に、露伴は「会話は強烈だが、絵やストーリーは平凡でアンバランス。この漫画家、なにかがおかしい」と痛烈に批判したのだ。京香は腹を立ててその場を後にする。

しかし、つい怒ってしまったのは露伴の指摘のせいばかりではなかった。京香自身も、ミカには違和感を覚えていたからだ。打ち合わせはいつも電話で、しかも兄の奏士としか話したことがない。実はミカには会ったことがない。どうやって描いているかも分からない。

急に不安に駆られた京香は西恩邸へと赴き、強引に西恩ミカと対面する。しかし、ミカの様子に京香の不安は更に増す。いくら話しかけても何も答えない。代わりに答えてくるのは、ミカの横にピッタリと控える兄の奏士ばかりだった。 |
漫画原作とドラマ版の最も大きな違いは、編集者泉京香の「存在感」。
原作ではごく限られた登場ですが、ドラマでは強烈な個性を放って露伴の行動をかき回す「ヒール」役になっています。
泉京香(飯豊まりえ)
ある人の作品解説では、タイトルを改変して・・
泉京香が黙っていられるわけがない。
と書いていますが(笑)、とにかく「押し」が強くて天真爛漫な性格。いろいろな厄介事を持ち込んで露伴を困らせる。
そこがウケてどんどん存在感を増し、映画版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』では全編を通して露伴のバディとして活躍しました。
『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』
また、どんな「怪異」が登場しても彼女には「見えない」ので常に平常運転。これが『飯豊まりえ最強』と言われる所以なのであります。
ところが、今回の怪異はスタンド能力や幽霊ではなく人間の「異能力者」。
その新人漫画家西恩ミカは、他人の唾液や音声データ(CDなど)を舐めて「会話の記憶」を模倣し、舌を食べてしまうことで「完全支配下」に置くのです。
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この西恩ミカを演じた堀田真由が実に怖い。見た目はむしろ可愛いお嬢さんだけれども、まず「鼻ピアス」が異様。そして、対面しても一言も声を発しない。
双子の兄・奏士(寛一郎)が代わりに受け答えをするが、 この「兄」にしても会話する時にほとんど口を開かないのが怖い。
すでに西恩ミカに舌を食べられて支配下にある。声はミカの腹話術。
双子の兄・奏士(寛一郎)
二人の屋敷の中には数多くの「使用人」らしき者たちがいるが、彼らも誰一人「声」を発しない。
邸内の使用人たち
「いったい何が起きているのか分からない」というJOJO作品の異様な空気感が如何なく発揮され、邸内の不穏さに流石の泉京香も怯え始めるのです。
荒木飛呂彦の作る世界の怖さは、心理的なものであることが多い。じわじわ、じわじわと侵食されてくる感覚だ。
だから『エクソシスト』のように、首が180度回転して悪魔の形相になるとか、『シャイニング』のように、大袈裟な「顔芸」や「悲鳴」で怖がらせるものとは違う。
『エクソシスト』
代表的なのは、ジョジョ第三部『スターダストクルセイダース』の宿敵ディオ。
倒すべき圧倒的な「悪」でありながら、そのカリスマ性に魅入られてしまいそうになるのが怖いのだ。
ディオ『ジョジョ第三部』
今回の西恩ミカも「異様」ではあるが「美形」で、存在そのものが怖いわけではない。
だが、彼女を取り巻く者たち、屋敷、些細な行動が重層的に「異質な何か」を醸し出してくる。
ラスボス:西恩ミカ
そんな世界に、スタンド能力も持たない「ただの一般人」が対峙するという組み立ては実に面白い。
京香には「切り札」は無いのだ。(実は意外なところから出てくるが)
終盤近く、遂に京香は西恩ミカの「正体」を垣間見てしまい、捉えて「舌」を食べるために屋敷中の「操られ人」が一斉に襲ってくる。まさに絶体絶命。
この「絶体絶命感」も飛呂彦ワールドの定番だ。状況はどんどん悪化し、放った「最強反撃」さえ無効にされる。
そこで、最後の最後に繰り出す「起死回生」の策。その「意外性」こそが飛呂彦ワールドの真骨頂。
「そう、それがいい・・その攻撃がいい」という有名な決め台詞が聞こえてきそうだ。
さて、泉京香の「切り札」とは何か。(一番最初に書いてしまってますがね:笑)
/// end of the “cinemaアラカルト534「泉京香は黙らない」”///

(追伸)
岸波 Amaプラの『泉京香は黙らない』を見てみたら、「シーズン1」の「エピソード1」と表記されていました。
ということは、第一作の高評価を受けて「シリーズ化」が決まったということでしょう。
荒木飛呂彦もドラマでの泉京香の造形がお気に入りとなったようで、漫画の方の近作にもあのキャラクター設定のまま登場するようになりました。
『岸辺露伴は動かない』
でも、岸辺露伴を演じた高橋一生まで泉京香を演じた飯豊まりえが「お気に入り」となって結婚までするとは思いませんでした(笑)
ラストの「ネタバレ」ですが、最後に京香が取り出したのは、勘助から盗んでポケットに入れていた「ボイスレコーダー」。
そこには数千人のボイスデータが入っており、これを「舐めた」西恩ミカはキャパがオーバーフローして「再起不能」となるのです。
しかし、そんな怖い思いをした京香が露伴とのラストシーンで、何も無かったように「先生、また新しい作家を発見したんですよ!」と嬉々とする姿・・やはり「最強キャラ」ですね。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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