こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
呪術は、ここから始まる――
久々に劇場での映画、山崎賢人が平安時代の最強の呪術師安倍晴明の若き日を描いた『陰陽師0』を封切り日にケイ子と観て参りました。
あれれ『陰陽師0』ってタイトル、もしかして『ゴジラ-1.0』の パクリ オマージュでしょうか?
ふっふっふ、それもその筈・・・
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陰陽師0
(C)2024映画「陰陽師0」製作委員会
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今回の『陰陽師0』のVFXを手掛けたのは『ゴジラ-1.0』でアカデミー賞視覚効果賞を受賞した「白組」メンバー。
そして、脚本・監督は『ゴジラ-1.0』の山崎貴監督の奥様、佐藤嗣麻子氏なのですから。
ストーリーは、夢枕獏原作の680万部を売った人気シリーズ『陰陽師』について、原作者協力のもと佐藤嗣麻子が書き下ろした完全オリジナル脚本。
さあ、『ゴジラ-10』の興奮よ、もう一度!!
呪術、激突。
映画の冒頭、天から紫の瘴気が降り注ぐ丘で一人彷徨う安倍晴明(山崎賢人)が無残に埋められた母の死体を発見する。
泣き喚く晴明。そこに謎の人影が忍び寄る。それは父の姿か、はたまた仇なのか。顔の無いその男に歩み寄ると、いきなり一刀両断される。えええ~安倍晴明終了!?
汗にまみれて目覚める晴明。なんだコレは「悪夢」なのか・・?
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陰陽師0
(C)2024映画「陰陽師0」製作委員会
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場面が転換し、当時の日本の状況について解説が入る。平安京の全貌、当時の日本の人口800万、その中でヒエラルキーの頂点にいる「帝(みかど)」以下250人ほどの皇族・貴族によって国が治められていたこと。
そして政治は「占い」によって決められ、その占いを執り行うのが陰陽師の役割。安倍晴明は、陰陽師を育成する機関「陰陽寮」の学生(がくしょう)の一人。
「陰陽寮」
優秀な一面、人としての感情が欠落したような彼は「狐が生んだ子」とささやかれ、そんな晴明に興味を持ったのが帝・村上天皇の従兄弟である貴族源博雅(ヒロマサ: 染谷将太)。
このシーンは、晴明と博雅のコンビが平安京の怪異と対決する『陰陽師シリーズ』の最初の出会いを描いたものなのですね。
晴明と博雅
ある日、博雅(染谷将太)の縁戚にあたる徽子(よしこ)女王の琴糸が切れ、金の龍が飛び出すという事件が起こる。
怪異の解明を託された晴明(山崎賢人)と博雅(染谷将太)は、床下に潜んだ金の龍を小瓶に封じ、この事件は広く知れ渡るところとなり、帝も晴明に興味を持つ。
徽子女王
そんな中、上席の学生である特業生の橘泰家が呪殺されるという事件が発生。現場に残された竹簡の筆跡が酷似しているという理由で晴明が捕縛される。
折も折、徽子女王が再び金の龍に捉えられて天に連れ去られ行方不明になったとの急報を博雅がもたらす。
帝:村上天皇(板垣李光人)
晴明は自ら捕縛を解き博雅とともに徽子女王の探索に。陰陽寮は「晴明を捉えた者を次期特業生に任ずる」として追手を放つ。
その時、追われる晴明らの前に巨大な火竜が出現。(をっとぉ~!)
さて、晴明と博雅は絶体絶命のピンチをどう切り抜けるのか? そして徽子女王の安否は? はたまたこれらの怪異をあやつる黒幕の正体とは!?
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陰陽師0
(C)2024映画「陰陽師0」製作委員会
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まず驚くのは、山崎賢人が『キングダム』や『ゴールデンカムイ』と並行してこの『陰陽師0』も撮っていたこと。
全く異なるキャラクターにも拘わらず、それらを演じ分けるバイタリティに驚愕。藤井聡太八冠の強行スケジュールには驚きますが、匹敵するんじゃなかろうか。
『ゴールデンカムイ』
『陰陽師0』では、両親を殺された復讐のためだけに生きているというストイックなキャラクターなのに、友のためには豪快にキレるという難しい性格をよく演じていました。
さらには、羽生結弦のフィギュア・スケーティングにインスピレーションを得たという殺陣の「浮遊感のあるアクション」も素晴らしい。
逆に、羽生結弦自身も『陰陽師』(2003年:野村萬斎主演)のテーマである「SEIMEI」を用いたプログラムを演じていましたが。(2018年平昌五輪)
『SEIMEI』
また「白組」によるVFXも圧倒的な迫力。怪異の造形はもちろん、心象風景を現実の風景に置き換える手法や映画冒頭の平安京の大俯瞰もさすがのデキでした。
ただし・・ちょっと違和感を感じたのは、徽子(よしこ)女王の衣装。平安時代の女御の衣装で、あのワンピースのような平たい胸繰りのものは見た事がありません。
徽子女王の衣装
最初は「ソコは”お話”だから」と軽くスルーしていたのですが、後で記事を検索していたら「考証には十分時間をかけた」という佐藤嗣麻子監督のコメントがあったので、「え、ホント!」と思ったのです。
演じている女優奈緒さんが、もともと蒼井 優に激似なこともあって「フラガール」にしか見えないんですけど(笑)
蒼井 優@『フラガール』
その徽子女王ですが、実際の彼女は三十六歌仙にも数えられる「斎宮女御」。
映画の中では、10歳から本人の意思に反して斎宮女御に任ぜられた不遇な境遇(平民から見たら羨ましい話)をかこつシーンがあります。
そして彼女は、幼い頃からお兄ちゃんと呼び親しんでいた縁戚の源博雅に恋心を抱いており、そんな博雅が帝(村上天皇)からの恋文を自分に届けに来たことで号泣することになります。
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陰陽師0
(C)2024映画「陰陽師0」製作委員会
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「これを見てしまったら、もう断れないじゃないの」・・彼女は、博雅自身からの恋文と思い込み「やっと気持ちが通じた」と喜んで文を開いたのですけれど。
このシーンで博雅(染谷将太)が苦しい胸の裡を吐露する演技は圧巻でした。
彼もまた徽子女王を愛していたが、帝からの頼みを断ることはできなかったと。(うっうっ・・)
このシーンの結末、どうオトシマエを付けるのか興味津々でしたが・・「徽子さまが誰のものになっても自分の気持ちは変わらない。むしろ貴女は帝のことをよく知らない。一緒に過ごす中でいろんな幸せを見つけることもできるはずだ」と。うむぅ・・。
実は、村上天皇の治世は「天暦の治」と呼ばれ、後世に「聖代」として理想化されるほどの名君でした。
ここの台詞は、そういう史実も踏まえたものなのかな?
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陰陽師0
(C)2024映画「陰陽師0」製作委員会
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さて、最後に苦言を一つ。
怪異をあやつる黒幕の正体は陰陽師の筆頭者:陰陽頭(いわば陰陽寮の学長)である藤原義輔(小林薫)でした。
彼は、現在空席となっている更に上の位、帝直属の「蔵人所陰陽師」の地位を狙って優秀な陰陽師・学生を潰して来たのです。もちろん優秀だった晴明の両親を謀殺したのも特業生橘泰家を呪殺(実際は毒殺)したのも彼。
いやいやいや、これは酷い・・と言うか「魅力的な悪役キャラ」の対極にあるクズ人間。自分を脅かす者はすべて排除するやり方、まるでロシアのプーチンか(笑)
こういうキャラ設定によって、薄っぺらい勧善懲悪ストーリーになってしまった。これはとても残念。
この『陰陽師0』を起点としてシリーズ化を目指しているとしたら、「泣ける」話を用意してほしかった・・『鬼滅の刃』のように。
これだと、日本版アベンジャーズになってしまいそうだ。
/// end of the “cinemaアラカルト412「陰陽師0」”///
(追伸)
岸波
『アンフェア』シリーズや『『サイレーン 刑事×彼女×完全悪女』も作った佐藤嗣麻子監督ですから、ストーリーの深みに期待していました。
でも今作は、演技者の熱演や凄い殺陣、VFXの素晴らしさだけが前面に出てしまった感があります。
やはり根幹はストーリーだし、感動だし、カタルシスでないかと思うのですよ。
それでもヒットしてくれればいいと思いますが、どうなんだろ?
まだ初日なので全国的な評価は分かりませんが、賢人クンも将太クンも嗣麻子監督も大好きなので、コケないといいなぁ。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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陰陽師0
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