こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
行き先、無制限 この自由に、未来はあるのか?
見た順序が前後しますが、3月上旬、「ジャンパー」の封切り日にケイコと観てまいりました。
「Mr.&Mrs.
スミス」のダグ・リーマン監督が、スティーブン・グールドの小説「ジャンパー/跳ぶ少年」を映画化したSFアクション・アドベンチャーです。
ところがっ!
実は、この映画、原作とはほぼ無関係の内容に脚色されているのです。
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ジャンパー
(ヘイデン・クリステンセン)
(C)2007
TWENTIETH CENTURY FOX |
グールドが1992年に発表した始めての長編小説「ジャンパー/跳ぶ少年」は、アメリカの老舗SF雑誌が主催する「ローカス賞」の処女長編部門第二位になるなど高い評価を得ました。
←(SFの世界ではヒューゴー賞、ネビュラ賞に次いで権威のある賞。)
そして、2004年には、その続編も発表されました。
しかし、2007年に映画化の話が持ち上がると、作者のグールドは映画用の別ストーリー「ジャンパー/グリフィンの物語」を著したのです。
このグリフィンが映画の主人公かというと、さにあらず。
映画は、この小説の後日譚で、グリフィンが出会ったデヴィッドという新たなジャンパーが主人公になるという凝った構成になっているのです。
さて、その内容ですが・・・
イギリスのごく普通の高校生であるデヴィッドは、ある日凍った川に落ちて溺れそうになります。
水の中で必死にもがいていると、突然、学校の図書館に瞬間移動していました。
つまり、彼はテレポーテーション(瞬間移動)の超能力に目覚めたワケですね。
そのことに気づいた彼は、力をコントロールする訓練を積んで、自由自在に空間を移動することができるようになったのです。
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ジャンパー
(ヘイデン・クリステンセン)
(C)2007
TWENTIETH CENTURY FOX |
テレポーテーション・・・夢のような能力ですね。
SFの中で、よく取り上げられる超能力には、テレパシー(精神感応)や予知能力、テレキネシス(念動力)などがありますが、このテレポーテーションは別格です。
何が別格かと言いますと、タイムトラベル同様、科学的に完全否定された現象だからです。
予知やテレパシーなどは、もしかするとあり得るかもしれない気がしますが、テレポーテーションは絶対無理です。
何故かといえば、瞬間移動した先にはたいていの場合、「空気」が存在しているので、空気の分子と移動した人間を構成する分子とが、同じ空間に同時に存在することになり、瞬時に“核融合”を起こして消滅してしまうからです。
このへんの矛盾が明らかになった後、SFの世界では、スター・トレックの“空間転送装置”のように、箱から箱へ瞬間移動するスタイルが取り入れられたのはご承知の通り。
しかし、このジャンパーは古典的なテレポーテーションの手法を用いていますので、まあ“細かいことは詮索するな”という所かも知れません。
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ジャンパー
(ヘイデン・クリステンセン)
(C)2007
TWENTIETH CENTURY FOX |
さて、こういう能力を獲得した人間は何をするか?
まず最初に考えるのは、世界の名所めぐりではないでしょうか。
このデヴィッドもそうでして、行き先を具体的にイメージできないとジャンプ不可能ですから、世界の名所の写真を手に入れてそれを見つめてエイヤーッとやれば、行ったことが無い場所でも自由自在に移動できるのです。
ある時は、イギリスのビッグ・ベンの時計のハリを背にロンドンの町を見下ろしたり、エジプトのスフィンクスの頭の上で日光浴をしたりと、やりたい放題。
←(いいなぁ、こういう能力・・)
で、ダグ・リーマン監督は、こういうシーンをCGを使わずに撮影したのです。
つまり、実際の撮影困難な世界の観光名所で撮影を敢行したというのですから、まさに空前絶後の大ロケーション!
ダグ・リーマン、恐るべし!
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ビッグベンの針を背に
(ヘイデン・クリステンセン)
(C)2007
TWENTIETH CENTURY FOX |
さて、名所めぐりに飽きてくると、人間は次に何を考えるか?
やはり「お金」でしょう。
デヴィッドは策を凝らして、銀行の地下金庫を目視することに成功し、今度は自分の部屋からジャンプで金庫内に侵入。
まんまと無尽蔵の札束を手に入れるのです。
←(衣服や持ち物など、固定されていないものは、一緒にジャンプできる。)
こんなふうにして大金持ちになったデヴィッドは、家を出てホテル住まいをすることに。
さて、次に欲しくなるのは何か?
今度は恋人が欲しくなり、学生時代に想いを寄せていた同級生のミリーを尋ねて、あり余るお金に物を言わせて海外旅行へと連れ出すのでした。
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ミリーとデヴィッド
(ジャンパー)
(C)2007 TWENTIETH CENTURY FOX |
うーん、まさにやりたい放題。
スーパー・ヒーローではなく、普通の男がこういう能力を手にした時にやりたいと思うことを、そのまんまやってくれるのです。
まさに人間臭いベタな進行ですが、見ている方はそれなりに痛快な映画です。
しかし、これだけで終わってしまっては、身も蓋もありません。
実は、こうしたジャンパー能力者の命を付け狙う陰の組織が存在したのです。
←(ちょっと無理やりな進行ですが・・。)
その組織の名前は「パラディン」。
ジャンパー能力を神を冒涜する能力と決め付けた彼らは、既に何千年もの間、時おり出現するジャンパー能力者の抹殺を使命としてきた秘密組織なのです。
その現在のリーダーである「ローランド」は、デヴィッドの出現を察知し、組織を挙げて彼を殺しにやってくるのでした。
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ローランド
(サミュエル・L・ジャクソン)
(C)2007
TWENTIETH CENTURY FOX |
しかしなぁ・・・。
自由自在にテレポーテーションできる人間を、捕まえることなんかできないと思いませんか?
超強力な電流を流せる電気ムチみたいな武器でジャンパーを捕まえて殺す・・・という設定なのですが、ここもちょっと無理があるような・・・。
ともあれ、ローマのコソッセオを訪れたデヴィッドとミリーにパラディンの間の手が迫ります。
そこで危機一髪、二人を救ったのがお待たせのグリフィン。
そう・・・小説での主人公がここで登場するのです。
そこから先は、デヴィッドとグリフィンが協力し、パラディンたちを相手に熾烈な戦闘が繰り広げられるのです。
さて、二人のジャンパーの運命やいかに?
そして人質となるミリーの安否は?
はたまた、幼い時にデヴィッドを捨てて姿をくらました母親の正体とは・・?
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デヴィッドとグリフィン
(ジャンパー)
(C)2007
TWENTIETH CENTURY FOX |
ケイコ、どうだった?
ま、「世界の名所巡り」ね。
うーむ、アクションやジャンプ・シーンは見ごたえあったけどね。
ストーリーにヒネリがないのよ。
まあ、“母親の正体”ってのも想定の範囲内ではあったね。
闘いのシーンは多いけど、血を流したりとか残虐でないのはよかった。
安心して観ていられるし、何ていっても“男の夢”がそのまんま叶う。
ちょっぽけな夢よね。世界旅行はいいけれど。
じゃあ、退職でもしたら一緒に行くか?
エジプトとかギアナ高地とか南極とか。
あのね、行ってもいいけど暑い所と寒い所、虫のいる所はヤーよ。
どこにすりゃいいんじゃーっ!
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渋谷ロケ
(ジャンパー)
(C)2007
TWENTIETH CENTURY FOX |
この映画、ニューヨークやエジプト、ローマなどに加え、東京都でも撮影が行われました。
映画の中盤で、デヴィッドとグリフィンが東京都内でカーチェイスをするシーンがありましたが、この東京ロケは、2007年1月に渋谷やレインボーブリッジなどで撮影されたそうです。
←(まさかカーチェイスまで実写では・・?)
ところで監督のダグ・リーマンは、インタビューで「今回、瞬間移動できなかった場所で、続編で考えているアイデアはありますか?」との問いに・・・
『それは宇宙の瞬間移動で、実際にこの作品で使うことを考えていたけれど、次回作に残そうとして断念したんだ。この地球だけでも、今回は随分素晴らしいことができたからね。』
~とのこと。
うむむっ・・・どうやら、続編制作の意思がアリアリのようですぞ!
/// end of the “cinemaアラカルト57「ジャンパー」”///
(追伸)
岸波
主人公デヴィッドを演じたヘイデン・クリステンセンと言えば、スターウォーズで若きアナキン・スカイウィーカーを演じた俳優。
今回は、アナキンとは一味違った人間臭いキャラクターを演じてくれました。
で、このクリステンセンは、「ジャンパー」で競演したミリー役のレイチェル・ビンソンと熱々の仲とのこと。
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ヘイデン・クリステンセンと
レイチェル・ビンソン
(ジャンパー) |
日本封切りに先立つ2月の26日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで開催された「ジャンパー」のジャパンプレミアにも二人揃って登場。
日本語でのあいさつを忘れてしまったレイチェルの耳元で、ヘイデンが「コンバンワだよ」と優しくささやいたり、レイチェルがヘイデンにしなだれかかったりというお熱いシーンが見られた模様。
うーん、いかにも美男美女のカップル・・・うらやましいなぁ。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
you again !
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ヘイデン・クリステンセンと
レイチェル・ビンソン
(来日記者会見で) |
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