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「AUTUMN」(Music Material)
by 岸波(葉羽)【配信2021.7.14】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 地球最大の究極対決。

 劇場にお客が少ないと思われる月曜日、ケイコとともに待望の『ゴジラ vs コング』を見てまいりました。

 前作の「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」は興行的にはそこそこでしたが、自分的には大ハマり。

 特に、キングギドラの猛攻でピンチに陥ったゴジラに女王モスラが助けに入るシーンは胸アツでした。

ゴジラvsコング

(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.& LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 今作の演出は「ブレア・ウィッチ」やアメリカ版「Death Note/デスノート」を撮ったアダム・ウィンガード監督。

 本来であれば2020年1月に公開されるはずでしたが、コロナ禍の影響により、今年3月に欧米や台湾で公開。日本では7月2日にようやく封切られました。

 ということで、さっそく本編でございます。

 映画の冒頭、ゴジラとキングコングがそれぞれ今まで闘って打倒した怪獣たちの画像がフラッシュバック。

 実は僕、ワーナー・ブラザースとレジェンダリー・ピクチャーズが手掛けた「モンスターバース」シリーズのうち、1作目「ゴジラ」と3作目「ゴジラ キング・オブ・モンスターズ」は観ていますが、2作目「キングコング: 髑髏島の巨神」は観ていないのです。

 なので、今回の冒頭で初めて「キングコング」にも多くの怪獣が登場してコングと闘ったことを知りました。

ゴジラvsコング

(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.& LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 そう、タイトルにある怪獣名は実は主人公となる怪獣だけで、真の強敵は映画の中で初めて明かされる・・というのがこのシリーズの肝。

1作目「ゴジラ」にオス・メス二頭の新怪獣ムトーが出てきた時はビックリしました。

 となれば今回もゴジラとコングの闘いがストーリー上のメインでない事はあきらか。

 いったい何が!? ・・と期待していたその時、心無い人(ケイコ)から「今度の敵は小栗旬ちゃんが乗り込んだメカゴジラだってよ!」とネタばらしされてガックリ(笑)

メカゴジラ(フィギュア)

 それはさておき気を取り直して本題に戻りますが、ファースト・シーンはコングから。

 古代においてゴジラとコングは"怪獣の王座"を争って来たライバル同士であった因縁が壁画等によって明らかにされ、前作で怪獣の王となったゴジラからコングを守るため、怪獣の研究機関モナークは髑髏島の巨大ドームにコングを収容。

 しかし100メートル以上の巨獣となったコングにはドームが手狭で、ストレスを抱えている模様。

ゴジラvsコング

(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.& LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 一方、「大怪獣の真実」というネット放送がバズっているバーニー・ヘイズ(ブライアン・タイリー・ヘンリー)は、何やら怪獣に関して怪しげな研究を進めているエイペックス・サイバネティクス社に潜入。

 彼が巨大な鋼鉄製の目玉のようなものを探し当てた時、突如、ゴジラが襲来。サイバネティクス社の工場をめちゃくちゃに破壊して去って行く。

 ゴジラは"人類の敵"とする報道が溢れる中、バーニーは何らかの理由があるはずだと持論を展開。

ネット放送のバーニー・ヘイズ

 そのネット放送を信じたマディソン・ラッセル(ミリー・ボビー・ブラウン)は、モナークに復帰した父マーク・ラッセル(カイル・チャンドラー:前作の主人公)の反対を押し切って、ボーイフレンドのジョシュ(ジュリアン・デニソン)と共に、バーニーと行動を共にすることに。

 エイペックス・サイバネティクス社の陰謀とはいかなるものか?

 エイペックス社CEOのウォルター・シモンズ(デミアン・ビチル)は、モナークの主要メンバーであり前作で命を落とした芹沢猪四郎博士の息子芹沢蓮(小栗旬)と共に、地質学者ネイサン・リンド博士(アレクサンダー・スカルスガルド)にある相談を持ちかける。

 このリンド博士は『地球空洞説』の信奉者で、地下世界の探索を夢見ていたが、異常な重力世界の中で兄が命を落としてしまったため、悶々としている人物。

地質学者ネイサン・リンド

「ゴジラは人類の敵。それを抑止するために人工の怪獣を作る。そのエネルギーとするため、空洞世界の巨大エネルギーを持ち帰りたい。既にそのため必要な機材は開発に成功している。」

 そんなウォルターCEOの頼みを受け入れたリンド博士は、旧友であり「コングを生まれ故郷の空洞世界に帰したい」と願うコング・ドーム責任者のアイリーン博士(レベッカ・ホール)と力を合せ、コングを道案内に空洞世界に旅立つことを決意する。

 さて、一行は空洞エネルギーのゲットに成功するのか? それを得て完成するメカゴジラにゴジラは倒されてしまうのか? はたまた故郷へ帰るコングのその先の運命や如何に?

ゴジラvsコング

(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.& LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 この映画の重要なガジェットに「地球空洞説」があります。

 これは様々な人物によって提唱されましたが、オーソドックスなのはバローズのSF小説『地底大陸ペルシダー』シリーズのモデルとなったレオンハルト・オイラー(オイラーの多面体定理で有名)の空洞説でしょう。

 この説では、地球は両極地に開口部を持つ外郭だけの空洞地球とし、中心部には太陽の役割を果たす中心火球があって高度な文明を育んでいるとされています。

オイラーの地球空洞説

 ただ、今回の「ゴジラ vs コング」の空洞世界はこのモデルではなく、外郭内に同心円の球体を持つ”隙間の世界”として描かれており中心火球は存在しません。

 ならば、光はどこから来るかという説明はされていませんが、エドモンド・ハレー(ハレー彗星の発見で有名)が提唱した初期の地球空洞説にならって『発光性のガス』で満たされている想定なのでしょう。

「ゴジラ vs コング」の"隙間"空洞世界

 僕は、映画で空洞説が語られた時に、当然に「ペルシダー」の中心火球を想像しましたので、実際にコングが降りて行った空洞世界の天井に上下逆さまの山脈が現れたのにビックリしました。

 こうした「重力反転」は物理的にはあり得ないのですが、岸波通信another world.Episode46「天獄と地国/ダイソン球殻」で触れた小林泰三の「天獄と地国」世界のように"外側世界の内面は遠心力で逆向きに張り付いている"設定なのかもしれません。

ゴジラvsコング

(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.& LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 また今回の映画の中で非常に存在感の大きいのがコングと意思疎通できる少女ジア(カイリー・ホットル)でした。

 彼女は髑髏島の先住民イーウィス族の最後の生き残りなのですが、言葉を話すことが出来ません。意思疎通の手段は『手話』で、彼女の手話だけがコングの理解する言葉なのです。

モスラと会話できる小美人(ザ・ピーナッツ)を彷彿させる。

ジア(カイリー・ホットル)

 「スターウォーズ」のシークエル・トリロジー(7~9作)では、白人・黒人に加えアジア系の主要人物も登場したように、近年のアメリカ映画では”人種の壁”を突き破ろうとする演出がなされていますが、手話で会話するジアを登場させたことで障がい者もまた同等な人間であることをアピールしているのではないでしょうか。

ただし、ジアが障がい故に言葉を話せないのか、人種的な特徴なのか、この作品だけでは判別できないのですが。

 また、もう一人の主人公と言えるのが、前作でキングギドラを復活させて人類の滅亡を画策したエマ・ラッセルの娘、マディソン・ラッセル(ミリー・ボビー・ブラウン/日本語版吹き替え:芦田愛菜)です。

 彼女は前作「キング・オブ・モンスターズ」でゴジラに命を救われており、ゴジラが"人類の敵"だという風評を決して受け入れようとはしません。

 そのため、ネット放送のバーニー・ヘイズと協力して、ゴジラがエイペックス工場を破壊した真の理由を明らかにすべく奮闘します。

マディソン・ラッセルと仲間

 今作の主人公は地球空洞説のネイサン・リンド博士という事になっているのですが、実際、映画を観た感じだと少女ジアとマディソン・ラッセルの二人の視点を通して描かれているように思えます。

 このマディソン・ラッセルがメカゴジラの部品を追ってエイペックス工場廃墟から香港へ移動する場面で、もう一つ重要なガジェットが登場していました。それがイーロン・マスクが提唱した『ハイパーループ輸送』です。

ハイパーループの実験線

(ネバダ州の砂漠にて)

 ハイパーループはリニア輸送を更に超える超光速輸送手段として実際に研究が進められている方法ですが、内部を真空にしたチューブを用いて超高速移動を可能にする手段です。

有人走行実験に成功

 このチューブを「V字型」に設置すれば、エネルギー保存の法則により、全く動力なしで重力による自然落下(後半は慣性の法則)を利用して二点間を高速移動することができるのです。

 映画の中では、アメリカと香港を数十分イメージで移動していましたが、人間がそこまでの加速度に耐えられるものかどうか、心配でなりませんでした(笑)

ゴジラvsコング

(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.& LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 「ゴジラ vs コング」のもう一つの話題は、小栗旬クンのハリウッド映画初進出でしょう。

 彼はハリウッドからオファーを受けた当時、主演映画「罪の声」の撮影とバッティングしていたために一度辞退せざるを得ませんでしたが、ハリウッド側の強い要請により「罪の声」のクランクインを一か月ずらすことで出演が叶ったのです。

 彼が演じる芹沢猪四郎博士(渡辺謙:前作で死亡)の息子芹沢蓮は、エイペックス社のメカゴジラに搭乗して操縦する役割(そう・・エヴァンゲリオンのように)なのですが、起動して間もなくキングギドラに意識を奪われて、後は白目を剥いているばかり(笑)ここまでのセリフも殆ど無く、全くいいところがないのですよ。

前作で破壊されたキングギドラの頭蓋骨が操縦席に使われている設定。

芹沢父子

 ゴジラを守った父親に対して息子はゴジラを殺戮しようとしているし、この立場の逆転に関しても説明は全く無し。

 彼をそういう行動に駆り立てた背景などをもっと掘り下げれば、映画のキーマンの一人になれたかも知れないのに、実に惜しい使われ方でした。

 まあ、当初モナークの重要人物の一人とされたチャン・ツィイーに至っては、その出演シーン全てがカットされたと言いますから、『尺を合せる』ために切り捨てられたのかもしれませんが。うむむむむ・・。

全4時間になってしまったため、数々の重要シーンをカットし半分の尺にしたという事です。

ゴジラvsコング

(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.& LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 さて、注目のゴジラ対コングの闘いの決着ですが、第一戦目は、空洞世界への案内役を勤めさせるために移送船団に載せられたコングをゴジラが襲来。

 コングの弱点である「水の中」ではさすがに分が悪くゴジラが勝利し、船団は"死んだふり"をしてやり過ごす。

 第二戦目は、メカゴジラ(正確にはキングギドラの頭蓋骨)を追って香港に上陸したゴジラに、コングが空洞世界から持ち帰った放射能を防ぐ斧(古代ゴジラの背びれで作られている)を引っ提げて参戦。

 こちらも大激戦となるが、結局はゴジラが勝利してコングは瀕死の状態に。

 ところが、ゴジラがコング戦で力を使い果たした所に暴走したメカゴジラが登場。いや、これは卑怯でしょう!(笑)

そこで登場!って・・

 かなり一方的なやられまくりで、メカゴジラはグロッキーになったゴジラの口を無理やり開かせて体内に超・破壊光線を放とうとする。

これは一作目でゴジラが強敵ムトーを葬ったのと、あわや逆パターン。

 その刹那・・踊り込んできたのは何とコング!

 コングは主人公たちに蘇生され、少女ジアの手話「ゴジラは敵じゃない。メカゴジラを倒して!」の訴えに応えたのです。

 いや~ 涙出るよ、ココ!!

ゴジラvsコング

(C)2021WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.& LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.

 気になる興行収入ですが、日本に先駆けて公開された今年4月26日時点の全世界興行収入は4億660万ドルと、新型コロナウイルス流行後のハリウッド映画としては最高額を記録。

 日本では、封切り7月3日以降2週間の興行収入が11億円を超える大ヒットに。

 この第四作目で完結予定とされていたモンスターバース・シリーズですが、早くも続編の構想が動き出したとか。

 この映画だけは、家庭用60インチで観ちゃダメです。是非、劇場へ足を運ばれることをおススメします。


/// end of the “cinemaアラカルト259「ゴジラvsコング”///

 

(追伸)

岸波

 ゴジラ vs コングの決着について『ゴジラ圧勝』というネット記事も見ましたが、本当でしょうか?

 確かに、洋上の一戦や香港での緒戦ではゴジラがコングを倒しましたが、結局はメカゴジラに殺されそうになったゴジラを救うのはコング。

 そもそもゴジラとコングの最初の闘いは、1962年の映画「キングコング対ゴジラ」でした。

 この映画では、自国のキャラクターを敗者にすることを避けたい日米のスタジオの協議によって勝敗つかずの結末とされました。

1962年「キングコング対ゴジラ」

 しかし今回は、ウィンガード監督が「勝者を決めたいと思っています。原作(『キングコング対ゴジラ』)はとても面白かったけど、勝敗が決まらなかったことを少し残念に感じています」と予告していました。

 しかし、彼の発言でより重要なのは「明確な勝者が存在すると同時に敗者が尊厳を維持できる結末を用意しており、彼らは互いに敬意を払うことが可能だ」という部分ではないでしょうか。

 1対1では勝利したゴジラも、その窮地をコングに救われたことにより、もはや勝ち負けなど関係ない境地に至ったのだと感じます。

 ラストでメカゴジラを破壊した後、再び向き合ったコングは必殺の武器を捨て、ゴジラは何もせず海へ帰っていく場面は、まさにその象徴ではなかったか。

 ゴジラにもし言葉があったとすればきっとこう言ったのでしょう・・さらば友よ。

 もう一つ、エンディング間際で、空洞世界でのびのび暮らすコングの映像が出てきましたが、何とそこにモナークの前進基地が築かれている模様。

 つまり、人間はいつでもそこに行き来できるようにしてしまったのです。

 これはもしかすると、今後の作品であそこがジュラシック・パークのように発展して、まさに同じような事件が起きるのではないか? ・・いや、まさかそんなことは(笑)

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

ジャパンプレミアイベント(6/28)にて

(写真:映画.com)

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト260” coming soon!

 

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