こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
目覚めると、
妻さえも”自分”を
知らなかったーーー
今期のcinemaアラカルトのネタにするために細田守監督の『竜とそばかすの姫』を見る予定でしたが、ケイコの体調が悪化。
やむを得ずamazonプライムで高評価の無料作品を漁っておりましたら、大好きなリーアム・ニーソンの未鑑賞映画『アンノウン』を見つけたので昨夜、鑑賞しました。
ジャンルとしてはサスペンス・アクション・・そう、彼の出世作『96時間』シリーズや『フライト・ゲーム』、『トレインミッション』の系譜に連なる作品です。
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アンノウン
(C)2011 DARK CASTLE HOLDINGS, LLC |
原作はフランスの小説家ディディエ・ヴァン・コーヴラールの『Out of My Head』、監督は後に『フライト・ゲーム』を撮ることになるジャウム・コレット=セラ。
2011年に当初は「身元不明」のタイトルで日本公開される予定でしたが、東日本大震災の影響で原題の『アンノウン』に変更され、封切られました。
ということで、さっそく本編でございます。
amazonプライムの高評価作品は5段階評価で4.0以上のものがラインナップされるのですが、ここでの評価はかなり信頼できます。
そしてこの『アンノウン』の評価は現時点で4.0。見終わると「この映画を観た人にお勧めの映画」というのが出てきて非常に便利。
僕は作品の事前情報を仕入れないで初見するタイプなのですが、この「作品評価」だけは参考にさせてもらってます。
でないとホラ、カリスマ彰のように”絶対に観てはいけない映画”を連荘してしまうことがありますもの(笑)
ジョニー・イングリッシュ
それはさておき映画の冒頭、非常に美しい夕焼けの空が広がっています。そこからだんだん引いてくると、画面の両脇に「枠」が現れて来る。
これは何だろうと思っていると、さらにカメラが引いて飛行機の窓枠であることが分かって来る・・そして機内の風景。
暗い機内で外を見つめる男が一人・・それがリーアム・ニーソン。たいへんオシャレな導入であります。
やはり上質な映画は、冒頭を見るだけで分かりますね。
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アンノウン
(C)2011 DARK CASTLE HOLDINGS, LLC
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この男、マーティン・ハリス博士(リーアム・ニーソン)は植物学者で国際学会に出席するため妻のリズことエリザベス・ハリス(ジャニュアリー・ジョーンズ)を伴ってベルリンに向かっている。
上掲のシーンはベルリンに到着し空港のイミグレで旅行目的を申告しているところ。
そこからタクシーに乗ってホテルへと向かうところで、荷物を積み込むマーティンにリズが「時間がないわ、荷物はドライバーに任せて早く乗って」と。
マーティンとリズ
しかしこの時、一つのトランクが荷物台に取り残される。おっとこのトランクは先ほどパスポートを格納した大事な荷物。うむむむむ・・。
ホテルにチェックインしようとした時にマーティンは荷物が足りないことに気づき、慌ててタクシーを拾って空港へターン。
しかあしっ!!
女性ドライバーとマーティン
このタクシーが事故に遭遇し、川に墜落したマーティンは心臓停止。蘇生して病院へ搬送されるが意識不明の状態。
病院は病院で、身元を証明するもの(パスポート)が見つからず、関係者に連絡することもできない。
四日後、ようやく意識を取り戻したものの記憶が混濁しており、事故の前後について思い出せない。
「そうだ、妻が自分のみを案じているはず」と、担当医師に頼みこんで無理やり退院し、妻が宿泊しているはずのホテルへ急行。
ここで二つ目の、しかあしっ!!!!(笑)
ホテルにいたリズは「アナタ誰?私は知らないわ」・・えええ~!
アナタ、誰?
リズ(ジャニュアリー・ジョーンズ)
しかも「夫のマーティンならここに居るわ」と、自分の名を語る男まで登場!
いやいやいや・・いったいどうなってる? マーティン本人ならずとも、観客の頭の中にまで「?」マークがいっぱいに膨れ上がる。
さあて、掴みはバッチリ。いったいこの謎に、どんなオトシマエが付けられるのか? とくと御覧じろ!
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アンノウン
(C)2011 DARK CASTLE HOLDINGS, LLC
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この主人公マーティンが途方に暮れるところは共感します。これはまさに悪夢で、僕も汗ビッショリになりながらうなされた事があります。
去年、コロナ禍でウィーン旅行が中止になる前に(笑)
まず身分証明書がない。ポケットには僅かばかりの小金。そして現地のドイツ語が喋れない。近くに知り合いも居ない。(妻も知らないと言っているし)
人が変わったリズ
さらにマーティンの悲劇は、自分を送り出した先輩の研究者ロドニー・コール(フランク・ランジェラ)が留守電で連絡が付かない。頼みの大使館は感謝祭期間で休業中。
一緒に事故に遭った女性運転手ジーナ(ダイアン・クルーガー)の所在を突き止めて会いに行くが「事件に関わりたくない」と関与を拒否。
実はこの女性運転手ジーナ(ダイアン・クルーガー)はボスニアからの不法移民でパスポートを持たず、警察に露見すると強制送還の恐れがある。
ジーナ(ダイアン・クルーガー)
考えあぐねたマーティンは、国際学会のメイン演者で、顔を合わせたことが無いが何度か電話連絡をしたことがあるドイツのブレスラー教授(セバスチャン・コッホ)に会って身分を証明してもらおうとします。
そして研究室を訪れると、何とそこには自分の名を語るもう一人のマーティン・ハリス博士(エイダン・クイン)が。
「そいつは偽物だ。ブレスラー教授の事なら電話で話して情報をやり取りしている。貴方には二人の娘さんが居る。名前も聞きました・・」
『ローレルとリリー・・双子でいま10歳!』と言ったのは、もう一人のマーティン博士。ええ~!
もう一人のマーティン・ハリス
その後も自分だけが知る情報を伝えようとすると、全く同時に別のマーティンも声を重ねて来る。あらららら・・。
これには観ているこちらもパニック。こんな事、あり得ない。これってもしかしてサスペンスじゃなくSFとかホラーなんじゃないのと、あらぬ疑念も湧いてくる。
とどのつまり、本物探しは決着つかず。傷心のマーティンは自分の記憶が狂っているのではと病院に戻り、精密検査を受けることに。
病院では担当の看護師がマーティンに同情し「この人を訪ねれば、きっと人探しの力になってくれる」とユルゲン(ブルーノ・ガンツ)なる人物の連絡先をメモして渡す。
その後に鎮静剤を打たれ、意識モウロウのままMRIから出てくると、担当の検査技師らしき人物が登場。
マーティン
しかしこの男、看護師の首を捻って殺害し、動けないマーティンの点滴に明らかにソレと分かる毒物を注入。
すんでのところで脱出したマーティンに謎の男が追いすがる。その後はコケつマロビつの大追跡劇。
やはり自分は何かの陰謀に巻き込まれている。いったいこの暗殺者は何者だ?
マーティンは看護師から渡されたメモの男ユルゲン(ブルーノ・ガンツ)、そして女性運転手ジーナ(ダイアン・クルーガー)を味方に、暗殺者集団と激闘を繰り広げる事になります。
さて、マーティンは自分自身を取り戻せるのか? はたまた最愛の妻リズの身に何が起こっているのか? 陰謀の正体や如何に!
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アンノウン
(C)2011 DARK CASTLE HOLDINGS, LLC
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リーアム・ニーソンは1993年公開のスティーヴン・スピルバーグ監督映画『シンドラーのリスト』でオスカー・シンドラーを主演しアカデミー主演男優賞にノミネートされた演技派。
その後も1998年の『レ・ミゼラブル』のジャン・バルジャン役や1999年の『スター・ウォーズ/ファントム・メナス』のクワイ・ガン・ジン役など、重要な役を歴演。
クワイ・ガン・ジン役
でもやはり彼の真骨頂は2008年からの『96時間』シリーズなど、サスペンス・アクション分野でしょう。
実は彼、1994年に名優ヴァネッサ・レッドグレイブの娘、ナターシャ・リチャードソンと結婚し二子をもうけていますが、2009年3月、スキー場での事故でナターシャが転倒、脳死状態になりました。
事故前の本人の希望にしたがって、ニーソンは彼女の生命維持装置を外すことに泣く泣く同意。葬儀では、悲しみに打ちひしがれた彼が義母のヴァネッサ・レッドグレイブに抱きかかえられながら歩む姿が報道されています。
往年のヴァネッサ・レッドグレイブ
思えば、ヴァネッサ・レッドグレイブは僕の青春のアイコンの一人。おしどり夫婦と言われたニーソンの哀しみを癒そうとする姿に、かつての聖女の面影を見たような気がします。
そしてニーソンは2011年のこの『アンノウン』、2012年の『96時間/リベンジ』、2014年の『フライト・ゲーム』などの作品で新たな演技スタイルを確立して行きます。
アクション映画の主人公でありながら、どこか深い悲しみをたたえた人物像は、観る人を惹き込まずにはおかないでしょう。
また、旧東ドイツの秘密警察シュタージのメンバーだった過去を持ち私立探偵として活躍するユルゲンを演じたブルーノ・ガンツは『ベルリン・天使の詩』や『ヒトラー 〜最期の12日間〜』で主演したスイス出身の名優。
ヒトラー(ブルーノ・ガンツ)
この映画では、マーティンの先輩研究者を名乗りながら、実は凄腕の暗殺集団「セクション15」の首魁であるロドニー・コール(フランク・ランジェラ)の正体を見破り、その殺害に失敗すると自ら青酸カリをあおって自死してしまいます。
ストーリーの重要なキーマンでありながら、早々と退場してしまう使われ方は、この名優にして非常にもったいない気がしました。
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アンノウン
(C)2011 DARK CASTLE HOLDINGS, LLC
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さて映画の方ですが、陰謀の正体は、世界の飢餓を救うために画期的な高収穫のトウモロコシを開発し、それを無償で世界にDNAデータを公表しようとしているブレスラー教授(セバスチャン・コッホ)とその後援者のシャーダ王子の動きを阻止するため、グローバルな穀物企業が暗殺集団「セクション15」を雇い入れたものでした。
そしてその暗殺計画を立案したのはマーティン(リーアム・ニーソン)自身。
暗殺団の1&2
すなわち、マーティンは「セクション15」の幹部で、植物学会の会場ホテルでブレスラー教授らを爆殺するため、偽の植物学者夫婦を装って侵入するはずだったのです。
リズも暗殺集団の一員。マーティンと実夫婦ではなく仕事上のパートナー。
ところがマーティンが事故で記憶喪失に。困った「セクション15」は別のメンバーをマーティン役に入れ替え、計画の障害になりそうなマーティンを殺害しようとしていたのです。
だが、記憶が戻り始めて全貌を理解したマーティンは深く懊悩。
「今夜、王子が私が仕掛けた爆弾で殺される。私は事故で死ぬべきだった・・」
相棒の女運転手ジーナ(ダイアン・クルーガー)は言う。
「大事なのは、いま何をすべきかよ!」
ジーナ
スイッチが入れられた時限装置。
さて、マーティンとジーナ、そしてリズの運命や如何に!?
/// end of the “cinemaアラカルト261「アンノウン」”///
(追伸)
岸波
凄腕の暗殺集団のリーダーの一人であるマーティンが空港で大切なトランクの積み忘れを確認しなかったり、大使館や知人の誰にも連絡が取れないなど、細かいところを見れば、多少の突っ込みどころやご都合主義はありますが、全体としてよくできたサスペンスだと思います。
何と言っても、ドイツ系の俳優たちのそれぞれのいぶし銀の演技にキラリと光るものがあります。
そして、リーアム・ニーソンにはやはり懊悩顔が似合う(笑)
本当は美女なのに、ボスニア出身の田舎娘ドライバーを好演したダイアン・クルーガーも僕好み。
やはり、リーアム・ニーソンの主演映画にハズレはありませんでした。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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マーティンとジーナ
(C)2011 DARK CASTLE HOLDINGS, LLC
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